18 平原での戦闘4
ルイスが木に登ったことを確認する。
これで、彼の安全は格段に高い確率で保証された。
聴こえる足音はさっきとは比べ物にならないほどに、多かった。そう言えば、一頭は倒したが、他の二頭は半殺しにしたまま放置していた。
居なくなっていたから、もしかしたら仲間を連れて来たのかも?
思考を巡らすと、それらしい理由はいくらでも見つかった。
「はぁ、仕留めておけばよかったかしら?」
彼女の独り言に答える者は居ない。
彼女は自身に問うていた。そして、結論を叩き出した。
「殲滅するわ」
まだ見ぬ敵とも分からぬ存在に対して、殺気剥き出しのサシャは囁いた。
足音が近付いてくる。その数は、一、二、三……十六。
確認して、叩き出した結果は十六の足音。四足歩行、それも先程倒した獣と同じような動かし方。
間違いなく、さっきのと同じ猛獣が迫ってきていると、私は強く確信を抱いた。
途端に殺気も先程よりも一回り大きくなる。
「さて、どう殺ろうかしら?」
高まった体内の魔力は溢れるようにして、彼女の周囲を纏い、女神に相応しいような白とも黄色ともとれないような、眩いもやのようなものを醸し出す。
千里眼で私が相手の姿をはっきりと確認できる範囲にその生物は足を踏み入れていた。
それを確認すると、まるで罠に掛かった獲物を仕留めるような目で千里眼に意識を落とす。
……先程吹き飛ばした歯抜けの猛獣と、さらに取り巻きらしき猛獣。あと、一番後方にはさらに大きな王者の風格を漂わせるのが一頭。
「んっと、多勢に無勢かも……」
「いや、なら逃げろよ!!」
雰囲気がどことなく台無しになる音と共に、私の余裕な気持ちも見てとれたらしい。
わざとらしく困ったような表情で腕組しながらポロリと私が話すと、ルイスは木上からボケに突っ込むように茶茶を入れた。
ルイスにとって、彼女の様子を見た瞬間、心配はそこまで無くなり、逆にふざけた感じの様子に心底溜め息をつきたい心境だった。
「言っておくが、そういうの要らないから。多分、負けないの知ってるから」
ジト目で見てくるルイスを軽くあしらいながら、そろそろかなと振り向いたら……。
──既にこちらを睨む無数の獣達。
少し反応が……遅れて──。
しかし、運が良いことに襲われなかった。
「貴方のせいで気が付かなかったじゃない! 襲われてたら責任取れるのかしら?」
「いや、襲われたら責任もくそも無いだろうが! そもそもわざとらしくフリを振ってきたのはサシャの方じゃないか!」
しかし、言い合っている間にも、襲われるかもしれない。
襲われないのは些か不思議だったが、気を取り直す。
言い合いを続けているが、私は前方への警戒も怠らない。
だが、相手方に飛び付いて来るものは居ない。
間合いを確かめるように、少しずつ距離を詰めたり離したり、猛獣は一番大きい強そうな猛獣を筆頭にし、囲うようにこちらを窺っていた。
同時に、すぐに仕掛けてこないのを見ると、知能が高いことがよく分かった。
「ルイス、少し喋らないで。想像以上に手強いかも……」
「ガルルルッ……」
息を飲むような緊迫したその声色に、ルイスも自然と口を閉じる。
両者は期を窺いながらも睨み合いを継続した。
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