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34.寝床を確保!

 井戸を手押し式に交換した栗山。次に向かったのは自分の家である。

 家に帰って何をするのかと思っていると、栗山はトイレが設置されている家へ入っていく。

 自分達の寝床を確保するために隣の家を綺麗に掃除するのかと思いきや、栗山は突然家を破壊し始めた。何処から出したのか分からないハンマーで壁を叩き始める。それを見て唖然とするカミュ……。


「な、何をして……」


「見て分からないのか?壊してるんだよ。このオンボロの家を」


 確かにトイレ以外で使用はされていない建物だがまさか破壊するとは考えていなかった。

 破壊する音を聞き、隣人が慌てて飛び出してくる。そりゃそうだろう……いきなり家を壊し始めているのだから。


「カミュ! ボサッとするなよ! お前も手伝うんだ」


 茫然としていたカミュに手伝えと言い、栗山はカミュに手伝わせる。ヤケクソになったカミュは、栗山と共に壊していき、2時間後には土台と廃材のみとなる。まさかこんなに疲れるとは思っていなかったカミュ。息を切らし、足を伸ばしながら地面に腰を下ろしていた。


 しかし、栗山は休むことなく作業を続けていく。「よくやるなぁ~」など思いながらカミュが見ていると、何かしらの道具で地面に突き刺すと、勢いよく地面に穴を空けていく。


「な、何をやってるの……」


 目の前で勢いよく穴が掘られていく。まるで動く箱のような音を立てながら、地面を掘っていく。そして、その変な道具を抜き、鼠色の筒を先ほど開けた穴に突き刺し、木を当てて上からハンマーで叩いていく。いったい何をやっているのだろうと眺める。

 数時間後、何か出来たらしく新しい四角い物を組み立て始めていた。よく分からないが、とても重要なことなのだろうとカミュは座りながら考えていると、再び動く箱の音が鳴り響き栗山が何かをしている。そして、ロープのような物を付けていくと、突如水が溢れ出してくる。まさかこんな短時間で水を出すなんて思ってもいなかった。栗山は自分の家に井戸を掘り出したのである。


「これで水の方は何とかなるな」


 何とかなるという話ではない。カミュは開いた口が塞がらず、ただ茫然と眺めることしか出来なかった。それから栗山は精力的に動く。時折、何か紙のような物を見ながら。ブツブツと独り言を言い、作業を進めていく。

 何か手伝わないといけないと思うのだが、何をして良いのか全く分からない。


 そんなこんなしていると、時間は「アッ!!」という間に過ぎていく。そして、4人が帰ってくると、カミュが家の前で途方に暮れた顔して座っていた。家は何かに囲まれており、それが何なのか全く分からない。ただ、触ってはいけないのだろうと言うことは分かる。そして、トイレがあった家は跡形もなく消え去っていたのだった。


「何してるの? カミュ……」

「手伝ってるんじゃないの?」

「暇そうな奴は幸せよね」

「暇人」


 4人は思い思いの台詞を言うと、カミュは4人に気が付く。おもむろに立ち上がって入り口の方に向かって指を差す。入り口は閉まっていて、4人は何が言いたいのかさっぱり分からず首を傾げる。だが、カミュは一言も喋ることはなかった。

 4人は入り口を開けてみると、中は今朝と異なり何もない。何もないのである。床も、台所だったはずの釜なども無いのである。しかし、地面から筒状の何かが出てきていたり、ホースのような物が並べてあったりしていた。それがいったい何を意味しているのかさっぱり分からなかった。地面は砂や土ではなくなっており、真っ平らになっている。1つだけ分かるというのは、出掛けるときに見た光景とは全く異なっていると言うだけ……。


「よう、帰ったようだな」


 4人が戻ってきたのに気が付いた栗山は、爽やかな笑顔で言う。それに対してエミルは急いで中に入り、栗山の胸ぐらを掴んで叫んだ。


「あ、アンタ!! いったい何を考えてるのよ!!」


 何故怒られているのかさっぱり分からない栗山。息を切らせながらエミルは胸ぐらを掴んではなさい


「ど、どうやって私達は寝るというのよ!!」


 膝から崩れるようにしゃがみ込むエミル。目には涙を浮かべ、口元はヒクヒクと引き攣らせている。


「今日は寝袋だ。まだ作業は終わってないから手伝ってくれるか?」


 再び爽やかな笑顔で栗山が言う。入り口に座っていたカミュがゆっくり立ち上がり、室内にあったハンマーを手にする。それを見たコレット達が慌ててカミュを宥めに行くのだが、「壊すのよ……ご主人様はこの壁や天井も壊せって言うの……アハハ……本当に野宿と一緒になるんだよ。明日はアンタ達も狩りなんか行っている暇はないからね……アハハ……」


 カミュの目は死んでいるように思え、コレットは恐怖する。そして、栗山が立ち上がり、カミュが言ったように天井を壊し始め、茫然とカミュと栗山の行動を見守るしかなかったのである……。


 翌朝、コレットが目を開けると、緑色の布らしき素材が目の前に合った。何故、自分はこのような場所で寝ていたのだろうと、昨晩の事を思い出す。

 そして、思い出した瞬間、泣きたい気分に襲われ、深い溜め息を吐いた。


「カミュ……あの人のどこが好きなのよ……」


 隣で眠っているカミュを見ながら呟き、寝袋と呼ばれるものから這い出る。

 主人である栗山は既に起きており、青空の下、朝食を作っていた。彼が作る食事は今まで味わった事のないものばかりで、もしかしたら、お城の厨房係をやっていたのかも知れない。コレットはそう思いながら声をかける。


「お早うございます。チアキさん」


「ん、おはよう。眠れたか?」


「え、えぇ……まぁ……」


 眠れたかと聞かれ、ぐっすり寝れましたと答えれるのはカミュだけではないだろうか。カミュは栗山のことなら何でも言うことを聞く。


「これを味見してみてくれるか?」


 コレットは小皿を受け取ると、それを口に含む。それは幾度となく栗山が作ったスープとは異なり、牛乳のような高給品が使われているスープに感じた。


「ち、チアキさん……これは……」


「ポタージュに牛乳を入れたんだよ。美味しいだろ? 味見させたなんて皆には内緒だぞ」


 笑いながら小皿を受け取り青空のもと朝食を作るその姿は、まるで職人の姿に思え、自分に出来ない事が出来る、栗山が羨ましく思う。


「わ、私にも……作れますか?」


「練習すればできるけど、先ずは文字を覚えよう。それから練習をしていくんだ」


 何故、文字から覚えなければならないのだろう。コレットは疑問に思いながらも栗山がくれた文字ドリルで、皆が起きてくるまでの間、文字の勉強を始めるのだった。


 暫くして、カミュが「いい匂いがする……」と言って起きてくる。何故、コイツは飯になると活動し始めるのだろう。

 まだ眠いのか、身体をフラフラさせながら栗山の側へやって来て、そのまま後ろから抱きつく。カミュの身体が背中に密着して膨らんだ2つの固まりが背中に感じられる。カミュは肌着のみの姿で栗山に抱きついており、コレットは目を疑ったように自身の目を擦って確認した。


「か、カミュ!! 貴女なんて格好をしているのよ!!」


 大声で叫ぶコレットに対し、カミュは「暖かい……」と幸せそうな顔して呟くのだった。

 それからコレットが背中に張り付いたカミュを引き剥がし、上着を着させると、3人がモソモソとテントの中から這い出てきて、ようやく朝食が始まる。

 目ボケ眼でご飯を食べる3人。ゆっくりと味わいながら空を見つめる。


「青空ね……」


 カルミがボソリと呟くと、「そうね……」とチヒも相槌を打つ。


「家を借りたはずなのに、なんで私達は……」


 エミルの嘆きに「それ以上言わないで」とカルミが言い、ポタージュスープを啜る。食事だけはいつも豪華で、それ以外は殆ど寂しい生活を送っている。何故、私達は普通に生活することができないのだろう……。チヒは空を見上げながら思うのだった。


「お前達は今日、どうするんだ?」


 栗山の問いかけに5人はピタッと動きを止めて、顔を見合わせる。誰も何も言わない状態で無言の時間が少しだけ流れると、カミュが懲りていない様子で「私は……残る。手伝うよ……」と、小さい声で言う。

 そして、コレットは溜め息を吐いて「私も手伝います。何時までもこのままではいけませんから……」と言うと、3人も諦めた様子で手伝うというのだった。


 人が歩き始めると、昨日まであった家が無くなっているので皆がジロジロと見てくる。4人はその視線に耐え切れず早く作業を始めてくれとお願いしてくるので、栗山が軍手を4人に配ると、カミュが軍手を着けるように言う。

 4人はカミュの指示に従い軍手を装着し、身体を動かし始める。栗山は後片付けを済ませ、家の周りを囲んであった木材の型を外し始めていく。

 出来上がったのは基礎であり、5人にはそれが何なのか理解ができていなかった。

 暫くの間、5人は見ているだけであったが、木材を並べ始めると徐々に5人は指示を受け、作業を手伝い始める。

 数時間後、土台のような物が出来上がると、5人が作っていた物が何なのか分かり始める。


「家の土台が出来ちゃったね……」


 家を作るのは屈強な身体をした大工のみで、女性が作れるものではないと5人は思っていた。

 栗山が召喚する木材は、全てカット済みである。栗山の思う通りに物が召喚されるため、面倒な作業が全て省かれているのであった。そのため時間が節約され、想像外の時間で作業が進んでいくのである。

 次々と物が出てきて言われた通りに並べていき、5人で物を持ち上げたりして何も無かった場所に家が出来上がっていく。

 簡単に言えば巨大なプラモデルハウスを作っているのと同じ事で、夕方になる頃には屋根のベニアを張る作業を行っていた。

 通る人が足を止めてその作業を唖然として見つめる。まさか、昨日は家を壊していた所に、新しい家ができているなんて思いもしない。見る人全てがどんな魔法を使ったのだと声を揃えて話していた。

 夜になると、今度は布団で眠れると5人は話していた。最初はどうなるのかと思っていたのだが、予想以上に出来あっがており、一昨日よりも住みやすい家に喜びの声を上げていた。

 時間は遅いため作業が出来ないと栗山は言っていたが、これ以上何を作業すると言うのだろうと首を傾げることしか出来ない。

 するとしたら、食事を作る竈を作るくらいではないだろうか。そんな事を話ながら栗山が使ってくれた夕食を食べ、寛いでいると、上の部屋で栗山が何か作業をしており、5人は身体を起こして様子を見に行くと、栗山は紐のような物を伸ばして天井や壁から出したりしており、それが一体何なのか全く理解することが出来ず4人は下へ降りていく。

 しかし、カミュは何か指示があるのかも知れないと思い、2階で座って待機しており、4人は健気だと奴だと思いながら栗山が食後に食べると良いと言って置いてあった物を食べ、頬を緩ませていたのだった。


 栗山は電気配線を組んでおり、本に書いてるよう忠実に作業を進めていく。こればかりは出来上がり物を召喚する事は出来ない。梁や天井裏に配線を通して配線を組んでいく。

 あの紐に何の意味があるのだろう。カミュはずっとその意味を考えながら眺めているが、答えは出ないままウツラウツラと船をこぎ始め、壁に寄り掛かり眠ってしまうのだった。


 カミュが目覚めたときは布団の上で、既に栗山は起きており朝食を作っている最中。カミュはあのまま朝まで眠り続けたのであった。

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