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レンタル彼氏はじめました  作者: 響ぴあの
4/5

見栄っ張りなお嬢様

 今回は彼氏がいると嘘をついてしまったので、彼氏のふりをしてパーティーに出席してほしいというプライドの高いお客様です。イケメンの彼氏がいると、つい言ってしまった手前、後に引けなくなり、イケメンを指名してきたようです。私が担当になりました。


 パーティー会場の近くで待ち合わせです。

 パーティーなのでそれなりの正装でという要望がございました。

 私はタキシードに身を包み、今日の彼女に挨拶します。


 彼女は太っていて一般的基準から見れば、あまり美人ではない容姿でしたが、お金持ちのお嬢様で 品のある素敵なお召し物を着ていらっしゃいます。ハイヒールのヒールが細すぎて、彼女の体重で壊れてしまわないか、いささか不安でしたが 私は彼女をエスコートして会場に向かいました。彼女の髪の毛はカールしていて、美容院できっちりセットしているようでした。


「こんにちは~」

 彼女は明るく挨拶をします。

 彼氏となる私も本気の笑みで挨拶をします。


「ちゃんと彼氏らしくしなさいよ」

 小声で彼女は命令します。

 彼女のプロフィールは完璧に頭に入っています。

 生い立ちもざっくりですが聞いたものは全てインプットしました。


 彼氏として必要な知識は全て入れたうえで参加しましたから。


「素敵な彼氏じゃない?」

 美人なお嬢様風の女子が話しかけてきました。

 その人の隣にいる彼氏は 正直あまりかっこよくないのですが。


「え……? まぁね」


「いつ出会ったの? こんな素敵な彼氏がいるなんてもっと早く教えてほしかったわ」


「私とれいかさんは2週間前、図書館で出会ったんですよね」

「えぇ」

 二人で出会いから交際の内容を考えていたので口裏を合わせることは容易でした。


「図書館でこんなイケメンに出会うなんて。私も図書館に通おうかな。

 ちなみにれいかちゃんのどのあたりが好きなんですか?」


 意地悪そうな美人は弱点を探そうと躍起になっているようだった。


「優しくて美しいところですよ」


 隣にいた本人の顔が赤くなる。そこまでの打ち合わせはしていなかったから。


「体格のいい女性がお好きなの?」

 意地悪が炸裂する。


「体格のいい女性? あなたのことですか?」

 美人が生まれて初めて体格がいいなどと言われたので、

 美人は少しあっけにとられた後 その場を去った。


「――ありがと」

 あまり愛想のないプライドの高いれいかが礼を言う。

 珍しいこともあるものだ。


「あなたも仕事だから今日だけは、私の彼氏としてちゃんと愛してほしいわね」


「もちろんです。今、あなたのことで私の心は満ち溢れています」


「どうせデブとかブスとか心の中で思っているのでしょう?」


「決してそのようなことはございません。あなたは素敵です」


 れいかはふくれた頬を赤らめた。


 プライドが高いけれど、一度も彼氏などできたこともないれいか。

 プライドが高いからこそ、見栄を張りたい。


 その行きついた先がレンタル彼氏だった。


 自分で自分のことをデブとかブスとかそういった類だと薄々感じていた。

 幼少のころはお姫様のような衣装を着ることも多く、

 まわりは「かわいい」などと褒めちぎるため、美人だと思い込んでいた。

 しかしながら、そんなに美人ではないということに思春期の頃に気づかされたのだ。


 まわりの女子には告白する男子がいるのに、自分の所へは来ないのだ。自分から告白することもできず、ひたすら待っていたら誰も来ないという悲しい結末に。レンタルだからこそ、かっこいい彼氏ができたのだ。あの意地悪美人の彼氏より百倍かっこいい彼氏だ。


 世の中お金があれば素敵な彼氏だって買えるのだ。気分を良くしたれいかはショーマに提案する。


「もしよければ私専属の彼氏にならない? お金はあなたが望むくらい払うわ。結婚してもいいのよ。そうすれば我が家の資産はあなたのものになるのだから」


 れいかは一人娘で、婿養子を取るつもりだった。その相手には相続権があるのだ。


「もし、再利用したいのであれば、次回の予約を入れてください」


「私と専属契約しなくていいの? 億単位のお金が手に入るわよ」


「会社の規約に違反しますので」


「何が会社よ。そんなもの辞めればいいじゃない。永久就職先が決まったのよ」


「大変ありがたいお申し出でありますが、お金でレンタルできるものとできないものがこの世にはあるのです。私はプロ彼氏です」


 れいかは少しむっとした表情をしたが、知人に会うとショーマを彼氏として自慢げに紹介していた。鼻が高いのだろう。見た目がすてきな彼氏ができたのだから。


「また会ってくれる?」

 帰り際にショーマに上目遣いで少し照れながられいかは聞いた。


「いつでもご予約おまちしています」


 ダメもとで聞いたのだが―――れいかは、彼は仕事としてしか自分に向いていないことに気づかされる。やっぱりだめか……そう思いながらも、次回再び予約を入れることを決意したのだ。

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