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024 運搬

「この荷物はいつもどこに運んでるの?」

「いつもはメリュジーヌ様の屋敷にある食糧庫に全て運び込んでいるのですが」

「あ、そっか。私が別館に移ったからそっちにも運び込まないといけなくなったのね」

「はい。ですからどう分配しようかと思いまして」

「半々でいいんじゃないの?」

「それはそうなのですがメリュジーヌ様は基本的に1日1食しか口にされませんので」

「そうなの?」

「一応3食用意するのですが、かつて絶食状態で過ごしておられた名残なのか余り食事が喉を通らないらしいのです。それでもなるべく人間的な食事を摂るようにはしたいと仰られましたので日に3度定期的に用意させていただいております」

「そう、それなら食糧は全て姉様の屋敷に運び込みましょうか」

「よろしいのですか?」

「えぇ、今後食事は姉様の屋敷の食堂で摂ることにするわ」

「……わかりました。では、そのように」

「うん」


 荷物の分配が定まったので話を切り上げてコンテナ内の貨物を物色する。中身がみっちりと詰まってそうな木箱が少なくとも60箱くらいあり、1週間分の食糧と日用品類だとしてもふたり分にしては多過ぎる気がした。


「これって全部食糧ってわけじゃないよね?」

「メリュジーヌ様が実験で使われる材料などが大半ですね」


 内容物が気になるところではあるけど、ここでの詮索は避ける。


「見分けられる?」

「上蓋に焼印がありますので、それで判別出来ますよ」


 オリブルに焼印の種類をレクチャーされ、私は食糧と日用品を運ぶことを申し出る。


「では、私はメリュジーヌ様の元に実験材料等を運んで参りますねと言いたいところですが、プラティナさまをひとりにすると無茶をしかねませんからね」

「姉様も荷物を待ってるんじゃないかな」

「メリュジーヌ様は現在就寝しておられますので大丈夫ですよ。おやすみ中のところに荷物を運び込んで睡眠の邪魔になってしまいかねませんからいつも最後に運ばせてもらってますので」

「オリブルの私に対する信用完全になくなっちゃってるね」

「当然ですよ」

「うん、まぁ、返す言葉もないんだけどね。じゃ、とりあえず荷分けしよっか。ちょっと試したいことがあるんだよね」

「魔術の実習をなさるということでしたね」


 それから淡々と焼印を見分けながら荷を3つに分類する。木箱はひとつ15kg程あり、かなりの重労働だった。魔術でどうにか出来ないものかと考えもしたけれど私が思い付くのは一度に複数の箱を運搬する方法だけで木箱をひとつひとつ選別するといったことは人力でやる他なかった。


「終わった。想像以上に疲れるね、これ」

「身体強化する魔術の実習をされていたのでしょうか? 見た感じですと魔術の行使による精神的な疲労というよりも肉体的な疲労をなされているようですが」

「え、まだなにもしてないよ」

「……プラティナさま。無理はなさらないようにと申したはずなのですが。魔術の実習だと言うから許可しましたのに」

「平気、平気だから。でも、そっか魔術で身体能力を補強することも出来るのね。なにかをつくる事ばかり考えてたからその手の発想には思い至らなかったよ」

「申し訳ありません。以前の授業で説明を怠った私の不手際です」

「気にしないで、呪いの影響で変貌してる私自身の身体を元の状態に変化させるってことを魔力を使ってやってたんだから気付いてない方が変だよね。てことでこの話題は終わりにして本題に移ろっか」


 湿っぽい雰囲気を払拭すべく、からりとした声を上げて魔術を行使して1m四方の絨毯を生成して地面から10㎝程度の高さに浮かせた。


「私自身が飛べないなら魔術で浮かせた物に荷物を載せて運べないかなって思ったんだけど、どうかな? 地面から離れてても魔術消失高度より低ければ消えることはないよね、たぶん。なんならロープみたいなものを垂らして一部だけ接地させるなんて方法もありかなって」

「理論上は可能でしょうけれど、魔力の消費量は通常の魔術の比ではないと思いますよ。常に魔力が霧散していっているようなものですからね。試しに箱をいくつか載せてみたらわかると思いますよ」


 オリブルは荷分けしたものから適当に箱を選び取って浮かせた絨毯の上に載せていく。その数が5つ目に達すると絨毯は消失してしまった。


「積載荷重限界は4箱までみたいですね」

「私の体重を少し上回るくらいが限界なのね」

「この状態で移動までさせるとなると更に魔力を消費することになってしまいますよ。維持するにしても常に魔力供給をしなければなりませんから絨毯から離れることもままならないでしょうし」

「いちいち荷物と一緒に往復してたんじゃ効率悪いね。一度に全部運べるならいいけど4箱が限界だとさ。箱を抱えて何度も往復するよりはマシかもしれないけど、せっかく魔術を使うのだからより効率的にしたいよね」


 話しながら使えそうな元の世界での運搬方法を順繰りに当て嵌める。今の状況下で即座に代用可能なものをひとつ見出した。

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