第一話【始まり】
新連載始めました。
よろしくお願いいたします!
名もなき島。
三十人ほどの島民が暮らしており、さほど大きくない。
一時間もあれば反対側へたどり着けるだろう。
季節は春で、ようやく気温が暖かくなり始めていた。
そんな島の海岸にて。
一人の少女が白いワンピースを揺らしながら歩いていた。
年齢は十五。
金髪ロングヘアーで前髪が真っすぐ整えられており、薄い水色の瞳。
全体的に小さくてかわいい見た目だ。
「ふん。ふふ~ん」
彼女の鼻から紡がれるのは、透き通ったハミング。
それを打ち消すように波の音が聞こえてくる。
更に森のほうから小鳥のさえずりも。
「ふふ~…………ん?」
突然少女が鼻歌をやめてその場に立ち止まった。
じっと一点を見つめている。
「あれって……」
視線の先には、黒い髪の少年が倒れていた。
見た感じ、少女と同じくらいの年に見える。
身体の半分が海に浸かっており、黒い服がびしょ濡れだ。
「た、大変!!」
少女は急いで彼の元に駆け寄り、砂浜の上へと持ち上げる。
それから少年を仰向けにし、
「あのぉ……大丈夫ですか? ……生きてますか?」
そう尋ねてみるも、動く気配がない。
口元に耳を近づけてみると、息をしていなかった。
「どうしよぉ……」
彼女は周りを見渡しながらオロオロとし、ふいに何かを思いついたようで「あっ……」と表情を明るくする。
「昔おばあちゃんに教わった心臓マッサージ!」
さっそくとばかりに彼の胸を押し始めた。
しかし何度やっても心臓が動かない。
「次は、えっと……人工呼吸……だったかな?」
そう言って彼の唇を見つめる。
数秒後、少女は顔を真っ赤に染めた。
「そ、そんなのできないよぉ……」
恥ずかしそうにつぶやき、再び胸に両手を当てて心臓マッサージを再開する。
と、その時。
「ぐふっ、ゲホッ……」
少年の口から水が溢れてきた。
どうやら息を吹き返したようだ。
彼は辛そうな表情でゆっくりと目を開ける。
しかし、
「…………ここ……は──」
数秒と持たずに目を閉じてしまった。
「えっ、あれ? どうしたの!?」
微かに息があるため、死んではいないらしい。
「と……とりあえず家に運ばなきゃ」
そう言って少女は彼を抱っこしようと試みるが、
「重いぃぃ……」
明らかに力が足りておらず持ち上がっていない。
少しの逡巡のあと、彼女は少年の両足を脇に抱えた。
「……ごめんね」
そうつぶやいてゆっくりと砂浜の上を引きずっていく。
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