28 娘との約束1 フリーク公爵視点
書き溜め分です。
王子がこの公爵家の門を叩いた。
勿論、そのまま無下にすることも出来ず、彼をこの自慢の屋敷内に招き入れた。
オーダーメイドで作り上げた彫刻の数々が玄関先を飾り、屋敷の部屋一つ一つがそれぞれ手を入れて作り込まれたものだ。
私は、このフリーク公爵家の主として、揺るぎない信念でかの王子と接している。
娘と私が別れる切っ掛けを作り出したこの男と──。
この国の王子であるハロルダが尋ねてきたのには、理由がちゃんとあった。サシャを探せ。
無責任なことを言っているなというのが第一印象。
既に彼女は私の娘ではない。
そういう事になっている。だが、私は元々彼女を勘当するつもりなど毛頭無かったのだが、それでもせざるを得ない状況があったのだ。
父親とは常々娘に甘いものなのだ──。
私は婚約破棄をされたという娘が帰ってきたとき、腸が煮えくり返りそうな位に頭に血が昇っていたが、それを抑圧するように娘のサシャは静かに呟いた。
「私を勘当してください」と。
そのようにする理由は無かったが、娘の張り詰めた表情を見ていると、何かあるなと思い、事情を聞いた。
すると、彼女はなんと力の女神サレーシャの生まれ変わりだと、それからこの国に居ようとは思わなくなってしまったとそう告げてきたのだ。
排他的な王子のことだ。令嬢を虐める公爵令嬢が気に入らず、排除しようとしたのだろう。そう思い、彼女の心の変化にも納得がいった。
この相談は、私個人に対して行われたもので、妻には伝えないようにとサシャが念を押してきた。
私としては、実は娘を妻より溺愛していたせいか、娘の言葉に二つ返事で首を縦に振った。
そして、娘との別れの時。
妻は何やら不服そうな面持ちだったが、私の決定が絶対であるこの話に何も言おうとはしなかった。
そうして娘は公爵家を勘当されたという形で去っていった。
そんなことになったのだが、娘は出ていく際、とても穏やかな表情だった。そうしてその際に一瞬目線が交差した。
「ありがとう、お父様」
気のせいかも知れないが、確かに脳裏にそのようなサシャの優しい声が鮮やかな音色を醸し出して聴こえてきたように感じた。
その声が聴こえたので、私はとても救われた気持ちになったのだ。
娘との秘密は、多分誰にも打ち明けないだろう。
私が彼女を何故勘当し、ここから追い出したのかを。
しかし、私はそれでもいいと思っている。
全て愛する娘が望んだことならば──。




