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凶暴な鶏のような奴

 朝食を作りコレットが4人を起こしに行く。身体がかなり怠い状態だが、あともう少しで町に到着するはず。そう思いながら5人の食事が終わるのを待つ。


 本来であれば歩いていこうと言うのだが、この状態で何かがあったら大変なため、車で移動することにする。だが、キャンピングカーはサイズが大きく、道幅をかなり占領してしまう。

 そのため、車は軽ワゴンに乗り換え町へ向かうことにしたら、エミルとカルミが狭い狭いと騒ぎ立てやがった。

 体調が悪いときに騒がれるのは本当に苛つく物で、クラクションを盛大に鳴らし、5人を驚かせる。

 「何の音だ!!」と5人は音の出処を探すのだが、見つかるはずがなく新種の魔物ではないかと5人は答えを出し息を潜め、この場をやり過ごす事にし、黙ったことで栗山は心の中で笑うのだった。

 車で走ること2時間……やっと町が見え始める。栗山は車を止めて5人に降りるように言うと、5人は眉間に皺を寄せ、唇を尖らせながら車を降りた。


「何、ふて腐れているんだよ」


「だって歩いて行くんでしょ? 疲れちゃうじゃん」


 エミルの言葉に少しだけイラッとする。

 コイツ等……馬鹿な事を言うなと言いたい。こちらは何時間運転していると思っているのだ。そして、夜はお前等の警護をして、寝るのも最後、朝は朝食を作り、昼も作る。挙げ句の果てには夜も作っているのだ。この中で俺が一番疲れている……と言いたいが、自分で勝手にやっているので言えるはずもない。

 更に、具合が悪いので怒る気にもなれず「運動しないと太るし、夜は寝られなくなるぞ」と、適当な言葉を見繕って言うと、5人は太るのは嫌だと言って歩き始め、ワイワイと楽しそうにしながら付いてくるのであった。

 町に向かう途中には野ウサギがチラホラ見受けられるようになり、エミルとカルミは仕留めて良いかと聞いてくる。勝手な行動をされると面倒なので、休憩まで待つように言うと、舌打ちをして睨み付けてくるが、それ以上言ってくることはなかった。本当に調教の必要した方が良いのでは無いだろうか……。


 野ウサギもこちらに気が付いているはずなのだが、逃げる様子はなく、一定の距離を保つようにして、いつでも逃げられるようにしている。

 野ウサギを捕まえたりするには罠を仕掛けるか、弓で狙い撃たなければならないだろうが、弓で撃つにも隠れて狙う必要があり、捕まえたりするのはとても難しそうであった。

 他にも、遠くに鶏……と言うにはデカすぎる。しかし、どう見ても鶏冠と肉髯があり、栗山が知っている鶏と瓜二つであるが、異常なまでの大きさの生き物がノシノシと歩いている。

 暫く休憩してから町に向かうことにし、エミルとカルミの2人は今までの不甲斐無さを挽回するかのように野ウサギを狩りに行く。

 どう見てもこちらには危害を加えそうもないし、いざとなればカミュやコレットもいる。この2人は比較的に言う事を聞いてくれるし、栗山に懐いているため、扱うのが非常に楽である。

 しかし、カミュに関してはこちらに対して恋愛感情に似たものを持っているようで、少し様子を窺いながら付き合っていかなければならない。

 気持ちは非常に嬉しい。しかし、この生活を続けるためにはその線引きが必要で、気持ちに応える訳にはいかないと思う。他の4人に優遇されていると言われるのはカミュなのだから……。

 そんな事を考えながら横になり身体を休めようとすると、カミュが身体を揺すって邪魔をしてくる。


「すまないが、少しだけ休ませてくれないか?」


「え?。だけどまだ昼を食べてないぞ! 私はお腹が空いたよ!」


 これ以上、働かせないで欲しいと思うのだが、そう言う訳にはいかない。確かに昼を食べていないし、飲み物も飲んでいないのだ。言葉にはしていないが、チヒだってそう思っているのだろう。

 そんなチヒは言葉に出せずにいるようで、カミュを応援している眼差しで見つめている。

 栗山は身体を起こし、深い溜め息と共にカップ麺を作り始め、3人に食べさせる。自分は栄養補助食品などの携帯食で済ませ、一応、薬を飲んで横になった。


「2人が戻ったら起こしてくれるか?」


 カップ麺を啜る3人にそう言って眠りにつくのだが、奴隷の姫様達は早々簡単に許してくれるはずがない。

 10分位横になっていると、馬鹿みたいに叫んでエミルとカルミの2人が戻ってくる。

 いったい何が起きたのだと思い身体を起こすと、鶏……のようなデカイ生物がこちらに向かってきており、慌てて栗山達は逃げ出す。

 やはり寝起きは思考能力が低下しており、鶏……のようなデカイ生物に狙撃するという事を忘れてしまう。

 今は急いで逃げろという言葉が頭のなかに響き、その本能が示す通りに駆け出してしまったのだ。

 追われる6人。始めに追い掛けられていたエミルとカルミは泣きながら走って栗山に助けを乞う。なに都合の良い事を言っていやがるのだと栗山は思いながら走っていくが、体調を崩している身体であるため、体力は落ちている。更には寝不足と疲れのダブルパンチで活動限界が近づいていたのだった。

 このままでは追い付かれると思った栗山。袋から銃を取り出すように召喚し、エミルとカルミに左右へ逃げろと叫ぶようと、2人は馬鹿みたいに同じ方向へ逃げていく。鶏のような生き物は、自分に近い2人を追いかけて行き、栗山は深く息を吐き呼吸を整える。


「全く……いい加減に休ませろ!」


 そう言って栗山は数発銃を撃つと、鶏のような生き物は前に滑り込むように倒れ込んだ。

 それに気が付いたエミルとカルミの2人、立ち止まると、膝から崩れるように座り込み、お互いに何かを言い合っている。


「何を言っているんだ?」


 コレットに質問すると、「何で同じ方向に逃げるのか……って言い争ってますね……」と、呆れた様子で答えるのだった。

 その後、鶏のような生き物を回収し、冒険者カードで生き物の名前を確認すると、鶏雉ケイキジという名前らしく、何処が雉なのか教えて欲しい。ハッキリ言って、巨大鶏である。

 無益な闘いをしていた2人にどうして追いかけられていたのかと聞くと、何匹目か分からないが、野ウサギに銃を向けていたら2人の背後に忍び寄っていたらしい。

 油断しているからそうなるのだと思いながら話を聞いていると、コレットとカミュが慌てて後ろを向く。


「どうしたんだ? 2人共……」


 そう言って後ろを振り向くと、鶏雉が後ろにおり「クケー! クッコッコッコッ……」と鳴き始めた。


「う、嘘だろ!!」


 鶏雉は栗山よりも大きく身体が大きい。例えるならば、力士2人が肩車をして立っている様なイメージである。

 クケークッコッコッコッ……と鳴いているが、眼はヤバイ。こちらを餌だと思っているのか、嘴で襲いかかってくる。嘴は鋭く、突かれると言うよりも、刺し殺すと言った方が良いだろう。慌てて避けるが、5人は栗山が襲われている間に蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。


「お、お前等!」


 なんて薄情な奴等なのだろう。逃げて行く5人を見てそう思うが、先ずは自分も逃げることが先決である。

 猛ダッシュをしながら町がある方へ走っていく。鶏雉はその身体に似合わず猛烈ダッシュで追走し、栗山を嘴で狙う。だが、一発の銃声が鳴り響き、鶏雉は前に滑り込むように倒れ、栗山も滑り込むように倒れ込んだ。

 狙撃してくれたのはカミュで、当たった事にホッとした顔をして駆け寄ってくる。


「大丈夫か? 兄ちゃん……」


 大の字で寝転がっている栗山に心配そうな顔してカミュが覗き込む。栗山は身体を起こして深い溜め息を吐いてから質問をした。


「まぁ、なんとか……。それよりも、アイツはどうやって近寄ってきたんだ? お前等2人が気が付かないって……おかしくないか?」


 その言葉に困った様な顔をするカミュ。原因が分からないらしく、答える事が出来ないと言う。


「ごめんなさい……」


 落ち込んだ様子でカミュは俯き、栗山は頭を撫でる。カミュ1人だけならともかく、コレットの耳でも聞き取れていないとなると、何かしらの原因があるのだろう。そして、それは獣人族の聴力を上回る能力であり、鶏雉はそれを得意としているということになる。


「取り敢えず、周りを警戒しながら町へ向かおう」


 皆は返事をして周囲の警戒をしながら進んで行くと、1匹の鶏雉を発見する。相手もこちらに気が付いているようで、近寄ろうとはしてこないのだが、それに対して違和感を抱いてしまう。何故なら、先ほどは背後に近寄り嘴で攻撃を仕掛けてきたのだ。と言う事は、凶暴な生き物だと言う事である。それなのに、今は警戒するかのように近寄ってこない。


「なぁ、殺ってしまっても良いか?」


 カミュが銃を構え狙っている。こちらの様子を窺っており、相手は動く気配もなく、ただ……こちらを見つめているだけである。


「そうだな、襲ってこないのなら殺ってしまおう。俺がいた場所では、『やられる前にやれ』と言う言葉がある。それに従った方が良いだろう」


 「分かった」と返事をしてカミュは狙撃する。弾丸は眉間辺りにヒットしたらしく。鶏雉は地面に倒れ込む。コイツは魔物なのか、それとも動物なのか分からないが、鶏と似ていると言う事は、肉が旨いはずである。たまにはチキンを食べるのも悪くないと思いながら近寄っていくと、再びコレットとカミュが振り向き、先ほどと同じような事が起きるのだった。


「原因は分からないが、この様なコントは終わりにさせよう……」


 コントという意味が分からない5人は首を傾げる。だが、終わりにしようという意味は分かっているので、警戒を怠るなと言う事だと理解し、鶏雉を袋に仕舞って町へと向かうのだった。


 鶏雉の襲撃を恐れ、歩くスピードが遅くなっており、町に到着するのはそれから2時間が過ぎてからだった。

 町の入り口に立っている警備兵が「ようこそ、ブルネリアの町へ」と言い、ようやく安全なところへやって来られた安堵感に包まれる。

 入り口を警備している兵は、他の町に比べ異常に多い。その理由は分からないが、町が大きい事と何かが関係しているのだろう。

 先ずは身体を休める事を先決にし、宿屋を探す。正直に言って身体は既に限界で、直ぐにでも眠ってしまいたい。カミュやコレット達に宿屋を探してきてくれとお願いしたいが、コイツ等は文字が読めず、お願いする事ができない。

 勉強では宿屋を教えているのだが、まだ覚えるのに時間が掛かっており、これは苦労すると思いながら教えている状態である。

 唯一、チヒだけが4人よりも覚えが良いのが救いだろう。しかし、チヒは自分に自信が持てないらしく、本当に合っているのか悩んでしまう傾向があるのだった。

 そういう事でチヒにお願いする事は出来ず、自分で探すしか方法がないのである。

 1時間ほど歩き宿屋を探す。町はかなり広く、中々宿屋が見つからず、足が痛くなる。

 そして、自分が思うと言うことは、5人も思っていることで、振り返ると足が痛いと騒ぎ始める。こちらだって早く休みたいに決まっている。なのに見つからない宿屋。仕方なく人に尋ねてみると、宿屋は商業区域にあるらしく、栗山等がいる場所は住宅区域との事。そのため宿屋が見つからないのであった。商業区域の場所を教えて貰い、栗山等は30分ほど歩き商業区域と書かれた看板を発見する。どれだけこの町は広いのだろう……。


 商業区域に入ると沢山の店が並んでおり、5人は声を上げて色々な店を見ている。店舗から露店まで沢山の店が並んでおり、5人の歩くスピードが遅くなる。先ほどまで疲れたと騒いでいた癖にと思いつつも、これほど沢山の店を見た事がないのだろう。疲れた身体に鞭を打ち、あと一踏ん張りだと自分に言い聞かせる。


 それから1時間が過ぎた頃に宿屋を発見し、栗山はようやく骨を休める事ができたのだった。

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