32 初のクエスト1
冒険者になったのなら、ドラゴンでも狩に行くのだろうか?
実はそうではない。ドラゴンなんかを狩に行ったりする冒険者と言えば、レベルの高い、周りから一目置かれる位に有名で強くなければいけない。
初期の頃などは、精々素材の採集位しか受注できないのである。
「本当にこれだけですの?」
「これだけです」
「ゴブリンとかスライム退治とかはどうなの?」
「いきなり魔物は危険ですので……」
「いや、でも……」
私も引かないし、受付嬢も引かない。私達の一歩も引かないこの会話は朝から既に数十分は続いている。
「サシャ、そのくらいで妥協しようよ。受付嬢さん困ってるし」
「ルイスは甘いのね。惚れたの?」
「ちげぇよ!!」
何が言いたいのよ? 私と言い合ったら勝てるはずの無いルイスにはどうしようも無い惨状なのだろうけど。
そろそろ受付嬢にも悪いし、何よりルイスが困った顔もたっぷり拝見出来たから、そろそろ良いかしらね。
「さて、それなら採集の依頼で一番報酬の良いものでお願いしようかしら?」
「あ、ああ、それなら良いんじゃない」
私の強欲さに感服したような感じのルイス。受付嬢に目配せするようにちらりと視線を向けると、そちらもこれ以上私との会話は遠慮したいようで、
「では、こちらでお願いします」
直ぐに依頼状をこちらに手渡したのだった。
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それで現在は、ルイスと私で、共和国の付近に群生している森に来ている。
無論、長い間過ごしてきたあの森とは別の森で、もっと規模が小さいものだが、それでも十分に生態系は作れるくらいにそれなりの規模を持つ森だった。
「本当にあるの?」
「あるって言われたのだから、あるのでしょう」
「でも、何時間経ったと思ってる?」
「三時間と十六分と四十三秒よ」
「……よくそんな正確な時間が分かるな。感心するわ……。てか、分かってるなら少しは受付嬢さんが間違った情報伝えてるとか思わないのか?」
ルイスは何を言っているのだろう? 間違ったことを彼女が伝える筈が無いじゃない。
まあ、もしもそうだとしたら、ね……。
「誤報なら、お仕置きをするまでよ」
「相変わらずぶれないな、お前」
苦笑いのルイスは、どこか開き直ったように再び辺りに目を配る。
現在、私達は依頼の元で、とあるものを探している。
金のネックレス。
貴族が落としたというそのネックレスを探している。依頼人が貴族な為に、報酬も他の採集、探し物系の依頼のなかで飛び抜けて高かった。魔物退治よりも安全且つ高報酬で、お奨めとのことだったから受けてみた。
しかし、現在は森に入って様々な場所を探し回ったのだが、一向に見つかる気配が無い。
そもそも、森の薬草みたいに至るところにある物と、特定の一つを探し出すのでは、難易度も変わってきていたのだった。
「まだ、こっちの道には行ってないわよね」
「ああ」
「じゃあ次はこっちね」
指差してそちらに進もうとするが、ルイスが中々着いてこない。
「待ってよ。闇雲に探しても見つからないって」
「ならどうするのよ?」
「帰る」
「……死になさい」
本当に使えない男だ。
さてと、こっちに進むとして、何か無いかな……ん!?
「ねぇ、ルイス。あれ迷子じゃない?」
「はいはい、こんな森に迷子なんて居ないでしょ。どんな民族だよ。きっと疲れが溜まってるんだよ。もう帰ろうよ……」
「でも、あれ……」
「ああ、もう!」
ルイスもそちらに視界を向ける。
「……迷子だね」
「……ええ、迷子ね」
本日、私たちは迷子を発見した。




