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第六話【刺客】

 大通りを歩いて三人が厩舎へと到着すると、入り口付近に二人の男が待ち構えていた。


 一人は小柄で黒いフードを被っており、背中には巨大な大剣。


 もう一人は高身長のイケメンで、金髪が特徴だ。


 どちらも軍服を着用していて、とてもたまたま通りすがっただけとは思えない。

 

「……お前らはここで待っていろ」


 アビスの父親は嫁と息子にそう言い残し、早足で彼らの元へと近づいていく。

 

「アビス=ラグナロクというのは、後ろのあの子で間違いないか?」


 金髪の男が淡々と尋ねてきた。


「いいや、知らないな。人違いじゃないのか?」


「残念ながら調べはついている。昨日神殿から新種のスキルが出現したという情報は入手してあるからな。大人しくその子を引き渡してもらおう」


「嫌だと言ったら?」


「アビス=ラグナロク以外の二人を殺して連れ去るまでだ。どんな手段を使っても構わないと上から命令されている」


 そう言って金髪は腰から剣を引き抜く。

 

「お前! アビスを連れて今すぐ逃げろ! ここは俺が引き受ける」


「は、はい!!」


 夫の強さを信頼しているからだろう。

 状況をすぐに理解した母親はすぐに息子の手を引き、走り出した。

 

「お母さん!?」


「黙ってついてきなさい」


「……う、うん」


「黙って逃がすと思うか?」


 そう言いながら駆け出す金髪。

 フードの少年はまだ動く気配がない。

 

「逃がしてみせるさ……。俺が必ず」


 父親は即座に透明な風の刃を複数生み出し、相手に向かって放つ。

 金髪は剣で見えない攻撃をほとんど迎撃していくも、ひとつだけ見逃していたらしく、太ももに切り傷を負った。

 

 アスファルトの地面に血が飛び散る。

 

「おぉ……やるじゃん」


「まだまだぁ!!」


 更に父親は目の前にかまいたちを出現させながらも炎魔法の弾丸を繰り出す。

 

「一般人が魔法とスキルの魔法の同時発動だと!?」

 

 金髪は突然現れた風に当たらないよう立ち止まり、同時に炎魔法が飛んできていることに気づき、横ステップを踏んで躱す。

 

「おいノヴァ、手伝ってくれ。こいつ案外やるぞ」


「……ん」

 

 ノヴァと呼ばれた少年は、フードを被ったまま背中の大剣を引き抜き、ものすごい速度で走り出す。

 

 彼は【加速】のスキル持ちで、発動している間は体力を格段に消費する代わりに、常人の数倍のスピードで動くことができる。

 

 ランクBのため、かなりレアなスキルだ。

 

 父親は体全身に風を纏うという器用な芸当を行いつつ、懐に隠していた短剣を構え、二人に向かっていく。

 

 ノヴァが振り下ろした大剣をスレスレで躱し、短剣で斬りかかろうとした瞬間、彼の姿が消えた。

 

 実際には体力を爆発的に消費し、消えたように見える速度で躱しただけなのだが。

 

 そして少年が距離を取った瞬間に、金髪の【炎魔法】スキルによる複数の火球が飛んでいく。

 しかし父親が身体に纏っていた風によってかき消された。

 

「ちっ、てめぇ何者だ?」と金髪。


「それはこっちのセリフだ……。まあ、大方どこかの研究機関との関わりを持っている裏の組織だとは思うが──っ!!」


 いつの間にか背後に回っていたノヴァの大剣を短剣で器用に受け止めるも、力の差で押し負け後ろに吹き飛ばされた。

 

 そこに金髪が複数の炎の槍を創り出して追撃を加えていく。

 街中ということもあり、ある程度魔法の力は抑えているらしい。

 

「ふぅ……」


 すでに相当スキルを使っているからか、父親の額から汗が伝う。

 

「あとは俺に任せて、ノヴァはあいつらを追え!」


「……ん」


 少年は一瞬にして姿を消した。

 

「……くそ!!」


 急いであとを追い始める父親。

 しかし、

 

「そう簡単には行かせねぇよ!」

 

 炎の鞭と槍が同時に彼の足元へと迫る。

 

 父親はとっさに水と風の魔法を混ぜて創り出したシールドを展開する。


 それによって槍を相殺するも、左右から鞭が回り込んできた。


 炎の鞭はそのまま彼の片足に巻き付く。

 

「チッ、少し待ってろ……。すぐに行くからな」

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