【第一話】情報収集
初投稿です。拙い文章ですが、暖かい目で見守って頂けると有り難いです。
ー???
夕日が射し込んでいる。
魁「クソっ…。」
背後から迫り来る足音。そして「言葉」。
???「待て!」
魁「殺す!」
間髪を入れずに殺すと叫んだはずだが、一瞬だけ立ち止まってしまった。
???「おい! おまえら! 囲め!」
???「あなたは手をあげて我々に降伏する!」
魁「殺す!」
???「クソっ、埒が明かねぇ。」
???「口を塞ぐしかねぇのか」
???「おい、お前ら! 死んでもこいつの口を塞げ!」
魁「逃げ場がねぇ……だが大人しく捕まってたまるってかよ!」
腰からナイフを抜くと???の方へ向かって投げる。
???「落ちろ。」
ナイフは???のもとへ届くことなく地に落ちた。
魁(どうしようもないのか…!?)
???「チェックメイトだ。」
魁「ウグっ……。」
奴の部下に口を塞がれる。その直前。
魁「殺す。」
一瞬にして魁がその場から消えた。
???「してやられたか」
ーラボ
気がつくと魁はラボにいた。
魁「すまねぇ……しくじった。 だが奴の新情報は手にいれた。」
蒼井「そうか。データベースへ記録を頼む。」
専用のパッドへ情報を書き込む。
魁(名前……田村。能力……言葉を「現実」にする。)
蒼井「次こそはちゃんと仕留めろよ。 同じ能力者は二人も要らない。」
魁「あぁ、分かってる。」
魁(やっぱ怖ェー女だな)
魁「今日はお前の言葉に助けられた。」
蒼井「それはどうも。」
蒼井は「魁が能力を発動したとき、必要ならばラボに転移する。」という言葉をかけていた。
蒼井「それにしてもお前の能力はなかなか便利だよな。」
蒼井は言葉を「殺す」能力者、魁を横目で流しながら言う。
魁「確かに応用は利くな。 癖は強いけど。」
蒼井「自分への言葉しか殺せないのが欠点だったな。 あとはあいつらの帰還を待つのみ……か。」
魁「まず有栖が死ぬことは無いだろうな。 言葉を跳ね返す能力って中々のチートだわ。」
蒼井「使い方によっては確かにチートね。」
魁「心配なのは三咲だな。 言葉を保存する能力を活かせてるか……。」
蒼井「生命反応は全員あるから、生きていることは確かね。」
蒼井はパッドを見ながら言う。そこへ、騒がしい音と共に誰かが帰ってきた。
三咲「みっさきさまの!!! おかえりだ!!」
ドヤ顔で三咲はラボへ帰ってきた。あらかじめ蒼井の「ラボに転移する」という言葉を保存しておき、それを解放して転移してきたのだ。
三咲「蒼っち! 保存した言葉を打ち消してくれい!」
そう、保存できる言葉の数には限りがあるのだ。
蒼井「分かったわ。 あと蒼っちってのヤメロ。」
そう言って、蒼井は能力で保存されている言葉を視覚化しようとした。ところが。
蒼井「ん?」
相手の能力によって視覚化を防がれているようだ。この場合無闇に打ち消すと、カウンターをくらう場合が多い。
蒼井「とりあえず安全な言葉から解放していって。 その間に解析するから。」
三咲「承知いたすた!」
「ふんす!」と言わんばかりの顔で、一つずつ解放していく。言葉を解放する際に方向性を持たせて、相手にぶつけることも出来るようだ。
魁「なぁ、思ったんだがよ、俺が言葉を殺した方が早くないか?」
蒼井「確かに早い。 でも術者や能力、意図を掴む必要がある。 あとは、私の能力の扱い方の練習ね。 咄嗟に言葉を消せるように慣れておかないとね。」
魁「なるほど。 俺みたいに単純に殺せる訳じゃないもんな。」
実は魁にはある秘密があった。魁の能力は言葉を「殺す」能力ではなく、言葉を「奪う」能力だったのだ。言葉を奪った相手の能力を使役可能だ。
この能力は、全能力者に忌み嫌われている、悪魔の能力だ。
魁は以前、この能力のせいで迫害されていたのだ。そのため、能力を隠して活動している。
何故、言葉を「奪う」能力者は忌み嫌われているのか。それは15年前の能力大戦に関係している。
ー15年前
それは言葉を「奪う」能力者とその他の全能力者の総力戦だった。
周到に準備を重ねた言葉を「奪う」能力者に他の能力者は全く歯が立たなかった。
最終的には、対物スナイパーライフルによる全方位からの狙撃によって殺害された。
死者数は、一般市民24万人。自衛隊員8万5千人。能力者19万7千人。計51万1千人にのぼった。
この大戦を期に、言葉を「奪う」能力者は忌み子と呼ばれており、国指定の殺害対象となっている。
ーラボ
月の光が防弾硝子から射し込んでくる。夜も大分更けてきたみたいだ。
三咲の言葉の解放を終えて少しした頃。
蒼井「有栖の生命反応が消えたわ。」
魁「死体はこの世界に存在するか?」
蒼井はタブレットを操作し、死体の有無を調べる。
蒼井「サーチ。 対象:有栖。 ……存在しないわね。」
魁「可能性としては、物理的に灰になったか、異空間への転移が考えられるな。」
三咲は聞こえていなかったのか、呑気にアイスを食べている。
三咲「♪」
魁「おーい! 三咲ー?」
三咲「?」
首をかしげて三咲が此方を見る。
魁「有栖の生命反応が消えたらしい。」
三咲「な!? 嘘だろ!? それ絶対あかんやつやん!」
魁「てことで作戦会議と情報整理だ。 アイス食べながらでいいから、会議に混ざれ。」
三咲「うぃっす!!」
こうして、夜がさらに更けていく…
三咲( ≧∀≦) 蒼っち~!
蒼井( ^ω^) ヤメロ
魁(*´・ω・) (こいつ今日も元気だな