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16 平原での戦闘2

「ルイス!! そっちに行ったわ、気を付けて!」


 三頭の猛獣は迷うことなくルイスへと矛先を向けていた。

 弱々しい木の棒を上段の構えで据えるルイス。しかし、猛獣は横並び、単横陣でルイスに向かう。

 私は庇うように前に出ようとするが、ルイスがそれを制止しして、そのまま前方へと足を踏み込む。


「来いよ、この駄犬がぁ!!」


 ルイスは威勢良く、そのように高らかと宣言する。


「グァッ!!」


 鋭い牙をキラリと光らせるその獣は真っ青な毛皮に覆われた犬のような風貌の猛獣だった。


「ガァゥッ!!」

「ふっ」


「カッ──!?」


 噛みつこうとして飛び掛かってきたその獰猛な捕食者に対して、体勢を低くしたルイスはするりと横に避ける。

 私はほんの少しだけ、ルイスのその足取りに見とれていたが、その後ろから迫ってくる二頭の頭に向かって手を掲げる。


「貴方達の相手はこっちよ。アイススピアー!!」


 ヒュン、ヒュン!


「──!」


 風を斬るような鋭い音が、短く聞こえた。微かな光源に反応してキラリと輝く蒼の刃は真っ直ぐと二頭の頭目掛けて放たれた。

 するりと避けるその猛獣は、それなりの思考があったようだ。致命傷を免れて、刃は彼らの肉を僅かに抉り採って平原の彼方へと突き進み、そのまま見えなくなった。


 それでも十分な牽制になったようだ。一頭は相変わらずルイスと対峙しているけど、残りの二頭は狙いをこちらにシフトした。


「ちょっぴり遊んであげるわ。わんちゃん達」

「クルルルルッ……」


 言葉の意味を理解したかのように、言い終わると二頭が彼女目掛けて突っ込んできた。

 迷いの無い、ただ獲物を仕留めようとする野性動物の本能そのものだ。


「グァッ!!」


 再び詠唱を唱えようとするが、その隙も与えまいと、詠唱する間もなく、尖った牙を見せてきた。


「はっ!」


「キャウン!!」

「ギャン!!」


 すかさず魔法を断念したサシャは軽く腰を捻り回し蹴りで二頭同時に一蹴した。

 蹴られた後には、五、六本の折れた牙が無造作に地面に散らばる。


「痛かったかしら? この辺りで帰ってくれたらこちらも嬉しいのだけれど」


「ガァァァアッ!!!」


 彼女の言葉を無視するように、再び無謀な突撃を強行してくる。

 私は蹴りではなく、勢いのついた唸る拳で、重々しいボディーブローを二頭の腹に決める。

 声を出すことも叶わず、二頭は体液をぶちまけながら数メートル後方に吹き飛ばされた。


「無駄よ。貴方達では私には勝てないから」


 既にその猛獣の意識を刈り取った彼女は聴こえていないと分かっていながらも、そう口にした。

 動かないそれらを尻目に、興味を無くしたように目を離す。そうして、今度はルイスの方へと目を向ける。

 自身の体に対して数倍はあるであろう相手に、ルイスは善戦を続けていた。しかし、それでも押され気味なのは一目瞭然。ジリジリと浅い傷を付けられて、疲弊しているのが目まぐるしく変わる戦況から見てとれた。


「大丈夫ー?」

「うぐっ、じ、実は結構キツイ……」


 絞り出した声に、私は返事をする代わりにそちらに向けて地面を強く蹴った。

 こちらに気が付いたのか、残った猛獣はルイスへの攻撃の手を止め、こちらの足を目掛けて向かって来た。

 その動きを読み、サシャは攻撃をすり抜けると、ルイスの方へと駆けていった。


「凄くボロボロだけれど、やっぱり指を咥えて見ていた方が良かったんじゃないかしら?」


 ルイスは首を横にスライドさせた。


「いやいや、男には殺らねばいけない時があるのですよ」

「その殺るは別の意味が違うと思うのだけれど……はぁ、少し休んでいて。すぐ終わるから」


 呑気に会話をしている二人の後ろには、先程、攻撃を避けられた猛獣が凄い剣幕で戻ってきていた。

 落ち着いた振る舞いのままに、魔法を放つ構えをとる。右足を少し後ろに擦り下げ、左手を迷うことなく突き出した。


「ウォンッッ!!」


 聴こえてくる音は呼吸の音と、猛獣の駆けてくる振動のみ。

 サシャの吐き出す吐息と共に、猛獣は彼女の頭を噛み砕くが如く、軽く跳びながら恐ろしい口を大きく開けた。


「……アイススピアー」

「ギャウン!?」


 ヒュン、グシャッ!!

 

 その一言で、決着は早々に決した。




面白い、続きが気になるって思って頂けたら、ブクマ、評価、感想などの応援をよろしくお願いします。

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