キャリアウーマンは誘惑する
彼女は2回目のデートで自宅を希望しました。
彼女は1回目よりもかわいらしい洋服に身を包み、
化粧も流行を取り入れたようなメイクを施しておりました。
私が紳士的で良い人だということが理解できたのでしょう。
手料理を振る舞い、一緒にお酒を飲みながら
彼女の学生時代の話や仕事の話を聞きました。
私は聞いていただけで、何もしてはおりません。
「私、中学の時は結構モテていたのよ。男子から結構告白されたし。高校では勉強をがんばっていたし、周りから尊敬されていた部類の人間だったのよ。大学も一流大学だったし。でも、一流大学の先に何があるのか私には見えなかった。夢も見つけられなかったから、今、こんなことしているの」
自慢が入りつつの、自虐をいれつつの彼女の半生をただ、聞いていました。
3回目が今日です。
時間は2時間となっているので、最初から彼女は誘惑モードのようです。ベッドで寝てほしい。そう彼女の瞳はささやきます。
私は「寝るだけならば、ベッドに行ってもかまいません」と念を押しました。
彼女と私はベッドで寝ころびながら、天井を見上げました。
そして、彼女はたわいない話を始めました。
彼女の瞳を見つめながら、私は聞き入りました。
彼女は手を握りました。
そして、キスをします。
しかしながら、私にはその気はありませんので、やんわりとかわしました。
わざと私の手を彼女の体に触らせようと誘導するのですが、それもうまくかわしました。
性交渉はできません。しかしお客様の心を傷つける行動もできないのです。
私は、彼女を抱きしめながら話を聞きました。
彼女は将来への不安を口にしたのです。
「結婚したくないわけではないの。
孤独死も嫌だし老後の不安もある。
彼氏は欲しいけれど 面倒な気持ちもある。
結婚をしたいけれど、いい相手がいない」
自分は孤独死するのではないか?
一生一人ではないか?
不安の渦の中にいるようでしたので
彼女の手をにぎり、相槌を打ちながら
ほんの少し、一般的なアドバイスをしました。
「ねぇ、ショーマ君。私と本気で恋愛してみない?」
そのように彼女はベッドの上でささやきました。
そして、そのまま眠るのです。
なぜならば、私の眼力を彼女に使いましたから。
この特殊能力があるので、レンタル彼氏として、
会社でもトップの成績を誇り、指名は上昇しています。
私の特殊能力の眼力を使うと女性は眠りに落ち、夢の中で幸せになれるのです。
そして夢の中で私に対していいイメージが焼き付くという
レンタル彼氏としてはとても有能な能力なのです。
相手が性的関係を望んできたときや対応が難しい時は、眼力を使います。
ちょっとした能力ですが、会社員であればあまり使えない能力でしょう。
私の能力は、特殊な仕事や分野でなければ発揮できない、特殊能力なのです。
彼女は眠りに落ちました。
きっと明日も仕事が待っているのでしょう。
つかの間のひと時、夢の中で幸せになってほしいものです。
ミサは翌朝目が覚めて、4回目のレンタル予約を入れるのでありました。
相当夢の世界がよかったのか……本気で彼を愛してしまったのかもしれません。
愛してもらえるように振舞うことが仕事なのだから。
ショーマは優秀なプロのレンタル彼氏なのです。