35 情報収集1
冒険者ギルドを後にした私達は、一度宿に帰還し、荷物を一通り整理してから、街での情報収集に精を出している。
ルイスは、それとなく通り掛かった人に聞いて回っていて、私は女神なので、横にいるミーナちゃんと手を繋ぎながら、通り掛かる人間の考えていることを読み取ったりしている。
ルイスには、頑張って貰うしか無い。私はこの街の全員の感情や考えを読み取らないから。
……ん? なんでこの街の全員の考えを読み取らないのかだって? 決まっているじゃない。この魔法は欠陥だらけなのよ!
「それで、何か分かったのかしら?」
「いんや、共和国で政府に不満を持っている人が最近過激な行動をしだしたなぁ、とか、既存の情報しか得られなかった。サシャは?」
「そうね、先ず狙った人の考えとリンク出来なかったわ。あの屋根の上にいるネコの感情を読み取って、眠いなぁ~って、こと位しか分からなかったわ」
「いや、使えねぇ!!」
失敬な、これでも最高難易度の魔法なのよ!
女神であっても操るのは至難の技なのだ。
それを使えないとか失礼にも程がある。
「これでもかなりの難易度の魔法よ。貴方に使えるの?」
「使えないけど、役に立たないなら使えなくても構わない!」
「二人とも喧嘩は駄目!」
少し言い合いをしていると、ミーナちゃんが悲しそうな顔で仲裁に入ってくる。
本人は悲しそうな顔をしているのに、当の私とルイスはミーナちゃんのその顔を見て和んでしまい、口角が自然とつり上がる。
結果的に私達は言い合いを止めて、それを暫く眺めながら感嘆的な溜め息を大いに吐き出した。
「仲直りした?」
「ああ、したした」
「そうね、喧嘩してごめんなさいね」
そう答えると、安堵したようにミーナちゃんは笑顔になった。
まるでこの朽ち果てそうな絶望的な世界に咲く一輪の可愛らしい花。そんな言葉がよく似合う。
「ん、お姉ちゃん何かぼうってしてる?」
やばい、にやけながら空想の世界に堕ちていたようだ。
「そんなこと無いわよ。さて、ミーナちゃんのお母さんに関する情報? の収集を再開しようかしらね」
「うん!」
「あれ? 何か間違ってないけど、色々と趣旨が間違ってる?」
ええ、間違ってきているけど、特に直す必要は無さそうね……。
「ルイス、そもそも私たちがこうして情報収集に勤しんでいるのは、ミーナちゃんのためよ。この子のために私が尽くして何がおかしいの?」
「いや、その考えがアウトォォォ!!!」
天に手を仰いで膝から崩れ落ちるルイスは如何にも演技臭い素振りでそう叫ぶ。
「あうと?」
「何がよルイス……」
「いくらミーナちゃんが可愛いからって、なんでそこまで執心するんだよ。猪突猛進過ぎるわ」
確かにそうかもしれないが、それの何が悪いと言うのか?
「でも、ルイスだって、ミーナちゃんにメロメロじゃない。私はミーナちゃんの身が心配だわ……」
「いやいやいや、確かにミーナちゃんは可愛いけども、そもそも俺はお前に……」
「私に何?」
何やら早口の言い合いが突如として停止して、代わりにルイスの顔がみるみる内に赤面していく。
真っ赤になった顔は、やがて煙が出るくらいに熱を帯びてきている気がする。
うーん……彼の習性が私には理解できないわ……。




