表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/75

68 スケット王国突撃1

 会議の翌日。

 テントに一筋の朝日が差し込み、鳥のさえずりと共に私の意識を覚醒させた。


「んんっ……」


 少し早起きな気もするが、目が覚めてしまったので起き上がる。

 ルイスもミーナちゃんも眠っている。それを確認しながら、私は今日行われる大イベントに思いを馳せていた。


『王国に入り、帝国の軍勢を退けるわよ。どうもニラスさんの話を聞く限り、武器でも、実力でも負けないはず……なのに王国が追い詰められているなんておかしな話だわ。直接確認するために今ある戦力で突入するわよ』


 シーオフェリアの言っていたこと。

 あれには同意せざるを得なかった。

 王国の騎士団や近衛兵、軍事的な面に関しては世界でも有数のものだ。

 さらに冒険者ギルドもある。にも関わらず、王国側が自国に敵軍の侵入を許し、そして追い詰められているのはどう考えてもあり得なかった。

 そして、会議が終わり、さらっと私だけに聞こえるように発したあの言葉。


『バルギアが変なものを持ち込んだかも……』


 変なもの。それって……一体なんなのかしら?

 その言葉が未だにつっかえていて、とてもスッキリしない。


 このことを深く考えるほど思考は沼へと嵌っていく。

 なので、このことを考えるのはやめにした。

 この踏ん切りをつけるまでにだいぶ時間が掛かってしまい、気がつけばさり気なくシーオフェリアが側にいた。

 彼女は気配を消して近づいてきたため、全く気が付かなかった。絶対、面白がってやってるわね。


「何か悩み事かな?」

「リア姉……気配消して近づかないでよ」

「はいはい、それで? なんで遠い目してたの?」


 勘のいい彼女は私の浮かない表情からそう尋ねてきた。

 鋭い姉を持つと隠し事とかが出来なくて大変ね……。


「……昨日のリア姉が話してくれたことがね」

「昨日?」

「バルギアが持ち込んだ変なもの。それが何か気になったの……リア姉は何か予想できる?」


 思い出したかのように「はいはい」と首を数回降った後、シーオフェリアは私を見つめた。


「心当たり、あるわよ」


 うん、なんか予想できてた。

 

「それは何?」


 そう改めて聞くとシーオフェリアは不気味に笑った。


「……恐ろしいものよ。怪奇現象が起こるかも」

「……」

「え、反応なし?」

「リア姉……なんか分かっちゃった」


 怪奇現象って……あれしかないでしょ。

 シーオフェリアの言う怪奇現象とは、重力操作の魔法ということで間違いない。

 で、その重力操作の魔法というのは、ある程度の魔力がなければ大きい物体を動かせない。よって、怪奇現象と言えるものが起こせるやつは限られている。

 つまり、魔力量が多く、かつ魔神、女神以下の存在。というとアレしかないのだ。


「……天使、又は堕天使でしょ」

「……」


 答え合わせの結果は正解らしい。

 シーオフェリアはつまらないといった感じにあくびをした。


「はぁぁ、分かっちゃったか。まあ、王都に入れば必ず目に入るんだけど」

「……どうやって天使が居るって知れたの?」

「言ったでしょ。協力者が居るって……あと、天使じゃなくて堕天使の方ね。堕天使は魔神の言いなりだから、大方バルギアが呼び寄せたんだろうけど、多分あれ複数いるわよ」

「ええ……」


 とんでもない事実をさらりと言うシーオフェリア。

 複数いるとか目に見えて面倒じゃないの。

 というかその協力者って何者よ!

 そんなことを把握できるなんて、只者じゃないわね。

 と、堕天使がいると何気に確認できたところで、私は最後に今回の作戦をどうするのかという結論を求めた。


「はぁ……それで? 魔神だけじゃなくて堕天使もいる。それでどうやって王国を救うの?」

「何をおっしゃって……サーちゃんがパパッと片付けてくれれば万事解決じゃない、うん!」


 シーオフェリアの結論。

 私にそれらの排除をしろと……。


「いや、流石に数が多かったら私でもやり切れるかどうか……」

「いやぁ、そうだよね。でもでも、多分普通の人間がほとんどだし、今回は頼り甲斐のある騎士の皆様もいるから。堕天使やバルギアは前に出てこないと思うし大丈夫……多分」

「うーん……」


 横暴だ!……と思ったが、それはそれで正しい可能性がある。彼女の言う通り、堕天使がわんさか歩いているというのは考えにくい。精々一桁だろう。

 なら、私が殲滅できる範囲のことかもしれない。

 ……結局、私は渋々それに頷いた。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 王都への突撃の時間となった。

 私の役回りに対して解せない部分が大きい。でも、既に作戦の進行度は最終段階まで進んでいた。

 つまり、もう文句も言えないし、後戻りもできない。


 準備の整った騎士から順に隊列に関して緻密な打ち合わせをシーオフェリアとしているようだ。

 簡単に聞いた話だが、突入の陣形はオーソドックスに密集陣形だと言う。

 その後方に王子を取り囲むように第二部隊が方陣を組む。

 この陣形で一気に王城まで進み、友軍の元へと合流。そして、苦戦を強いられている王国の軍勢に加勢して、状況を打開する。これが今回の作戦である。

 私の役割は、密集陣形を取っている騎士達より先に進んである程度の敵を殲滅すること。

 今回の作戦で指揮系統として動くシーオフェリアは前方には出ず、殿をつとめるらしい。

 シーオフェリアの他にルイス、ミーナちゃん、それからあの熊? が後方に配置されることになる。


 万が一にもミーナちゃんに危険が及ばないようにシーオフェリアが付いていてくれるのは心強いことだ。

 しかし、前方が私だけだと殲滅出来る自信がない。

 と、それをポロリとシーオフェリアに伝えたら、後方から魔法で援護してくれると言ってくれた。


 取り敢えず、この布陣的なら不安が少ないらしい。

私とシーオフェリアが頑張れば、犠牲も出さずに行けるということ。

 

「いい、この先は王国だけど敵に占領されてるから。覚悟して突入するのよ」


 被害を出さずに一つ目の作戦を終えられるかもしれない。なるほど、通りでシーオフェリアが真剣なのね。

 ここで被害を出さずに王国の騎士団を導ければ、後々共和国は大きな貸しが作れる。

 よくできているわね。


 そんなシーオフェリアを眺めながら、私はルイスとミーナちゃんが待機している場所に移動した。


「どうルイス。緊張してる?」

「ああ、胃がキリキリ痛むよ」

「ミーナちゃんは?」

「熊さんが一緒だから平気だよ!」


 心底顔色の悪いルイスと小型化させた熊を優しく撫でるミーナちゃんはそれぞれが本音を漏らした。


「貴方にも期待してるわよ」

「キュガ!」


 熊にも目線を向けてそう言うと、嬉しそうに唸りを上げた。


「さて、ルイス。私は前の方に戻るけど、今回、私は前方で戦うことになる。後ろには行けないから、ミーナちゃんを任せたわよ。一応リア姉もこっちに来るから大丈夫だろうけど……」

「おう、任せとけ。命に換えてもミーナちゃんは守るよ」

「……できればルイスも無事でいて欲しいんだけど……分かった。任せたわよ」

「そっちも頑張れよ」


 ルイスの心配混じりの激励に静かに頷いた。

 そして、今度はミーナちゃんを見つめる。


「ミーナちゃん、ルイスとリア姉から離れないようにね」

「うん、サシャお姉ちゃん。頑張ってね!」

「ええ、ミーナちゃんのために頑張るわ!」


 ミーナちゃんに軽く抱擁をしてから布陣の前方へと戻った。

 前の方に戻るとシーオフェリアが一通りの段取りを話し合えたのか、後ろに向かおうとしているところだった。


「サーちゃん、いよいよ出発よ。覚悟はいい?」


 その問いの答えは当然決まっていた。

 迷わず私はシーオフェリアと視線を合わせた。


「ええ、当然覚悟はできているわ」

「そう、前衛の騎士に作戦の段取りを最終確認したから、サーちゃんは安心して行く手を阻む邪魔な敵を倒してくれていいわ」

「分かった」


 そんな話が終わった後、シーオフェリアは最後に私の後ろに立っていた騎士に視線を向けた。何かを合図するかのように鋭い眼光をその騎士に向けたかと思うと、今度はすぐに後ろへと歩いてしまった。


 続いてその騎士の方に目を向けようとした。しかし、既にそこには例の騎士の姿はなく、代わりにとあるものが置いてあった。


「……剣?」


 引っこ抜き、そして、その剣がとても手に馴染むことに驚いた。

 よく見てみると、剣には紙のようなものが巻きつけてあり、剣から取り外して開いてみるとそこにはこう書かれていた。


『お姉ちゃんからのプレゼントよ。

 その剣は必ずサーちゃんの役に立つわ。

 私の魔力を込めた特製の魔剣、頑丈だし堕天使戦で大活躍間違いなしよ。

 それからバルギアの決戦には私も参加するけど、サーちゃんもその剣を持って来てね。その剣でバルギアに攻撃すれば、ある程度の補正の恩恵を受けられると思うわ。

 それじゃ、サーちゃんの武運を祈るわ。

 サーちゃんが大好きなお姉ちゃんより。





 PS バルギアを倒さないと王国の呪いは解けないから、王国に侵入した後、アレに逃げられないように物理結界を張っておいて下さい。』


 ……うん、ありがとう……リア姉。

 それからちゃんと結界を張って欲しいと委託する辺り、抜け目ないわね。


 シーオフェリアのしたたかさに感心しつつ、私は結界の準備をしながら戦列に加わった。

 それから程なくして全員の準備が整い、後方からシーオフェリアの「前進」という声が聞こえた。

 その一声によって、私達は目的地である王城を目指して移動を始めた。


 先頭が私。

 その後ろに大盾を構えた重装備の騎士がずらずらと続いてくる。

 大盾の重装騎士の後方には、王子を取り巻くように魔法が使える魔導師、弓兵混合部隊が配備されていた。

 長方形に死角が出来ないように四方向から目を光らせている。

 そして、最後に重装、軽装、魔導、弓兵、女神、エルフ幼女、黒髪青年、熊……? が入り混じっている控えの部隊がぞろぞろとついて来ていた。

 こうして、王国への突撃作戦が幕を開けたのだった。





 必ず、成功させてみせるわ。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ