48 弟の気苦労 第二王子視点
新たに第二王子を登場させました。
こらからのお話にも関わってくる主要人物でもあります!
ハロルダ第一王子が馬車で共和国に向かった頃、スケット王国では、苦労人の弟が忙しなく動いていた。
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僕はスケット王国の第二王子、レオン・スケット。
王家の後継者には第一王子、ハロルダ兄さんの他に、第三王子のマライアスが居る。
残念ながら、弟のマライアスに関しては、自由人の為、他国を転々と放浪しているそう……そういう事情から、現在次期国王の座に就くのは、ハロルダ兄さんか僕ということになっている。
と、こんな感じの家系なのだが、次期国王に誰がなるのか? なんて事をしている状況ではなくなってしまった。
突如として、国には様々なよくない出来事が立て続けに発生したのだ。
僕としては偶然だと思っているのだけど、なんでもサシャ・フリーク嬢が実は女神サレーシャで、彼女と婚約破棄をしたばかりに彼女がこの国にかけていた加護を無くしてしまったとハロルダ兄さんが冷や汗を浮かべながら話してきた。
流石に考えすぎでは? とハロルダ兄さんに言ったのだが、兄さんは頑なにそれを否定し、サシャ・フリーク嬢を女神だと言い張っている。
ハロルダ兄さんがそこまで断言できる理由が僕には分からない。
サシャ・フリーク嬢はとっても華麗で聡明叡智と言えるお方、兄が婚約者で無かったら……。でも、彼女は既にこの国からは姿を消しているらしい。
暫くは国の周辺を探し回っていたハロルダ兄さん。
彼女を隣国のコレット共和国にて発見したという知らせが来たときには、大層大喜びしていた。
まあ、兄さんがこんな風な動きをしている中で、僕は何をしていたかといえば、あちこちで勃発している暴動の鎮圧、火災による被害拡大の阻止、地震によって倒壊した建物を修復したり、片付けたりする作業。
これらの指揮を執っていた。
幸いにも、この国家はかなりの戦力を保有している。それを災害支援に回すことだって出来る。暴動は固い鎧に身を固めた重装備の騎士に頼んで、なんとか拡大しないように抑制して、火災の方は、水系統の魔法、氷系統の魔法、酸素を消滅させる魔法を持っている宮廷魔術師や冒険者の助けを受けて、消火することに成功した。
壊れた建物は、二次災害の恐れもあったため、付近に一般市民が近付かないように閉鎖し、それから瓦礫の撤去、生き埋めになった人の捜索などを行い、王国の復旧に努めた。
そう、兄さんがサシャ・フリーク嬢を血眼になって探している時、僕は裏で面倒な問題の対処をしていたのだ。
王国は広い。
だから、指示を出すだけでもかなり大変なのだ。
頼れる使用人兼俺の親しき友人である、グリシアにもその指揮系統の一角を担って貰った。
兄さんがベテラン騎士をかき集めて、コレット共和国に出発した現在でも、問題は次々に舞い込んでくる。
「王子ぃー、此処から北に二十キロくらいのところで火災発生だって、どうします?」
「はぁ……グリシアだからもっと危機感を持ってくれよ」
グリシアは、普段通りに軽い感じに報告をしてきた。
こんなんだが、仕事をきちんとこなしていて、危機感を持てとは言っているが、とても感謝している。
俺の指摘に対して、少しきょとんとした表情を浮かべ、やがて俺の肩をポンポンと叩いて緊張を解すように砕けた口調で話し始めた。
「いいでしょ、そんなに肩の力張ってたらいつかは疲れすぎて駄目になるよ。だいたい、こんな仕事を王子がやることないんじゃない? これはあのアホな第一王子が管理するはずだろ?」
皮肉混じりのその言葉には、きっと彼が兄さんを嫌っている部分が大きく影響しているだろう。
特に、僕がサシャ・フリーク嬢のことが気になっていたということを知っていた彼は、兄さんが婚約破棄したって聞いたときには、もう本当に怖い顔していた。彼の紅い目が更に真っ赤に染まったように見えたけど、気のせいであってほしい。
僕でも思わず引いちゃいそうなくらいに怖かった……。
ああ、思い出すだけでまた震えてくるよ……。
「えっと、グリシア? なんか兄さんに対して風当たりがきつくない?」
「え? そう?」
「いや、自覚なし?」
聞き返すと、紅い髪をガシガシ掻きながら、首を縦に揺らした。
「無意識だったわ、あはは」
いや、自覚がないなんて、重症だよそれ!
でも僕のことを大切に思ってくれているのは、よく分かるし、そこは嬉しい……。
本当に、ありがたい……若干緩んだ頬を再び固いものにして、話を現在の状況に切り替える。
「まあ、この話は一旦置いといて……火災の規模はどれくらい?」
僕の事務的な声色に、表情は変わらないものの、グリシアの目は真剣なものとなった。
「規模的にはそれほどでもない。発生源から周囲五十メートルくらい。でもね、近くに火薬を扱ってある店があったから、そこに燃え移ったら被害が大きくなるかな」
周辺の情報まで鮮明に把握してくれているのはありがたい。グリシアが指揮系統の一角を手伝ってくれて本当に助かった。
「よし、なら確か、水魔法が使える魔術師の方が居たから、直ぐに向かわせよう。三人くらいで足りる?」
「あー、足りる足りる。じゃ、その辺の人員は勝手に持ってくから……あと、あんまり無理しちゃ駄目だよ」
グリシアは手をヒラヒラ振りながら、そのまま背を向けて部屋から出ていった。
彼が部屋から出ていくのを見送った後、再び溜まりに溜まった仕事をこなしていく。
グリシアは外で色々と飛び回って、情報を集め、僕の命令を周りに伝える。
僕は僕で、それらの問題に対処する人員の選別や配備する人数の計算、王国の情報を纏めながら対策を考える。
まだまだ仕事が山積みだな。
今日もまた、レオンの下には、仕事は止めどなく舞い込んでくる。彼は、それを黙々とこなしていく。
いつも見てくれてありがとうございます。
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