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60 王国までの道中7

無事、60話まで来られました。これも応援してくださっている読書様のお陰です。まだまだ長く続くと思いますが、これからもどうかお付き合い下さい!

 ルイスから、詳しい事情を聞くことになった。

 ルイスによると、なんとシーオフェリアが私が女神であることを暴露した。そして、自身もその類であると発言。なんとも、まぁ、身勝手なことを……自身が女神だなんて言ったりしたら、怯えられるか、恐れられるか、あるいは信仰されちゃうか……どちらにせよ、ルイスにそんな感じになって欲しくない。


 しかし、実際ルイスはそのような風にはならなかった。そのことを私に話している時も至極冷静……強いて言えば顔が少し赤い……熱がある、ということにしておこう。


「それで、その……」


 一通りのことを話し尽くしたルイス……なのだが、いまいちスッキリしない声で口籠もる。


 それも、そうか……ルイスも私が女神であると知って、少しばかりショックを受けたのだろう。人間からしたら、そういう反応をするのは仕方のないこと。

 いきなり一緒にいた女が女神でした! なんてことを直ぐに受け入れられるということ自体、難しいと私は思う。


「やっぱり、女神だなんて怖い、わよね……」

「……え!? いや、そうじゃなくて!」


 え? そうじゃない? 建前なのか、それとも本当に怖くないのか。どちらにしても、理由が知りたい。


「じゃあ、何?」


 首を傾げてルイスに聞くと言い辛いのか、視線を馬車の床へと落とした。


「えっと、なんというか……俺って、なんかサシャと近いというか……素は同じだけど、違うというか……」


 え、何言ってんの? 意味がわからない。


「ル、ルイス? その、素が同じで、近いけど違うって意味が分からないのだけど……アイソトープ?」

「いや、サシャ。そのアイソトープって方が意味わからないんだけど……」


 場は先程よりも空気感が軽くなった。


「で? 言いたいことは何よ?」

「まあ、サシャなら大丈夫か……いや、大丈夫、大丈夫じゃないとか、そういうのより、話さなきゃだよな」


 決心したようにルイスはこちらを漆黒の瞳で深々と見つめてきた。


「……実はな」


 時の流れが遅くなったかのように感じる。


 ルイスは何を言うのだろう。


 ルイスは何に覚悟を決めたのだろう。


 分からない……。


「実は俺、魔神……だったりするんだけど……サシャ?」


 一瞬、反応に遅れてしまった。

 魔神? え、ルイスが魔神って……。


「……似合わないわね」

「余計なお世話だよ!! ていうか最初に出てくる一言がそれって、どんだけ警戒心無いんだよ!」

「いや、魔神だとしてもルイスだし」

「どういう意味だよ!! 俺の決意を返せ〜〜〜〜!!」


 シリアスな空気感は全く無くなり、ついふざけてしまった私はルイスに長時間の説教を食らうことになった。ミーナちゃんは、私の膝で寝たまま、つまり私は正座のままでこの理不尽極まりない拷問を耐え続け、その結果……足が痺れて死にそうです。


 女神でも正座のままは辛い。


「ルイスさん、ルイスさん。そろそろ時間的に……あと、足が……」

「サシャ……。最後に一つ……嘘でも、もうちょっとマシな反応をして欲しかった」


 すいません。ごもっともです。


 説教が終わった後、ルイスの顔は晴れ晴れしたものだった。私はもう勘弁してほしいが……。


 でも、落ち着いて考えてみると、やっぱり信じられない。


 ルイスは、魔神ルイヴィース。私がかつて、戦い、破り、そして力を封じて人間に生まれ変わらせた。

 彼は、ルイスは魔神の頃から随分変わった。似ても似つかない。何よりルイスは戦闘面で弱々だし、それは私が魔神ルイヴィースの力を封印したことによる影響だろうが、よけいに気が付かなかった。


 お説教の後にシーオフェリア聞いたら、彼女は、気が付いていたらしい。それもかなり前から。


 私に教えなかったのは、「いやぁ、そっちの方が面白いかなぁって、思って」だそう。調子に乗り過ぎないようにお灸を据えようと私は決意を新たにした。


 そんな感じにかなり衝撃的な出来事や事実をガシガシ投げつけられた忙しない一日は、そんな感じで終わりを告げた。












〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 日付けが変わり、辺りはすっかり暗くなった。


 外で見張りをしていた騎士の方々もすっかりお疲れモード。ルイスはミーナちゃんとぐっすりだし、シーオフェリアは、消息不明だ……まあ、明け方には戻ってくるだろう。


 私はといえば、ちょっと刺激が強い一日だったので眠れなかった。


 パチパチと感慨深い音を鳴らしながら暖かい熱を発している焚き火の側であったまっていると、背後に気配を感じで振り向いた。


「サシャ、起きてたのか……」

「ハロルダ王子……目を覚ましたのですね」


 背後に立っていたのは、少し疲れた顔をしたハロルダ王子だった。


 彼は、襲撃を受けたショックであれから暫く気を失っていた。大方今目覚めたのだろう。その証拠に付き人の一人も連れていない。


「サシャ、その……今日は、色々あったな」


 ずっと寝ていた奴が何言っているのかという毒舌な私の本心を隠しながら、作り笑顔を彼に向けた。


「そうですね……襲撃には、驚きました」

「ああ、死ぬかと思った……」


 彼の顔が真剣過ぎて、その恐怖の度合いが安易に想像できる。怖かったのだろうなとちょっとだけ考え、なんでこんなところに来たんだよ。大人しく王国で待っていれば良かったのにと強く思った。


「それで、王子。これから王国に戻る訳ですが……そもそも私を探しにきた理由って何ですか? 大方予想は出来ますが、はっきりとその理由を聞いていません」

「ああ、サシャのいや、サレーシャ様の考えている通り……王国が危うくなったから助けて貰おうと……そう思った」


 この質疑応答に意味はない。ただ、私の中で納得する確かな理由が欲しかった。


 焚き火を見つめながら、私は手遊びをしながら、一息ついた。


「……なら、私は王国を救います。元々私が加護を解いたことが理由でもあります。だから、やれるだけのことをやるつもりです」

「ほ、本当か! 国を救ってくれたら、婚約も──」

「それはお断りします」


 彼が言いかけた言葉を、私は強引に遮った。

 そう、それは筋違い。彼が言おうとしたことは、間違っている。


 自分がしたことを理解しているのなら、そのようなことは言わない。つくづくハロルダ王子は、ハロルダ王子だと、再認識した私は、しばしの間言葉を継がなかった。


 沈黙の中で火花が弾ける音が、暗闇の夜に響き続けた。






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