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17 同士発見…?

今回もよろしくお願いします。

 ガイの、初めて見せる笑顔。嬉しさや楽しさから浮かべたものではなかったが、その表情から先程までの険は感じられなかった。

 その苦笑いは、一体どういう心境から出たものなんだろうか。僕の言葉を信じてくれた?それとも、支離滅裂過ぎて呆れているだけ?そもそも、僕はガイの友達になったのか、それともその話自体なかったことにされたのか。断言出来なくて気になるけど、本人に『僕たちってもう友達?』なんて聞けないし…。


 僕が悶々として言葉に詰まり、気まずさを感じ始めた時、ちょうど遠くからお姉ちゃんの声が聞こえてきた。


『お~い2人とも!そろそろお昼だから、みんなで一緒にごはん食べましょ!』

「『う、うん!分かった!』」


 この場を離れられる口実が出来たことに、これ幸いと素早く応じ、そのまま早歩きで立ち去ってしまった。それでも、気持ちを完全には切り替えられない。

 何も言葉が出なくて急いで離れたけど、やっぱり、友達なのかどうかは聞いておくべきだったかもしれない。後から蒸し返してだと、さっきよりもっと聞きづらいだろうし。ああ、これからどういう距離感で接していけばいいんだろう…。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 4人揃って広いリビングへ入ると、お姉ちゃんと僕、長テーブルを挟んで対面にユーリとガイが隣り合って座った。しばらくして給仕の人たちがテーブルに食事を並べ始めたが、どの皿にも見たことのないような食材が見栄えよく盛り付けられており、一目で一般家庭では出てこないような高価なものだと分かる品々だった。

 改めて、ここが領主様の家なのだと認識し委縮する。マナーとかあるのだろうか。とりあえず、他の人の食べ方を見ながら食べよう…。


『どうだい、2人とも。朝のうちに話して、仲良くはなれたかい?』


 食事の最中、ユーリがおもむろに問いかけてきた。脈絡のない質問に心臓が大きく跳ねる。どうしよう、まだ結論は出ないままだし、とりあえず当たり障りのないことを言っておいてーーー


『うん、友達になった』

「『…え?』」

『!そうか。よかったなぁ、ガイ。ようやく友達が出来たじゃないか』

『兄ちゃん、余計なこと言わなくていいから』


 僕が何か言うよりも早く、ガイが返事をしていた。喜ぶユーリと、鬱陶しそうに言い合いながらも、どこか嬉しそうに話すガイを眺めながら、先程の言葉を反芻する。


「『ともだち…』」

『よかったわね、シシー』

「『…うん』」


 ガイの言葉が、何よりの証明となった。彼は僕の言葉を聞き入れ、友達になってくれていた。それを理解して、安心と嬉しさがこみ上げてくる。自然と口角が上がっていくのを誤魔化すため、水の入ったグラスに口を付ける。


『2人が仲良くなれるか不安だったけど、杞憂だったみたいだね。リリーの言った通りだ』

『もう、2人ともいい子だから大丈夫だって最初から言ってたのに。信じてなかったのー?』

『ははは、そんなことないよ』


 どうやらユーリも、ガイと僕の成り行きを心配していたようだ。だが、ガイの言葉を聞いてからは安心したのか、口数も次第に多くなっていった。

 気さくに話すお姉ちゃんとユーリを見ていると、また胸がチクチクと痛みだす。2人の関係を、僕は何一つ知らない。それでも、少なくともユーリと話すお姉ちゃんからは、リーシャさんや僕に向けるのとはまた違った熱が感じられる。その熱は、やがてお姉ちゃんを僕の知らない所へ連れて行ってしまうのではないか。そんな小さな懸念が胸を締め付ける。

 ふと視線を上げると、2人の様子を窺う人物がもう1人いた。苦しそうに眉を寄せながら2人を眺める姿には、既視感を覚える。…もしかして彼も、僕と同じ気持ちを抱えているのではないか?


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「『ガイ君って、ユーリさんのことどう思ってるの?』」

『…それってどういう意味だ?』


 昼食を食べ終え、元の中庭へ戻って来たガイと僕。開口一番、問いかける僕に、ガイは怪訝な表情を浮かべる。


「『もしかして…好き、なんじゃないの?ユーリさんのこと…。それで、ユーリさんがお姉ちゃんと仲良くしてると、胸が痛くなってくる』」

『!』


 僕の指摘に、肩をびくっと振るわせるガイ。それから、言葉の真意を探るようにこちらをじっと見つめてくる。

 …勘違いだっただろうか?同じ考えの同士が見つかるかもしれないと、早とちりし過ぎた?いや、結論を急いで直接的過ぎる聞き方にはなってしまったが、僕の予想は間違っていないはずだ。少なくとも、先程のガイの様子を見ても、ユーリへの親愛と、彼と話すお姉ちゃんを快く思わない感情があることは間違いない。


 しばらくこちらを見ていたガイだが、やがて観念したようにため息をこぼす。


『…そうだな、おまえの言う通り、だと思う。兄ちゃんのことは…好き、だ。でも、兄ちゃんとリリーさんを見てると、なんだか兄ちゃんがそのまま遠くへ行っちゃう気がして…不安になるんだ…』

「『!』」


 やっぱりそうだ。ガイも()()()()だったんだ。その事実を確認し、自然と言葉に熱がこもる。


「『わ、わたしもっ。わたしも同じこと考えてた!わたしも、お姉ちゃんのことが好き。お姉ちゃんには笑顔でいて欲しいけど、お姉ちゃんが他の人と楽しそうにしてるのを見ると胸が苦しくなってくるの』」


 ガイは、僕の言葉に驚きの表情を浮かべる。


『…そうだったのか…』

「『でもわたし、こんな気持ちを持った人他にいないと思ってたから…。同じ考えの人がいてくれて嬉しい』」

『…ああ』


 ああ、自分と同じ思いを持つ人がいることがこんなに嬉しいなんて。自分の感情に自信が持てて、安心感が湧いてくる。


『…俺の好きとおまえの好きは…違うものみたいだけどな…』


 最後に漏らしたガイの呟きは、誰にも届くことなく消えていった。

お読みいただきありがとうございます。

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