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第十三話【自己紹介】

 続いてアニマは一階の案内をしていく。

 

 階段を下りてすぐのところにあるのが職員室。

 その隣が大浴場で、当たり前だが男女別になっているようだ。

 着替え室に洗濯ネットがあるため、それに衣服を入れておくとまとめて洗濯してもらえるらしい。

 

 基本的にはいつでも入っていいが、授業休みは十分しかないし、四十分ある昼休みもご飯を食べたりしないといけないため、夜以外に入る生徒はいないとのこと。

 

 それから玄関、食堂、図書館についての説明を受けていく。

 

 食堂では朝、昼、夜ご飯が無料で食べ放題。

 

 育ち盛りの子どもの成長を応援するために奮発しているらしい。

 

 図書館については、一人一冊ずつ本を借りることができる。

 教育用の資料だけでなく伝記や冒険譚のような本も置いてあるため、かなり種類が豊富だ。

 

「さて、これで大体施設内の案内は終わりだ」


「あ、ありがとう!」


「仕事だから構わない。それよりも最後に一つ」


 そう言いながらアニマは図書室の扉を閉める。

 そして正面の灰色のドアを指さし、


「このドアの先へは絶対に進まないように……」


「……何が……あるの?」


 少し怯えた表情をしつつも尋ねるアビス。

 

「子どもっていうのはだめだと言われたら逆にやってしまう生き物だからな。一応教えてやるよ。このドアの先には地下へと繋がっている長い階段があって、研究室に繋がっているんだ」


「研究室?」


「まあ、あれだ……。戦争に使う兵器の開発をしたりしているから、子どもが近寄るのは危険なんだよ」


「そうなんだ」


「だから、研究者の邪魔をしないようにな」


「わかった!」


「さぁ、施設の案内も一通り終わったし、そろそろ一年生の教室に行くぞ」


「うん」


「あいつら……俺がくるまで自主勉しているように言っているが、絶対さぼってやがるぞ」


  ◆ ◇ ◆


 二階の一年生教室前。


「なんか……緊張してきた」とアビス。


「ははっ、大丈夫だって。みんないいやつばかりだからさ」


「……うん」


「じゃあ、俺が呼んだら教室に入ってきてくれ」


「わかった」


 アニマはガラガラと音を立てて扉を開け、なかへと入っていく。

 

「おーい、お前ら。ちゃんと勉強しているか……って、フェイト!! お前またさぼってやがるな!」


「さ、さぼってねぇし」


「バレてんだよ。俺にはなんでもお見通しだ」


「というか先生、今まで何してたんだ?」


「あぁ、知ってる者もいるかもしれないが、今日から新しい仲間が増えるぞ。さっきまでそいつに施設内の案内をしていたんだ」


「えっ、マジで? 男? 女?」


「ほら、こっちにこい」


 そう言われ、アビスは身体を少し震わせつつも教室に入る。

 

 すると広い教室に似合わず、疎らに机が六個置かれていた。

 

 見た感じ男子が三人と女子が二人。

 

 先ほどフェイトと呼ばれていた子の正体はすぐにわかった。

 

 一人だけ机の上に何も出していない青髪の少年がいる。

 

 彼は転校生の正体に気づくなり「男かよぉー」と愚痴を漏らした。

 

 アビスは黒板の前に立ち、口を開く。

 

「えっと……。アビス=ラグナロクです! よろしく」


「「よろしくな」」と二人の男子の返答や、「よろしくねー」という女子の声。


「じゃあアビスは空いている一番後ろの席に座ってくれ。あの青髪の馬鹿の隣だ」


「あ、うん」


 アビスはみんなからの視線を浴びつつ、机の間を通って移動していく。

 

「おい、誰が馬鹿だって!? そっちだってへんてこな赤い髪のくせによぉ」


「先生に向かってなんだその口の利き方は」


「なら教師らしいことの一つでもやってみやがれってんだ。昨日から適当な授業ばかりしやがって」


「うるせぇ。俺は勉強が嫌いなんだよ」


 教師がその受け答えはどうなんだろう? と疑問に思いつつも、アビスは椅子に座った。

 

 机のなかにはたくさんの教材や筆箱が用意されている。

 

「よし、転入生も揃ったことだし、さっそく授業を始めるぞ。みんな算数の教科書とノートを出せ」


「「「はーい」」」


 元気よく返事をし、アビスを含む全員は教材を取り出していく。

 

 その最中に隣の青髪男子が、

 

「オレ、フェイト=アブソリュート。二日前に施設に拾われて、昨日この一年生に配属されたから同じ新人だな。気軽にフェイトって呼んでくれ」


「あ、うん。よろしく」


 新人にしては態度が大きいなぁと思いつつ、アビスは頷いた。

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