17 平原での戦闘3
吹き飛ばされた肉片は辺りに散らばった。
文字通り、私のアイススピアーによって貫かれた犬の胴体からは、地面一体を染めるくらいの鮮血が、溢れだし、猛獣の四肢は粉々に飛び散った。
先程の二頭に放ったアイススピアーとは格段に違う、物凄い魔法を放ったことで、猛獣の生命はすぐに絶えた。
真っ青な毛皮が一瞬にして、赤に染まり、服には無数の返り血が染み付いていた。
一言で私は恐ろしい人そのものだろうか?
「終わったわよ……何よその表情?」
何やら納得のいかないといった目を向けてくるルイスに対して、不満は何かと遠回しに尋ねた。
「いや! 俺の戦った意味!」
「知らないわよそんなの。貴方がさっさと倒していれば、私が倒すことなんて無かったのよ。
大体、助けを求めておいて、自分の手柄がなんだとか言っている時点で既に得点は三十点、落第点よ」
ルイス、本当に格好悪すぎでしょ……。
顔についた血を懐から出した可愛らしい小さなタオルで拭う。
しかし、服にまで染み付いた血はそれでは拭き取れず、暫し思案をしていた。
やがて、閃いたように顔を明るくし、魔法で服の洗浄を行った。ルイスは見慣れたようで特に突っ込むことも無かった。
「それで、今日の夕食は先程倒したあの猛獣よ。最近はお肉なんて食べてなかったから丁度いいわよね」
「食への飽くなき、欲望が駄々漏れだけど、尊敬するわその執念」
ふふんっ、と得意気な表情をして、小刀を作り出し、先程仕留めた獲物を確認するために死骸をじっと覗き込む。
「ん~、この肉……なんだか固そうね」
「おまけに我儘だなんて、いい性格してるわ、お前」
「でも、しょうがないから食べましょうか」
「あくまでお前が中心の世界なのな……」
ナイフの刃を肉に差し込むと、食い込んだ場所から抵抗を感じるような切れ方をした。
固そうだ。それは多分ルイスも確認できたのだった。
「確かに、その肉固そうだな。それで、火はどうする?」
「私を誰だと思っているのかしら? 魔法で火を焚くわ」
私が魔法で火を起し、ルイスが肉を捌く、役割分担によって、夕食は完成した。完成したものは、木の枝に肉を刺して焼いたもの。塩も胡椒も無いこの環境下では、味気ないただの食べ物だった。
「不味い~、これは肉なのか? 俺こんなに味の無い肉初めて食べたわ」
顔を青くしながらルイスは、舌を出して不味いアピールをする。
そのリアクションへの反応は皆無。いや、確かに不味いのだが、想像以上だったから出来ない。
私もあからさまに不味いと表すことは無かったが、食事中は無言で固い肉をひたすら噛み切る。
反応は無いのだと理解したルイスは、固い肉に歯をめり込ませて、咳き込んだ。
この日の二人の夕食は、無言のままに、ゴムを噛みきろうとしているような音が響くのだった。
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「……さて、美味しく食事をしたとこ「いや、不味かっただろ?」
「美味しく食事をしたところで、報告があります」
ルイスの意見を無視して、言い直す。些か呆れ気味のルイスは頭に手をやった。
「報告とは?」
「ええ、さっきっから、妙に足音が聴こえてくるの」
辺りは暗くなり、肉を焼いていた炎が一段と目立つなかで、他者の存在を確認するすべとして、音がもっとも適当なものだった。
他者とは、友好的な存在とは限らない。
私は態態ルイスに対して再び危険が訪れるかも知れないとの警告をしていたのだ。
「それってさっきの奴か?」
多分と首を縦に振ると、鈍い顔を見せるルイスは不確定な情報だったからだろう。
音だけで判断するなど至難の技。彼女にはまだそれだけの技量は無かった。
「取り敢えず、貴方は木に登って、そこで大人しくしていなさい。さっきは数が少なかったから良かったけども、これ以上数が多かったら貴方をフォローしながら戦える自信が私には無いわ。
死にたくなかったら。大人しくしていて頂戴」
「……分かった。そうする」
彼はすぐさま木に登り、言い付けを守り、上から私のことを見守っていた。
無事に終わりますように、ただその願いを込めて──。
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