42.景品はチアキ?
ギルドから戻り、栗山達はこれからについて話し合う。とは言っても、王都に行かなければならないのは必須事項らしく、受け入れざる得ない状態だ。
栗山が1人で行くと言っても、カミュ達は再び拒否する。エミルの事があった矢先に王都へ行くと言う話だ。同じ事が起きないとは言い切れない。最新の注意が必要である。
主人の命令だと言っても「そんな命令は聞けません!」の一点張り。4人は詰め寄るようにして栗山に付いていくと言い張るのだった。
「なら、王都の宿屋で待つというのは駄目ですか?」
これなら妥協してやる。コレットがそういう言い方をして提案してくると、3人は頷く。それだと、ただ王都へ行きたいだけではないだろうかと思ってしまう。
しかし、どこかしらで妥協点を導き出さなければいけないのは確かだ。
「それ以上の我が儘を言わないのなら……」
「「「「言いませんっ!!」」」」
4人は声を揃えて言うと、栗山は深い溜め息を吐いて許可を出すのだった。もちろん、4人は大喜びしたのは言うまでもないだろう。
エミルの件もあるが、気分を変えるのも必要かもしれない。栗山はそう思いながらTVゲームの準備を始めるのだった。
王都に行くのは一週間後。それまで町から出ないでくれとギルドから言われた。通信手段は鳥を使った方法で、本当に原始的だと思わされる。王宮から通信鳥がギルドにやって来たのだ昨日だったらしく、現在迎えを寄こしているとの話。到着まで数日かかるので、古代竜を倒した冒険者に冒険へ出るなとの通達があったらしく、そのタイミングで栗山等がギルドへ訪れたらしい。
なので、迎えが来るまで家で異世界というか、戦闘に慣れておく必要があるのでゲームをする事にしたと言うことである。
本来であれば、VRゲームをやるのが良いのだろうが、VRはネットが繋がっていなければやることができない。そのため、ガンアクションゲームをやり、銃の耐性に慣れることにしたのだ。
「チアキさん、その薄い板はなんですか?チアキさんの部屋にあった物より大きいですよね……」
モニターを設置していると、コレットが不思議そうにモニターを指で触りながら聞いてくる。栗山の部屋では物を触るのは危ないと思っているため、ただ見ているだけであったが、リビングに設置された物に関しては別に問題ないだろうと思っているようだった。
「これは『モニター』という物だ」
それ以上の説明をしても理解ができないだろう。コレットは首を捻りながら真後ろで眺めている。その光景はホラー映画さながらの恐怖である。
ディスクをセットしてゲームを始めると、コレットは驚いた声を上げる。今まで見たことのない、科学の結晶がそこにはあるのだから。
「何ですかそれは!! 私にもできますか! やれますか! やらせて下さい!!」
耳元で叫ぶようにコレットが言い、栗山はドン引きしてコントローラーを渡す。
栗山がやろうとしたゲーム、それはサバイバルホラーである。ゾンビが出てきて銃などで倒すアレである。画面にはコントローラーのボタン説明が書かれているが、コレットに読めるはずがない。なので栗山が説明しながらコレットはゲームを始めて行く。
「わっ! 銃で攻撃するんですね……。これは本物に近い絵ですね」
必至でゾンビを相手に銃を撃っていく。だが、直ぐに弾切れになってしまいゾンビにやられてしまう。コレットは「ヌォッ! 終わってしまった……。も、もう一回!」と言って、再びゲームを始める。
栗山は横でポテチを食べながらコレットにリロードのやり方などを説明し、ダラダラと過ごす。すると、栗山の背中にカミュが抱き付き「何してるの?」と聞いてきたので説明すると、チヒとカルミを呼びに2階へ走って行き、皆がリビングに揃い賑やかな状態でゲームが進んで行く。
しかし、このサバイバルホラーをやった事がある人なら分かるが、音や敵が出てくるタイミングは人を驚かすのに特化している。栗山は実践的なゲームとして考えただけであって、このゲームを選んだ。実際にやった事があるのかと言われると、ソーシャルゲームしかやった事が無い。ましてやパズルゲームに人を驚かすという物はない。なので、やり方は説明を見れば分かるが、攻略の仕方を聞かれても分からないのである。4人は必至で攻略しながら進んで行くが、途中で必ず躓いてしまい、栗山に聞いてくる。
その度に栗山は攻略本を見ながら説明し、4人はその言葉に耳を傾け、唾を飲み込みながら進めていく。
攻略本には武器の種類や性能が書かれており、栗山は「へ~……こんな武器があるんだ……」など呟きながらページを捲る。小説やゲームなどで使われている武器などを召喚できるのか……そう言った疑問が栗山の頭の中に浮かび上がり、一人席を外して某有名RPGの剣を召喚してみると、栗山は頬を引き攣らせて笑うことしかできなかった。
再びリビングに戻ると、チヒとカミュがゲームを真似て銃を構えている。
「この方が狙いやすい?」
「どうかな……実際に撃ってみないと分からないよ……」
「ねぇ、弾を抜いて空撃ちしてみたら?」
コレットは必至でストーリーを進めているのだが、カミュとチヒは銃を構えてカルミと話す。
「弾を抜いても発射される訳じゃないから分からないよ……」
「確かに……。実際に撃ってみないと的に当たっているか分からないよね」
「う~ん……」
カルミも立ち上がり銃を構え確認してみるが、「言われてみれば……」と呟き唇を尖らせる。
だが、そんな会話を無視するかのようにコレットはひたらすらゲームを進める。ゲームに没頭しているのである。こうやって1人のゲーマーが誕生したのは言うまでもなかった……。
「なら、殺傷能力はない奴で試してみるか? 実物とは異なるけど、訓練にはなるだろう。それに接近されたときの対処法とかも考えた方が良いしな」
傍から見ていた栗山が声を掛けると、3人は顔を赤くさせ銃を背中に隠す。今さら隠しても意味はないのだが……。
「さ、殺傷能力が無い奴って……どういうのですか?」
恥ずかしそうにチヒが聞いてくる。栗山はエアーガンを3人に渡す。姿形は同じの銃を渡された3人。首を傾げながら色々な角度から銃を確認する。重さなど異なっているが本物とかなり似ており、本当に安全なのかと顔を見合わせる。
「弾が出るところを見てみろ。口が小さいだろ?それの弾はこれだ」
BB弾を見せると、3人は「これが弾か?」と口を揃えて聞いてくる。仕方が無いので3人を連れて外へ出る。そして、エアーガンで試し打ちをすると、普段であれば乾いた音が鳴り響くのだが、サプレッサーを付けているときよりも音が静かで、しかも当たった場所に穴が開いていない。3人は栗山が狙った場所を目掛け試し打ちをし、その感触を確認する。
「本当だ! これなら問題ないぞ!」
カミュが嬉しそうに言いながら何発も連射して撃ち続ける。暫く試し打ちをして、3人は実戦を踏まえた練習をする事にし、栗山にスナイパーライフルのエアーガンを強請り始める。練習だから別に良いだろうと思い、栗山はスナイパーライフルを召喚し、3人に渡す。すると、3人は一斉に散らばりサバゲーを始める。飛び交うBB弾。街の皆は何をしているのかと眺めるのだが、全く理解できるはずがない。栗山は家の中に戻り溜め息を吐きながらゲームの攻略本を読みふけるのだった。
ゲームを堪能したコレットもサバゲーに参加し、4人で打ち合いを行っていた。やはり獣人の身体能力は凄く、チヒやカルミはアッと言う間に場所を特定されてしまい、仕留められてしまう。だが、獣人同士戦いは銃撃戦で決着が付かず、接近戦での戦いとなるのだが、かなり激しい木剣の打ち合いを行った結果、コレットが勝利を得る。
「なぁ、賞品を掛けようぜ! そうしないとやる気が起きないぞ!」
「確かに真剣勝負となると、賞品が合った方が燃えるわね」
「じゃあ、何を賭ける?」
「と言っても、私達が持っている物は全てチアキさんがくれた物ばかりよ?」
う~ん……。と唸りながら4人は考えていると、栗山が玄関周りを箒で掃き始める。実は、カミュ達は一切家のことをやらない。家の掃除は全て栗山がやっているのである。食事も作れない、掃除もやらない奴隷。だが、彼女等は率先して狩りや依頼をこなし、家賃を支払う。家のことはできないが、それ以外だったら何とかなると言うことで、栗山が家のことをやり、4人は稼いでくると言う構図が出来上がっているのである。いざとなったら栗山が自分で狩りに行っても構わないが、彼女等にできる仕事を奪う訳にはいかないし、ギルドでも彼女等に依頼する人が増えており、古代竜を倒した栗山よりも4人の方が有名であった。しかも、栗山よりもレベルが高い。
後から知ったのだが、冒険者カードに記載されているレベルには魔法による恩恵がある。それは、身体能力の向上である。彼女等の身体は痩せているように見えるが、力は筋肉ムキムキの男性より力があり、既に栗山よりも力があるのだ。そして、2階までならジャンプして上ることも可能。まるで忍者である。
全く気にしていなかったレベルにその様な効果があるなんて思っていなかった栗山。幾ら古代竜を倒したと言っても、一気に数十レベルも上がるはずはなく、現実とはなんて無情で無慈悲なのだろうと思うのであった。
「なぁ、掃除を手伝うというのはどうだ?」
「掃除? まぁ……確かに負けたくはないわね」
「どのように勝敗を考えるのよ?」
「最初に負けるのは私かチヒでしょ? それじゃあ、嫌よ。勝った人が何か手に入れなきゃ意味がないわ」
「じゃあ、チアキさんに案を出して貰おう!」
「「「あんたが聞いてきなさいよ!」」」
カミュ以外にこの様な事を聞ける人がいるはずがない。3人はカミュの案で良いから聞いてこいと言うと、カミュは満面の笑みを浮かべて栗山の元へ向かう。
「ねぇ、チアキさん」
「……ん? どうした?」
カミュの顔を栗山は見た瞬間、不安を抱く栗山。絶対に良からぬ事を考えている。付き合いは短いが、今までの事を思い出す限りではこの笑顔に何か裏がある……。頭の中に警告音が響き渡るが、コイツ等の早さに栗山が逃げられない。何処までも追いかけてくるに決まっている。
「賭けの対象になってくれないか?」
「はぁ?」
「勝った奴がチアキさんを好きにできる! どうかな?」
それは貴女だけが得する話じゃないか。離れていた場所で同時翻訳するコレット達はそう思うのだった。
「拒否する!! 断固拒否する!!」
「えぇー!! だって、何かしら賭けないとやる気が出ないんだも!」
「……じゃあ、欲しいものを一つだけくれてやる。金と生き物以外だ。それなら別に良いだろ」
その言葉にニタァ……ッと笑うカミュ。その顔を見て栗山は戦慄を覚える。コイツはいったい何を想像したのだろう。聞くのが怖く、栗山は掃除を止めて家の中へ逃げていくのだった。
カミュは3人の元へ戻り報告しようとするが、既にコレットが話をしているため戦闘モードになっており、カミュは石を一つ拾って上に軽く投げる。すると、4人は一斉に動き出し、勝負を始めるのだった。




