36 情報収集2
理由もなく人とは顔を赤くするものなのだろうか?
ルイスのその顔は正しく赤くなり、熱でもあるのではないかという位に。
「ねぇ、私に何? すっごく気になるのだけど」
「ああ、もう。なんでも無いから!」
聞いたところで、頑なに濁しを決め込むために、まるで取り合って貰えない。何のプライドがあるのか知らないが、そっぽを向いて表情すらも隠すようにしている。
「ルイスお兄ちゃん教えてー!」
ミーナちゃんもそのやり取りを見てからか、興味を持ったようだ。ルイスの服の裾をちょっぴり掴み上目使いでルイスに迫る。
私だったらコロッと答えているくらいに羨ましい……。
「ミーナちゃんまで……勘弁してくれ」
ええっ!! ……ああ、まさかのミーナちゃんが撃沈だなんて。
そこまで話したく無いことなのだろうか? 益々気になる。けど、これ以上は時間の無駄ね。
早々に話を切り上げようかな。
「まぁいいわ。それより、これからどうするの?」
話を元に戻すと、ルイスの顔色が幾分か良くなった気がした。
「切り替えが早くてビックリだわ。うーん、やっぱり地道に聞き込み位かな?」
ルイスの口から、そのまんまのド正論が投げられた。
「面倒ね……」
しかし、やはり原点に戻ることになったわね。
ふぅ、と諦め混じりの吐息を吐くと、それを見ていたミーナちゃんも真似をするように息を吐いた。
「うん、めんどうだぁ」
おまけに台詞まで真似てきて、なんだか娘のように思えてくる。いや、娘なんて身籠ったこと無いんだけど。女神だし。
「なんかミーナちゃんがサシャに似てきた!? いやいや、それよりも聞き込みを再開しないと──」
ミーナちゃんを微笑ましい光景を見て、私が和み、ルイスが聞き込みの再スタートをしようとした時に、ふと目の前の街の住民の会話が耳に入ってきた。
そちらに自然と視線も向いてしまう。
「いや、本当だってよ」
「まじかよ。それってやばくね」
なにやら怯えたような顔つきのその男性二人は、こそこそと囁くように話している……つもりなのだろうが、如何せん話している声が聞こえてくる。
何なのだろうか? ひょっとしたらと私はルイスに目配せする。そうすると、彼も察したように頷く。
「何かしらね?」
「ああ、何か話してるな」
ミーナちゃんもクイクイと服を引っ張ってきている。
「お姉ちゃん、行ってみる?」
うん、ミーナちゃんも物分かりが大変宜しいようだ。瞬時に私達に確認してくるようにそう聞いてきた。
ミーナちゃんにそう言われて、私の答えは決っている。
「そうね、少し聞いてみましょうか」
「それがいいな」
ミーナちゃんの声ひとつで私は動く、それで何か悪いかしら?
ルイスもそれで納得なようで、私達はその話している二人組に近付いていった。
「ああ、それで──」
「それがな、王国がよ──」
「──!」
今……なんて?
「なぁ、今王国って言わなかったか?」
「ええ、確かにね」
王国の話……恐らく私の察することと相違点は無いだろう。それがどのように私の予想に重なるのか。
「おうこく?」
聞いたことが無いからか、ミーナちゃんは小首を傾げて聞き返してくる。
「私たちの故郷かしらね」
「お姉ちゃんたちのこきょう?」
「そうだな、故郷だな。捨てたんだけど……」
複雑な顔がルイスからも窺えた。しかし、それはきっと私も同じようなものだろう。
「私達が捨てた……故郷ね。お父様は元気かしら」
王国の現状を話している二人に、私たちは、続きが気になるために、更に接近を試みた。




