40 ルイスの想い3 ルイス視点
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身に余る幸せです!
『父さん、この先は不味い! 王国に何か嫌なものを感じる……』
『……? それは本当なんだな』
『うん』
俺があの頃のことを思いだし、父にそれとなく忠告すると、少し考えたように深く唸っていた。
『ねぇ、それじゃあ──』
『ああ、ルイスの勘は馬鹿に出来ない。王国にも何かあるのだろう。現に今は可笑しなことばかりだ』
母も父のその答えに同意するのように頷く。
『じゃあ、行き先を変えたいんだけど……』
俺がそう聞くがやっぱり行き先が思い付かないらしい。
『詰んだ』という言葉。
この言葉は正しくこんなときに使うのが適切かもしれない。
村に戻るわけにもいかず、かといって、王国には不穏な空気が漂っている。そんなところにのこのこと出向いて最悪死んでしまったりするほど俺は馬鹿ではない。
『コレット共和国はどうかな? 王国の次に近いから、行くとしたら其所が良い』
しかし、この国は次に近いと言っても、かなり遠い。
しかし、父さんは少し遠慮がちな雰囲気で口を出した。
『だがなぁ、ルイス。それは母さんたちには厳しくないか?』
『……そうだよね』
それは、勿論、分かっていた。
『すまない、多分、俺達はお前の言葉に背いてでも、王国を目指す。分かるな?』
『うん、分かるよ』
一旦王国に向かって、母さんとヤミは休まなければ、体力が持たないとも理解している。
『ルイス、ごめんなさい……』
『母さん……』
『だからな、ルイス。父さんは、母さんとヤミを連れて、王国に行く。だが、最終的にはコレット共和国へ行くという考えも捨てていない』
父さんの言葉に無言で頷く。
そう、これは仕方の無いこと、だから、俺は俺に出来ることを──。
『なら、俺がコレット共和国に出向いて、馬車でもなんでも連れてくるよ! そうすれば、家族みんなで共和国に行ける』
『本当に良いのか?』
父が聞いているのは、俺が一人で出向くことになるから、それでも大丈夫なのか? ということであろう。それでも俺は、曲がりなりにも魔神ルイヴィースの生まれ変わりである。
それなりに生きていく術を持っているはず──だから、俺は不安げな目線を向ける母も、疲れて眠っている妹のヤミも、覚悟を問う父も、みんなをちゃんと救いたい。
危ない橋を渡るかもしれないが、王国に滞在が長引けば、やがては良くないことも起こる。
──答えは決まっていた。
『勿論! 俺は一人でも共和国を目指す。必ず迎えを呼ぶから、それまでは……無事で居てよ?』
俺のあまりにも堂々とした声に、多少驚いたのか、暫く父さんは止まっていたが、やがて口を開いた。
『お前がそこまで言うんだ。無事で居ると、母さんとヤミを守ることを約束する。その代わり、お前も無事に俺達の元へと戻ってこい。いいな?』
『うん!』
母さんも、父さんに続いて俺の前に立つ。
『ルイス、あんまり危ないことをしては駄目よ。……また、会いましょう』
『そうだね、母さんも元気で居てよ。それから、一緒に行けなくてごめんなさい』
『しっかりね』
『はい!』
やはり、家族というのは良いものだ。
心から信じられて、一緒に居れば、不思議と安心する。しかし、ここからは俺一人、誰も居ない一人旅。
俺はここから、コレット共和国に向かって家族と反対の道に歩みを進める。
『じゃあ、行ってくるよ』
『ああ、ルイス。頼んだぞ』
『行ってらっしゃい』
家族との別れの挨拶をして、手を振り、もう振り向かないように、全力で走った。
後ろからの暖かな視線が途切れるまで、俺はひたすらに走り続けたのだった。
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俺がこんなことを思い出しているとき、唐突に意識が現実へと戻った。
「……ルイス、貴方もよ!」
彼女の少し怒ったようなその声によって──。




