12 探索2 ハロルダ王子視点
探索は森の奥地までに及んだ。
普段は人も立ち入らないためか、道は獣道そのもの。とても進みたくは無いのだが、それでも進まねば彼女は見つからない。
不思議とそんな確信めいたものがあった。
やがて、狭い獣道から少し整備されたような道へと出た。
大きな亀裂の出来た岩が一つ、その上には微かに残る魔法の痕跡が残されていた。
「これは、彼女の魔法だ」
自然と、そう確信が持てた。
光魔法の『ライト』それは彼女が過去に一度だけ見せた光魔法。使用後には輝く粒子の粒がその場に留まる。
その光景は正しく過去に見たそれと重なるものだった。
「王子、それは本当ですか!?」
「ああ、間違いなくそうだ。彼女は少し前までここに居たことになる。成果が出たな!」
そう話すと、騎士達の大半が安堵したような表情を見せ、終いには涙するような者も現れた。
魔法の痕跡から、彼女がこの魔法を使用していたのは、二日前だということが判明。
まだそう遠くには行っていないということが結論に至った。
そうと分かれば、自ずと気持ちも楽になる。
つまり、気を緩めたのだ。別に何も解決したのでも無いのに……。
しかし、あの時の絶望的な手掛かりも何も無い状況からは一変した。
引き続き捜索を続けようとは思っていたが、
「良かったですね! 王子!」
「見つかって良かったです! これで国も──」
「疲れたぁ、でもここまで来た甲斐があったな!」
騎士達は明るい声で歓喜も上げてはいたが、声色にかなりの疲労が含まれているのが見てとれた。
「そうだな、今日はもう休むとしよう。成果も出た。ゆっくり休んでくれ」
「「「はい! ありがたきお言葉です!!」」」
感謝の言葉と共に、肩の荷が降りたかのように、騎士達はへたりと座り込んだり、大の字で倒れ込んだりしていた。
俺の緊張の糸も、プッツリと切れた。
日も落ちかけ、これ以上の捜索は危険だと判断し、彼女の存在が確認出来たその場所で野宿をすることになった。
騎士達の面々は、簡易用のテントを組み立てたり、枯れた枝や葉を集めて、火を起こし始めた。
食糧、水は都から幾分か持ってきていた為、調達などをすることは無かった。
「王子、こちらにテントを張りましたのでお休みください」
手をテントの方へと向けながら、満面の笑みでそう伝えてきたのは、若い騎士だった。
「なぁ、今日はすまなかった。いきなりお前だけにあんなことを問い詰めて」
「……何を言っているんですか。王子は正しいことを言っていました。間違っていたのは私達の方ですよ」
「そういうものか?」
「そういうものです。王子は自分のことを信じて進めば良いのですよ」
答えると若い騎士は「それでは」と、それだけを伝えてから、他の野営準備をするために歩いて離れていった。
彼の言葉に少しだけ嬉しくなる。
これまでの俺のしてきたことは正しかったのか?彼女が居なくなった時からその疑問が渦巻き、自問自答を繰り返して、結論は出ないまま。
私は全て誤ったのではないのかと、誰の為にもならないのだと思っていた。
だが、彼の言葉は俺のことを肯定し、疑問の答えを与えてくれた気がした。
だから彼には今──感謝で一杯なのかもしれない。
しかし、女神の加護が消滅した今。彼らもまた、無防備に呪いに晒されている状態。それを念頭に置いていなかったのが、仇となる。
そして翌朝、昨日の若い騎士やその他大勢の騎士が鋭い爪のようなもので顔や腹などを無惨に切り刻まれて亡くなっていた……。
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