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33.下民街の水問題改善

 栗山が店員に確認したのは、下民街で何かをする場合の必要事項と、家を改築した場合、原状回復義務等が必要になるのか、家の高さはどれくらいまで許されるのか、下民街の給排水設備の改善を行った場合、道を弄ることになるが問題はあるのか……である。

 店員からの回答は、全て問題なし。下民街で起きた出来事は全て「無かった」事として扱われる。との事であった。どういう事かというと、下民街で何が起きても、下民街で処理してくれと言うことで、お金さえ払ってくれれば後は好きにしてくれと言うことである。

 そう言われると、物凄くありがたいことで栗山は書類にサインをして、月に銀貨1枚で2DKの広いバラックを2つ借りたのであった。


「なので、1人1日大銅貨1枚を徴収させて貰っても良いか? 今月だけ払ってくれれば別に問題ない」


 この言葉に5人はお互いの顔を見合わせて考える。今日と昨日、狩りに出掛けて稼いできたのは、1人頭大銅貨3枚。1枚渡しても2枚は残る。しかし、本当に今月だけで良いのだろうか……と。


「で、暫く俺は、家の改築など大変だから狩りにはいけない。あ、別に俺は免除とかそういう事は無いので安心してくれ。俺も毎日大銅貨1枚支払う」


 主人である栗山も支払うというのであれば……言うことを聞くしかないだろうと5人は思い、この話を了承する。

 野ウサギ1匹で銅貨10枚、鶏雉で40枚。特に、この鶏雉が沢山出てくる。その理由は簡単で、冒険者ですらこの動物に手古摺るのだ。背後から忍び寄り攻撃を仕掛けてくるのと、攻撃対象が素早く、弓で攻撃しても避けてしまう。また、魔法を使うにも同じで避けられてしまうことがあるのだ。

 なので、相手が気が付いていない状態で攻撃を仕掛けなければならないので、かなり厄介な相手と言うことになる。そのため、動物のくせに値段が高いのである。

 また、以前、エミルが仕留めた巨大猪も状態が良いと言うことで高額で買い取ってくれたので、エミルの財布は暖かいのだった。


 コレットは空になったマガジンを栗山に渡し、栗山はそれを袋に仕舞う振りして召喚解除する。そして、新しいマガジンを召喚し、5人に渡していく。


「一応、何かあった場合、丸腰だと危険だと思うので剣を渡しておく。重いかも知れないけど我慢してくれないか?」


 袋の中から剣を取り出すように召喚し、各自に配ると、カミュが「あのビリビリする奴もくれないか?」と言ってきた。

 ビリビリする奴というのは、スタンガンのことで、カミュは一度だけ食らったことがある。


「別に構わないけど、役に立つのか?」


「動物や魔物に対しては驚かすだけで役には立たないかも知れないけど、人相手だったら結構役に立つと思う。人に剣を向ける訳にはいかないから……」


 そういう事であれば仕方が無い。栗山はスタンガンを召喚して5人に渡す。そして、使用方法を説明すると、5人はバチバチさせ、自分で触るという……アホなことをやるのだった。


 部屋の中はバルーン型の投光器で部屋の中を照らしている訳ではなく、ランタンで照らしている。理由は明るすぎるからで、目が疲れてしまう。そのためランタンを使用しているのである。

 問題はトイレ事情である。どうやってトイレに行っているのかが問題である。これに関して5人に聞くしかないのだろうが、聞いたらセクハラになってしまうのではないだろうかと頭を悩ませる。

 以前、トイレに関して話をしたら、変態呼ばわりされたのを思い出し、誰に聞けば良いのかと悩んでしまう。


「兄ちゃん、どうしたんだ? また身体の調子でも悪くなったのか?」


「い、いや……別に……」


「遠慮せずに言ってくれよ、私は兄ちゃんの力になれるかも知れないぞ?」


 「じゃ、じゃあ……」と言って、トイレに関して聞いたところ、こう言う場所では共同トイレが当たり前らしい。村でも共同トイレだったらしく、している最中に扉が開かれることはざらであったそうだ。だが、その様な事が許されて良いはずが無い。ここに居る5人は嫁入り前の女なのだ。その貞操を守るのは主人の勤め……。

 しかし、現状ではトイレがないのは確かなので、隣の家の中に簡易トイレを召喚し、皆が使用できるようにすると5人にお礼を言われる。


 実のところ、5人とも気にしていたのである。だが、中々言い出せずにおり、誰かが言うのを待っていた。だが、今までこの劣悪な環境を5人は過ごしてきていたので、それが当たり前でも仕方が無いと諦めもあった。

 その日の夜は簡単な食事で済ませ、翌日に備え早めに寝る事になった。と言っても、6人とも同じ部屋で眠る事となって、栗山は一番端で寝袋に入って寝る。これはエミルが煩かったからである。5人は普通に布団を敷いて、幸せそうに眠るのだった。


 翌朝になり、4人は狩りに出かける。出かける際、水分だけでも取ったほうが良いと言うことで、栗山はペットボトルを4人に渡し出掛けていく。

 残ったのはカミュだけ。どうして行かなかったのと本人に聞くと、満面の笑みで「一緒にいたいからだ!」と、恥ずかしがることなく答える。

 こっちが恥ずかしくなる。


 4人が出掛け、残された栗山とカミュ。コレット達の足音が聞こえなくなったことが分かると、身体をすり寄せるように甘えてくる。


「ご主人様、やっと2人きりになれましたね」


 腕に絡みつき、幸せそうな声を出す。しかし、カミュは分かっていない。この後、どれだけ大変な思いをするのかを。

 「じゃあ、下民街がどういうところか調べに行くぞ」と栗山が言って立ち上がると、カミュは引き摺られるように連れて行かれる。

 カミュにとってデート気分であるが、栗山にとっては街を調査するだけである。歩いて分かることだが、路上販売をしている者が多く、商業区域で売っていないような物が扱われており、安全性とかは全く考慮されているように見えない。購入は自己責任と言ったところであろう。また、金額が吹っ掛けている金額で、商品も盗品の可能性がある。

 共同で使用すると思われる井戸は桶を下に投げ入れ、ロープを手で引き上げると言った、完全に江戸時代以前の代物。まだ、江戸時代の方が良い物を使っていたのではないだろうか。

 そして、水汲みを行っているのはほとんど子供ばかりで、生活の過酷さというものを物語っているようにみえる。


「こういうのを見るのは久し振りですね……」


 腕に絡み付いて離れないカミュが呟く。その顔は先程とは異なり真面目な表情で見つめており、少し寂しそうに見える。


「お前もやっていたのか?」


「はい……やっていました。何往復もするんですが、水の入った桶は重くて大変なんですよ。でも、水が入った桶を汲み上げるのが一番キツイです。落としたら交代して最後の列に並ばなければいけないから……」


 水道の蛇口を捻れば水が出てくる世界にいた栗山には分からない話である。


「なら、先ずはここから改善をするか。手伝ってくれるか?」


「もちろん手伝いますが……何をやるんですか?」


 「井戸を使いやすくするんだよ」

 井戸を使いやすくと言うのだが、どうやって使いやすくするのか想像ができないカミュ。確かに使いやすくなれば子供等も喜ぶだろうし、街の人にも喜ばれる。

 小一時間ほどすると、井戸の周りから人が少なくなると、栗山は井戸の側へ近寄り滑車を取り外していく。

 それを見たカミュは、驚き慌てて栗山を止めに入る。


「な、何をしているんですか! こ、こんな事したら水が汲めなくなっちゃいますよ!」


「何を言ってるんだよ、使いやすくするには、これが邪魔なんだよ。ほら、外すの手伝えよ」


「え、エー!!」


 コイツは何を言っているのだとカミュは思う。だが、主人(愛する人)の言うことに逆らわないと決めたため、手伝わなければならないが、周囲の目が気になってしまい、ビクビクしながらカミュは井戸に設置されている物をバラしていく。

 すると、再び子供達が水を汲みにやって来て、大声を上げて大人達を呼び集める。折角水を汲みに来たのに、汲む手段を壊されているのだから仕方が無い話だ。

 どんな目に合わされてしまうのか、カミュはビクビクしながら栗山の作業を手伝う。


『て、テメェ! 何してやがる!!』

『頭が狂ったのか!』

『お、おい止めるぞ!!』


 大人等が栗山とカミュを囲んで取り押さえようとすると、栗山は爆竹を召喚し、火を付けて周りに投げる。

 勢い良く爆竹は破裂音を鳴らし、取り囲んでいた人達は頭を抱えしゃがんでしまう。もちろん、突然の事でカミュも頭を抱えしゃがんでしまった。


「使いやすくしてるんだ。邪魔をするなら容赦はしない」


 静まり返った中で栗山が言うと。周りからは罵詈雑言が飛び交う。しかし、先程の爆竹による恐怖が抜けないため、近寄ることが出来ず、栗山が井戸の設備を破壊してしまうのを見ている事しか出来なかった。


 袋から長い筒状の物を出すように召喚し、皆が見たことのない、金属の物体を取り出す(ように召喚)。


「カミュ、この板を押さえとけ」


「は、はい!」


 皆が殺気立った中、カミュは怯えながら言われた通り板を押さえる。この様な物でどうやって水を汲むのが楽になるのか分からない。

 板の上に、先程出した筒状の物を板と板の間に入れ、金属の物体と装着させる。金属の物体に付いている棒状の物を上げ下げすると、金属の物体にある穴から水が出始めた。どうしてこうなるのか全くわからないが、井戸の中に桶を投げ入れなくても水が出てくる事が分かり、周りがざわつき始めた。


『お、おい! お、お前……何をしやがったんだ!』


「これはポンプという物だ。この棒を上げ下げさせると水が出るように改良した。これで水汲みが楽になるぞ」


 板を押さえているカミュは、あまりの出来事に板を手放してしまう。だが、既に固定作業を始めているため、落ちたりズレたりすることはなく、ポンプは固定されるのであった。

 子供達を一列に並べ、栗山がレバーを動かす。子供達は蛇口に桶を置き、水を運んで行く。

 大人達は驚いた顔をしてその様子を眺めているのであった。


「これで下民街の水問題は多少改善されるだろ?」


 大人達に向かって言うと、皆は口を揃えて「お、おう……」と返事するのだった。


「た、確かに……これは画期的ですよ……」


 異世界で得た知識とその技術。まさか、生活そのものまで変えるなんて思ってもいなかった。カミュは驚くことしか出来なかった。

 しかし、栗山がやったのは良いことかも知れないが、周りからは変人である。


「じゃあ、次に取り掛かるぞ。カミュ、一旦家に帰るぞ」


「え? か、帰るの? ここでやった意味って何なの?」


 何のために井戸を見に来て、井戸を改良したのかさっぱり分からない。だが、栗山が家に戻るというのであれば、カミュはそれに従わざる得ないのである。

 これが惚れた弱みなのか……カミュはなんとも言えない気分で栗山の後を追い掛けるのであった。

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