54 王国までの道中1
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私達は現在、スケット王国にいる悪しき魔神を討伐するために馬車に乗り込んだ。そこまでは良い。良いのだ。でも、私の経験上、道中は様々な危険で溢れている。
恐ろしい巨大熊の鋭い爪に引き裂かれそうになったり、大量に湧いてきた野良犬に襲われて、一本の大木を中心にして激闘を繰り広げたり、兎に角、国から一歩でも外に出るものなら命がいくらあっても足りないという状況はそこら辺にゴロゴロ転がっている。
あのときの野良犬くらいなら高速で移動する馬車で弾いたりも出来るだろうが、森に入って熊とかに通り道塞がれたら実力行使しなければいけなくなる。
まあ、その辺は女神が複数居るので、心配ではない。正義の女神であるシーオフェリア。力の女神である私。そう私達は一応戦闘に関しては自信がある方の女神なのだ。特にシーオフェリアの本気とかってシャレにならないくらいに恐ろしい。魔法とか封じられたりしたら、私も手が付けられない。
兎に角、戦闘面で心配はいらない! ……はず。
現在私達が使用している馬車は全部で五両。一列に並んで移動しており、私が乗っているのは前から三両目のそこそこ豪華な感じの馬車。同乗者はルイス、ミーナちゃん、そしてシーオフェリア。他には護衛の皆さんがちらほら鎮座している。
先頭の馬車は正面がとっても頑丈そうで、王子が乗っている馬車もそれに準じている。
そして、王子の馬車は二番目だったから、少なくとも王子と乗り合わせて話しにくい空気に晒されることは回避できた。
馬車は時折小石を踏んでガタンと小刻みに揺れたりしている。その中で誰一人として活発な会話がないのが息苦しいと私は感じている。
唯一私の癒しとなっているミーナちゃんも眠っていて、それをルイスがお守りをしている感じだ。私とシーオフェリアは比較的近い場所に座っているが、ルイスとミーナちゃんが居る場所からは若干離れている。
ミーナちゃんは疲れて眠り、ルイスもそれに付き添っている。私とシーオフェリアはすぐ側に座ってくつろいでいる。……つまり、今は女神同士でじっくりと話が出来るということだ。
「ん?サーちゃん、そんなに浮かない顔をしてどうしたぁ? もしかして、怖くなっちゃった?」
「いえ、そんなことないわ。そっちこそ急に話しかけてきてどうしたのかしら?」
実際、急に話を振られて驚いたのだが、当のシーオフェリアは「またまたぁ」と手招きしながらおどけている。
「サーちゃん、実はね。今回の戦い、多分比較的有利に戦えるのよ」
「え?」
彼女は唐突にそんなことを喋り出した。
「ふっ、どうしてこんなことを言うか意味わかんないって顔してる」
「ええ、実際問題意味がわからないもの」
「ま、それもそっか……」
どこか遠い目をしながらそう言うシーオフェリアは出発までに持っていた陽気な感じではなかった。
「浮かない顔をしているのは……リア姉の方じゃない」
私がそんなことを言うとは意外だったのだろう。シーオフェリアはきょとんとしている。
「ねぇ、サーちゃん今さ。リア姉って呼んでくれた?」
因みに、彼女がきょとんとしていた理由は、私が以前使っていた呼び名で呼ばれたからっぽい。てっきり私が彼女の表情に対して指摘したことに驚いてたのかと思ったわ。はぁ……本当に彼女には敵わない。
「呼び方については気紛れよ。そんなことより何か思い詰めているのではないの?」
「なーんだ、ちょっと嬉しかったのに……そうね、思い詰めている訳じゃないんだけど……」
「ないんだけど?」
もう一度尋ねてみると、言葉を探すように目線をきょろきょろさせ、「あ」とか「えーと……」などの曖昧な感じの言葉を少し続けた後、暫く口籠もりやっと話を再開した。
「その、そうね。サーちゃんが羨ましい……って思ってたのかな?」
「羨ましい?」
そんな言葉を彼女が言うとは思わなかった。
「そ、羨ましい……のかも。今のサーちゃんって幸せそうだもの。あの二人と居るサーちゃんは生き生きしてる」
シーオフェリアの言う、あの二人とは勿論ルイスとミーナちゃんのこと。
「そうかしら?」
「そ、私はそんな人居ないし……」
途端にシーオフェリアの姿が小さく見えた。
だかそれもすぐに感じなくなった。
「ま、そんな人居なくても私は全然平気なんだけどねぇ」
先程までの彼女は、いったいなんだったのだろうか?
いつになく弱々しく、それでいて遠い目をしていた。疑問は晴れないまま、それっきりその話題は終わりを告げた。
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「サシャ、サシャ?」
ん……何?
ルイスの声が聞こえて目が覚めた。どうやら私も眠ってしまったらしい。辺りは暗いので、かなり時間が経っているのだろう。
ミーナちゃんもいつのまにか起きている。というよりも私に抱き付いているのか? 何故? どうして私はミーナちゃんが抱き付いてきているのに気が付かなかったのか?
まあ、おおよそシーオフェリアとのやりとりで疲れたからなのだけど。
なんてことを思っていると、シーオフェリアもこちらに近付いてきた。……あからさまに微妙な顔をして。
「あっ! サーちゃん、やっと起きた?」
「……どうしたの?」
馬車の揺れがないことから、どうやら停車しているようだ。停車する理由が見当たらないが……小休憩? 馬車の搭乗員一同の顔を見ればそんな下らないことじゃないってわかるんだけど……。
「いやぁ、参ったちゃった。なんか黒服の怪しい集団に奇襲されちゃったみたいなのよ。多分私達が排除するアレの手下。なんでか分かんないけど嗅ぎつけられちゃったの、てへ」
どうやら事態は芳しくないよう。
一つ分かることといえば。
「少なくとも、リア姉のその反応は場違いだって理解できたわ……」
「あはっ! またリア姉って呼んでくれた!」
こんな非常事態にも関わらず、相変わらず余裕を見せているシーオフェリア。もうこの人だけでなんとかなるのでは?
キンッ、キンッ!
「……がはぁっ」
ガギッ!
「くっ、背中を見せるな!」
「押されています! すぐに立て直さないと、馬車まで到達されます!」
「王子と女神様の場所に通すな!!」
ん!? 外から凄い金属音と切羽詰まったような声が聴こえてくるんだけど……。
「あっ、そうそう。サーちゃん、まだ襲撃うけてるからぁ」
ガタン、ドンッ!!
直後、馬車の車体からとんでもない音が響いた。
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