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58 王国までの道中5


ルイス視点から入りますので、ご了承下さい。

 ルイスside


「ねぇ……ルイスくんって魔神だったりする?」


 そんなことを言われたのは初めてだ。

 オフェリアさんが俺を呼び出した理由が分かった気がする。魔神、即ち良くない神。忌み嫌われる神。そんな悪しき存在を家族の近くに置いておきたくない。


 誰でもそうする。その存在と一緒にいるだけで、なんだか不幸になる気がするから。


 オフェリアさんから目を逸らしてしまう。

 物凄く申し訳ない……。


「……」

「えっと、何か変な誤解を生んだ?」


 靴についた土を振り落とすように足を器用に動かして、彼女はそう呟いた……疑問形で。


「……かん、ちがい?」


 勘違い? いや、何が勘違いなのか?

 顔を上げると、オフェリアさんの変わらない微笑がそこにあった。


「そう! えっと、ルイスくん。なんか凄い誤解してるでしょ?」

「いや、誤解というより、オフェリアさんから告げられるサシャと離れろ宣告を甘んじて受け入れるつもりですよ?」


 あれ? 何故オフェリアさんはこめかみを押えて頭を抱えるようにしているのだろう。ついでに大きなため息も吐き出していた。


「ルイスくんは、私がそんな非道な女性に見えるの?」

「えっと……え?」


 オフェリアさんは指をこちらに向けながら軽く咳払いをする。


「いい? 別にルイスくんが魔神だろうがそうでなかろうが、私はそんなこと微塵も気にしてないから」

「そうなんですか?」

「そうなんですぅ」


 ぷくりと頬を膨らまして、わざとらしくそうアピールしてくる。確かにその雰囲気からは殺意とか敵意などは一切感じられない。


「えっと、じゃあ何の話をしに来たんですか? それなら俺が魔神かそうじゃないかを確認するためだけじゃないでしょう?」


 二回頷いて、オフェリアさんは馬車の方へと視線を移す。


「そ、ルイスくんが魔神ってことはほぼ確信してたから、これはただの事実確認」

「バレてたんですね……」

「ここからが本題なの……」


 オフェリアさんの声のトーンが二段階くらい低くなった気がした。


「今から、私達は王国へ行くわよね?」

「はい、サシャが言うには王国に現れた悪人を退治しに行くとか……」

「そう、ここまでで質問は?」


 いや、何も可笑しくないよな?


「ありません」

「ふーん……本当に?」


 え? これ何か疑問もった方が良かったやつ? ちゃんと答えないと永遠に続くやつか?

 オフェリアさんは眉をハの字にして、俺が言葉を出すのを待っている。


 何か……可笑しな点……そうだ。


「えっと……サシャが悪人を退治しに行くことですか?」


 答えると、パッとオフェリアさんの顔色が明るくなった。どうやら正解のようだ。


「当たり。サーちゃんが悪人を退治しに行く。王国にはかなり危険が付き纏っている。しかも、王国はサーちゃんが捨てた国、行くメリットがないと思わない?」

「……確かに」


 だいたい、そんな遠出の仕事ってサシャが嫌いそうな感じだしな。

 俺が同意するように相槌を打っていると、オフェリアさんが満足げに、そして悪戯っ子みたいな顔を見せた。


「ふふん! なんてったって、私が無理やりお願いしたからぁ」

「オフェリアさんが元凶かよ……」

「あらあら、随分と砕けた感じになってきたじゃない」


 ああ、なんかオフェリアさんってそういうキャラなんだ……いや、サシャの姉だしな。


「それで? なんでそんなこと頼んだんですか?」

「ふふっ、もうちょっと雑談でもしたかったけど……まあ、いいや」


 オフェリアさんは、艶やかな髪をくるくる弄りながら、話を続けるために息を軽くふうっと吐いた。


「その悪党……首謀者がかーなーり、厄介なのよねぇ」

「それって……」

「うん、かなり強い。だからサーちゃんの力添えが必要なの」


 そうなのか。だからサシャに協力をお願いしたのか。サシャはかなり強いし、手強い相手にでも遅れを取らない。……姉だから知っていること……か。


 いや、待て!


「あの、一ついいですか?」

「何?」


 彼女がサシャの姉ならば、

「オフェリアさんって、王国に住んでいて、貴族の家系に生まれた……ってことでいいんですか?」


 そう、彼女は元々フリーク公爵家の娘、なら彼女もその家系の筈。


「違うわよ?」


 しかし、俺が納得できる答えが返ってくるわけではなかった。


「どういうことですか……」

「うーん、まあ、話そうとは思っていたし別にいいんだけど」


 少し頬杖をつきながら悩んだように視線をふらふらとめぐらして、そうして漸く吹っ切れたようににこりとスマイルを一つ作った。


「それで、どういうことですか?」


 もう一度そう問うと、オフェリアさんはコクリと一回頷いて、口元に人差し指を持ってきて、可愛く言った。


「えっとね、実は私も君の同業者……だったり?」


 は? 同業者って……何? 冒険者ってこと? いや、それなら前から知ってること。


「オフェリアさんが冒険者ってことですか?」

「ああ、違う違う。言い方が悪かったわ。私も、ルイスくんとおんなじ、その神の類ってこと」


 一難去ってまた一難、魔神と看破された俺の目の前には、なんと驚き、自称女神のオフェリアさん。

 魔神と女神、決して交わることのない存在が向かい合う。


 そして僅か数メートルの距離で会話をしているのだ。そんなことはあるのか? 俺はオフェリアさんの言葉にまた硬直させられた。

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