30 その頃娘は宿に……
今頃、サシャはどこに居るのだろうか?
妻と二人で居るから尚更そういうことを考えてしまう。
本当なら、今頃私達のこの空間にサシャが加わっていて、いつも通りの日常を送れていた筈なのだから。
この時間にも、娘はどこかで──。
フリーク公爵は、窓の外を見つめながらじっと考え込む。最愛なる娘の現在のことを。元気でやっているのか等と思考を巡らせるが、結局のところ本当の事は分からない。
だが、それ以上に考えに浸りたいというのが、彼の心理状態であった。
当の本人は、別段そのような心配を全くしていないようだが──。
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「宿はここで良いかしら? それとも他にする?」
一軒の少し古臭い建物の前で立ち止まったのは、私とルイス。私達は、現在一晩をどのようにして過ごすのかを話し合っていた。
「いや、お金無いし、泊まれないでしょ」
「大丈夫よ、私の作る魔法を駆使すれば容易いわ」
しかし、そのような発言にルイスは、それは不味いだろという顔を見せる。
「それって、偽金だろ……、犯罪になるから止めてくれ」
しかし、私としては長年の貴族生活が仇となり、その辺のことをすっかり頭から削除していたのだった。
長年の習慣と言うのは恐ろしいもので、直ぐには変えることが出来ない。お金に対してルーズだった貴族の娘は、お金のルールに対しても疎くなる。
つまり、ルイスに指摘されるまでは、その事に気付けなかったのである。
父の心配を余所にして、私は、呑気な感じで過ごしていた。
「あら、犯罪になるの? ごめんなさいね。お金に関しては、あんまりね」
「流石は元お嬢様、常識はずれだ……」
「お金に関してだけよ」
ルイスより、物知りなのに、お金に関して少し無知なだけであの言いようは、少し癪に触るわ。
大体、ルイスの方は、へたれの剽軽者じゃない。いや、へたれでは無いか、私が特殊なだけでした。
「それで? お金は、どうするの?」
「他に手段は無いわ。作ることにする。幸いにも、私が作り出すのは偽金じゃなくて、本物と同等の物だから」
「それって、もっといけない気がするよ……」
この際だ、なりふりに構っていれば、今夜はまた野宿する羽目になる。折角街に着いたのに、野宿なんかをしてしまっては本末転倒。この街に来た意味が危うい。
私にとっては、そこが一番の問題点。今までの野宿などをしていた経験から、それは中々不便なことだらけの事だと理解していたのだ。ルイスも当然ながらそれを知っている。
「それでも、他に方法は? このままだと私達はこの寒い外で野宿する羽目になるのよ。そうなったらこの街に来た意味が……ルイスもそう思うでしょ!!」
うん、とは簡単に返さないルイスは、暫くの間の葛藤を潜り抜けて、やがて私の意見に同意した。
「はぁ、今晩だけだよ。明日からはしっかり稼いでそのお金を使うから。作ったりしちゃ駄目だから」
分かってるわよ。
……でも、よくよく考えれば、この魔法ってかなり利用価値が高いのでは? 邪な考え……まあ、胸の内に秘めておきましょう。
「分かっているわ、それくらい」
「イマイチ信用できないんだよなぁ~」
ルイスが疲れた顔を見せるが、私は宿に泊まれると万々歳なのですよ。スキップをしながらその一軒の宿に足を踏み入れて行ったのだった。
私達は、取り敢えず泊まる場所を見つけた。
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