53 王子との再会と出発
遅れてしまい申し訳ありません。モチベは下がる一方ですが、頑張ります!
ハロルダ王子との再会を果たし、私の気持ちは大きく揺るいだ。
「「…………」」
私はその場に立ち尽くして動けなくなり、ハロルダ王子の方も口を縦に大きく開けながら目を見開いている。そして、横からの視線……シーオフェリアだ。
「何?」
「いんや、別になんでもないけど……ふっ」
私が訊ねたところで、しらを切る彼女。
そして、分かったかのような顔をして口角を少し上げている。そう、間違いなく、彼女は分かっていて彼を此処に呼び出したのだ。
この状況も予測していた?
面白いから彼を呼んだの?
いや、あるいは、彼を動かすための大義名分。つまり、彼が私を探していることを見越して、このような行動に出たのか? 彼を利用してそのまま王国に乗り込み、邪魔な魔神を討つ。
真相は分からないが、彼女が考えていることはその類いのことであるはず。
それにしても、彼は私を見るなり固まって、その後はすごすごと頭を下げてくる。これはきっとあれだろう。
つまり、私が女神サレーシャの生まれ変わりであると理解している。それ故の行動……だと思う。
一国の王子が他人に頭を垂れるなど、神的存在に対してか、あるいは他国の王族くらい。身分的に格下の私に対して頭を下げるということはあり得ないので、私の正体を看破しているだろうと推察出来た。
まあ、彼が私の正体に気付くのは時間の問題だったんだけど。何より王族だしね──。
簡単な考察をしていて、そのまま動いていなかったからなのか、心配げに下方から視線を感じる。
微動だにしなかったからミーナちゃんは、「どうしたの」と聞きたそうにクイクイといつも通り服を引いてきた。
多分、心配させてしまったらしい。ミーナちゃんの頭を軽く撫でると、気持ち良さそうに身を捻っていた。
「それで? 結局これはどういうことかしら?」
もちろん、問い詰めたところで私の気が収まる訳ではない。
しかも、彼女は悪びれないのだ。
「えー、良いじゃん別に。今回限りの協力者よ? 終わったらサーちゃんには近付けないようにするからぁ」
「なっ、そんな話──」
まるで犯行に慣れている常習犯のような口振り。ちょっとだけ制裁加えてやろうかしらと思ったのは秘密だ。
しかも、ハロルダ王子の反応……。
そんな話を聞いていないといった感じか。まあ、シーオフェリアが事細かに話すことなどないとは理解していたが、流石にそこら辺はちゃんとしてほしかった。
「俺はそんなこと言われてないぞ!」
「えー、だって言ってないもの。だいたい、感動の再会を演出してあげたんだから、誉めてくれるのが筋じゃない?」
シーオフェリアはピシリとした姿勢で偉そうにそう言う。
確かに、彼女が私の居場所を彼に流したとしたら、彼にとって、感謝すべきことなのだろう。シーオフェリアを言いくるめる為の技量は彼にはなかったのだ。お疲れ様。
「そ、そんな……」
ハロルダ王子は膝から崩れるようにしてへたり込む。
私も王国に戻るのならハロルダ王子と再会することもあるだろうと覚悟していたので、シーオフェリアを責めることは出来ないのかもしれない。そう考えると彼女は上手く上手く世渡りしていると思う。
しかし、それでは到底納得が出来ない。
彼女に対して私なりの疑問をぶつけてみることにした。⠀
「はぁ……それで? 彼がぞろぞろ引き連れてきた馬車に乗って王国に向かうってこと?」
シーオフェリアに話を振ると、背筋を仰け反らせて、胸を誇張しながら、頷いた。やっぱり偉そうね。
至って普通の質問なのだが、やはりそこが大切だ。早く話せと目で要求すると、勿体ぶった顔をして首を傾けていたが、ジト目で見つめたらあっさりと話し始めた。
「サーちゃんの言う通り、彼の連れてきた馬車で王国に向かうわよ。足を連れてきて良かったわぁ、転移魔法とか使うと、魔力切れで数ヵ月寝込んじゃうからさ」
あくまで魔力の節約らしい。
「さてさてぇ、そんじゃ皆揃ったことだし、行きましょうか?」
呑気なシーオフェリアの声とは裏腹に、その場にいた総員が困惑した気持ちに包まれていた。
この状況、全てがシーオフェリアの手の内で動いていると皆薄々感じているからだ。
「なぁ、本当に大丈夫か?」
「サシャお姉ちゃん、あの人なんか怖いよ」
なので、ルイスとミーナちゃんのコメントにも頷ける。
一応正義の女神なのだが、正義というより詐欺師とか似合いそう。そんなこと口が裂けても言わないけど……。
「心配しないでも大丈夫よ。悪い人ではないから……ええ、多分」
「おい、最後の方に自信が感じられないぞ」
「いや、まぁ……うん」
ルイスからの突っ込みに否定出来ない部分が多かったため、彼の指摘を甘んじて受け入れた。
三人でそんなやり取りをしているところに、後方から気配を感じる。
振り返るとハロルダ王子が目線を下げて立っていた。目のしたの隈が彼の心労を感じさせ、申し訳なさそうな表情は弱々しい。
「あ、えっと……サシャ・フリーク」
「今はただのサシャよ」
「そ、そうか」
シーオフェリアとの会話では程よく声量が出ていたのに……声はか細くて今にも消えてしまいそうだ。
「何かしら?」
「すまない、あの時は……濡れ衣で婚約破棄などと……俺の目は曇っていた」
ハロルダ王子は、深々と頭を下げながら謝罪の言葉を口にした。
なんと見事な手の平返しか……先程からずっと姿勢が低くて正直煩わしい。
それにハロルダ王子がこんなにも頭を下げているなんて、私が彼の弱味を握っているかのように他者から見られかねない。
「ハロルダ王子、頭をあげてください。こんなことをしに来たのではないのでしょう? 私もお手伝い致しますから、国を護ることを考えましょう」
「いや、でも……」
彼の言葉は続くことはなく、そのまま途切れてしまった。
「「……」」
そしてこの沈黙である。そろそろこの流れ飽きてきたんだけど、ねぇ?
「ハロルダ王子、この問題が終わるまで、貴方を許すことにします。なので、どうか首をあげて下さい」
「っあ、ありがとう……ます」
一々ぺこぺこ頭を下げられても面倒なので、限りなく優しい感じにそう告げて彼を宥めたのだが……そう言ったら遂には涙を目下に浮かばせて、「ありがとうございます、ありがとうございます」と連呼している。
周りからは白い目で見られるし、これどんな辱めかしらとしあんしてしまう。
これは本格的に神格化されそうで恐ろしいわね。なに、私がメシアよ! なんてこと言わされるのかしら? 嫌だわ……。
私の考えが分かっているシーオフェリアは爆笑。王国から遥々やってきた護衛の人達はハロルダ王子のその爽やかな顔を見て、次第に良かったといった表情に変わっていく。いや、ちょっと!? 別にそこまで感動のシーンじゃないわよ?
「うふふっ……まあ、和解したとこで、改めて出発しましょ!」
「……そ、そうね」
何処が和解したのかイマイチ理解出来ていないが、取り敢えず王国に向かうということには同意した。
これ以上、ハロルダ王子と一緒にいたら気不味くて死ぬ。さっさと騎士達の乗ってそうな平凡な馬車の方に向かいましょうか。
と思ったらシーオフェリアに肩を強めに掴まれた。
そして、一言。
「あれ? どこ行くの? サーちゃん達はこっちの馬車だってよ」
どうやら私が乗る馬車は既に決められているらしい。
「……分かったわよ」
シーオフェリアの指差す方向には、二番目くらいに豪華な装飾の馬車。
渋々私は前から三番目の馬車へと乗り込むのだった。
幸いだったのは、王子と同じ馬車じゃなかったことだろう。もし同じなら会話がないかもしれない。
私達が乗り込んで、数分後に馬車はカラカラと動き出した。
応援してくれる優しい読者様方には感謝で一杯です。
面白い、続きが気になるって思って頂けたら、ブクマ、評価、感想などの応援をよろしくお願いします。




