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29 娘との約束2 フリーク公爵視点

 私は娘と交わした約束がある。


 一つ、娘を探さないこと。

 私は人探しの魔法を完全にものにしている。それは誰にも打ち明けていないことで、当然娘にもこの事は話していない。だが、娘がただの娘ではなく、女神様の生まれ変わりなら話は全然変わってくる。

 彼女はこの国の住民のことを全て熟知していて、私がその魔法を使えるという事実も把握していた。故に、私に対してそのようなことを言ったのである。


 これに、私は同意した。

 何故なら可愛い娘の言うことだから。


 二つ目に、娘はこの国から離れたら、過去に起こった不幸が再び訪れるだろう。そう言っていた。

 それは、私にとっても嫌なことであったが、仕方無いと甘んじて受け入れようとそう思った。しかし、娘はどこまでも慈悲深い。

 私達、公爵家の下には不幸が訪れないように、特別な術式を私に施してくれた。

 女神の加護、これは私の生命が尽きるまで永久に持続するそう。私が死んだとしても、次の生命に受け継ぐことも可能。私は女神様の保護下に置かれたのだ。


 そして三つ目、困ったことがあれば、相互的に助け合うこと。

 サシャが悩んだり窮地に陥った時には、その念が私の頭に直接送られてくる。

 逆に私がどうしようも無い状況で困っていれば、彼女が手を差し伸べてくれるというもの。

 これに関しては、相互的に助け合うという意味上で交わされた平等な約束だが、明らかに彼女が窮地に陥るとかは考えにくい。事実上の私への情だった。


 この三つの約束の下で、私は彼女の望み通り家から勘当するという選択をした。


 だから、私は王子からの協力要請を断ったのだ。娘の方が王子よりも優先すべき大切な存在。そもそも、王子はサシャを勘当する理由なのだから、言うことを聞く必要は無いと判断した。

 私にとって、娘は全てであった。

 それを妻もよく分かっている。だから、何も言わずに黙認した。何かあると察してくれたから。


 この国は後悔していることだろう。我が娘、サシャがこの国より去って。

 大混乱だろう。この国の女神であるサレーシャ様が実は我が娘らサシャに生まれ変っていたなんて。

 

 そして、そんな私は多分嬉しかった。

 いつも娘からここまで真剣な面持ちでお願いされることなど無かったから、初めて娘が私を父として頼ってくれた気がしたから。それに答えられたのには、とても気分が高揚した。


「貴方、私にも話して貰えますか」

「何の事だ?」


 あの日の約束を、サシャと交わした私の一番の偉業を思い出していたら、隣に王子とのやり取りを見ていた我が妻、リアナが詰め寄ってきていた。


「惚けないで下さい。そろそろ私にも話してください。あの時のことを」

 

 彼女の言わんとしていることは安易に想像が出来た。

 彼女はサシャを勘当した理由が聞きたいのだ。


「悪いな、今は話せない。約束なんだよ」

「……なら、仕方無いですね」

「すまんな」


 彼女は物分かりが良い。このような簡単な一言で納得してくれる。彼女が妻で良かった。

 そして、いつか話そう。

 サシャから許可が出たら、全部話して、再び家族でまた過ごしたいと思った。


 



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