41 お悩み相談は大切1
誤字報告を寄せてくれた方々、本当にありがとうございます!
空いた短い時間で書いているので、どうしても間違いが発生してしまうので、とても助かっています。
それから、日間ランキング入り出来ました。
ありがとうございます!
「はぁ……」
ため息をついたのは、私。
普段であれば、夕食の時間と言うのはウキウキしながら迎えていたのだが、如何せん対面に突っ立ている男の様子を見ていれば、そのような気分には到底なれない。
「サシャお姉ちゃん、ルイスお兄ちゃんどうしたの?」
「分からないわ、おじさんたちから話を聞いたあとだから、それが原因だとは、分かるんだけど……あの話の何処に一週間も落ち込む要素があるのかしら?」
折角宿の厨房から食材を借りてきて、腕によりをかけて美味しい料理を作ったのに。これじゃ、私が浮かばれないわ。
王国関係でかなり落ち込んでいるが、そもそも、ルイスは王国に住んで無いじゃない……。
いや、家族が居るのよね。
「「「…………」」」
さて、この空気は如何なものだろうか?
私の隣にぴったりとくっついて耳打ちしてくるミーナちゃんは、とても可愛いのに、なんでこんなに重々しいのよ。
しかし、そんな想いとは裏腹にして、沈黙は継続される。
何事も続けることが大切だとは良く言うものだが、それは今回に関しては当てはまらないだろう。
「えっと……」
しきりに場の空気を読んだミーナちゃんは声を出そうとするが、思うようにいっていないようだ。
こら、ルイス、空気を読みなさいよ。空気を!
「はぁ……ミーナちゃん、取り敢えず、食べましょうか。折角の御食事が冷めちゃうわ」
「えっと、うん」
配膳されたパンと暖かなスープを前にして、私はミーナちゃんに提案した。
「……ルイス、貴方もよ!」
「……えっ!? 何?」
この男は……。
「聴いてなかったの? さっさと食事をするわよ、空気も読めずに耳まで駄目になるなんて、将来嫁が出来ないわよ」
すると、先程までの沈黙は何だったのだろうかというくらいにあたふたし始める。何がしたいのよ。
「おい、お前……何故そこで俺の将来の話になる」
「言葉の綾よ。とにかくボケッとしてないで、ほら、そこに座る」
「あ、ああ……」
こうして、三人とも、各々の席に座った。
「それで? ルイス、貴方は何を悩んでいるのかしら?」
「ルイスお兄ちゃん困ってるの?」
そこからの質問攻めである。
うん、こういうことには洗いざらい吐いてもらうのが一番楽なのよね。うん、単純なことよね。
「えー、いや、大したことじゃ……」
「ふーん、大したことでなくて、一週間も可笑しな調子で居られては、私達も困るのだけど……ミーナちゃんも心配しているのよ」
私の言葉に、ぐうの音も出ないようだ。
「……ごめん」
「別に謝って欲しいとかじゃないわよ……」
そうして、彼はポツリと話した。
「実は、王国に、俺の家族が向かったんだよ」
「前に聞いたわ」
彼の話は以前も聞いたことがある。
「要するに、その家族が心配ってこと?」
「まあ、うん。端的に言えばそうなるな」
「えっと、ルイスお兄ちゃんは、お姉ちゃんと最初から一緒じゃなかったの?」
ミーナちゃんは知らないので、疑問に思って私達に訊ねてきた。
「うん、俺とサシャは途中からだよ。俺は正確には王国、国内の出身ではないからね」
「ええ、彼が森で私のことを木の陰からこっそり覗いていたのが最初の出会いかしらね」
「おい! それだと色々と誤解を招くから止めろ!」
いや、事実だし……。
「まあ、そんな感じよ。知り合ってまだ全然経ってないし」
「ああ、そうだな」
「そうなんだ」
ふう……これでこの話については完結したのよね。
なら、会話の路線を戻そうかな。
「さて、それは置いておいて、ルイス、その家族の更に詳しい話をミーナちゃんに話しなさい?」
「唐突だな、おい。まあ、良いけども……」
渋々という感じにルイスも声色を真剣なものへと変貌させる。
そこで私は漸く思い出した。
あ、しまった、この話かなり重そうなやつだった……。
思い出したが、遅かった。
あの森を抜ける際に話された内容より、更に詳しい事情も聞かされた。
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ルイスはとある村で農業をしながら、暮らしていただとか、急に村に怪しい奴等が押し掛けてきて、それが不気味だったから家から退散しただとか、とある事情から王国ではなくて、こっちの方に来ようとしていたことだとか、それから妹のヤミは特別可愛すぎるだとか……いや、最後のは聞かなくても良いし、教えなくても良いようなことなんですが……ルイス……。
「はあ、何て言うか……ルイスって、シスコン?」
「いやいやいや、話の流れをぶった切ってシスコン呼ばわりは可笑しいだろうが! なんで最後の部分だけを抜粋すんだよ! 最初の方にも触れた感想にしろよ!」
「ルイスお兄ちゃんは、ヤミちゃんが大好きなんですね!」
「ミーナちゃんも乗らなくて良いから、サシャの悪ふざけが移ってるから! ああーー、ミーナちゃんが毒される!!」
いや、その発言は三周回って失礼だから。
最初の方に関しては、確かに同情の念とか色々と思うところはあったけど、最後の最後にぶち壊したのは、ルイスよね? 私がそこを攻めるのは悪くないわよね? 何で妹の話をした? のろけなんて聞きたく無いわ。
「まあ、この際私とミーナちゃんのルイスへの接し方は置いといて」
「いや、置くなよ。再度点検して見直して?」
「少しは気持ちが晴れたかしら?」
「──!?」
そう言うとルイスは思いもしなかったのだろう。即座に言葉に詰まっていた。
「……ああ、ありがと」
照れ臭そうに礼を言ってくるルイス。
それは私に対してでもあり、ミーナちゃんに対してでもあった。
微笑ましいため、ミーナちゃんと顔を見合わせて苦笑をした。
「もっと頼りなさいよ。一人で抱え込むのは良くないわよ」
「ルイスお兄ちゃん、困ったら相談だよ?」
彼は一人ではない。
私達と一緒に居るのだから、相談してほしい、頼ってほしい。
誰かに話すだけでも、心が楽になることがあるから。
「他にも何か無いのかしら?」
「えっと、実は……ある、かな?」




