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21.聞かぬは一生の恥

 まだ一匹も仕留めていないカルミに対し、カミュ、コレット、チヒの3人は魔物を倒した。同じ日に買われ、同じ日に冒険者になったのに、何故、ここまで差ができてしまったのか……休憩中のカルミの表情は暗い。

 コレットとカミュは気が付いているのか、少し気にした様子でカルミをチラチラと見ており、話しかけるタイミングを伺っているようだ。

 暫くして再び魔物を探しに行くと、カミュとコレットの2人が魔物の音を感知して皆に知らせる。

 エミルに銃の使い方を説明しようとして止められた事を思い出し、コレットは栗山の顔を見て、銃の扱いを教えて良いのか確認しようとする。だが、既にコレットの方を見ていた栗山。首を横に振って教える必要はないと訴えていた。

 何故、教えては駄目なのか……コレットは理解に苦しむのだが、栗山が教えないと言うのならば、それに従うしかない。

 コレットとカミュが示す方をスコープで確認を行うと、鬼のような魔物が1匹おり、初めて5人に会った時を思い出す。


「ありゃ……オーガだな」


 栗山が呟くと、エミルがスナイパーライフルを構えスコープを覗く。

 スコープに映し出されている魔物は身体が大きく、厳つい顔をしており、エミルは畏怖してしまい狙撃するのを躊躇う。

 それを見てカルミが構える狙いを定めるが、照準が定まらず指をトリガーに掛けることができないでいた。


「さ、3人共……どうやって当てたって言うのよ……」


 銃を降ろし、魔物がいる方向に目を向けて呟くと、カミュがカルミの側に寄り「一度深呼吸してもう一度……」とアドバイスをしようとした。


「要らない。私は出来る……」


 カミュのアドバイスを拒むカルミ。それを見たコレットが何かに気が付き栗山を見た。

 エミルにアドバイスをしようとして止められたのは、エミルに拒まれるから。栗山はそれを分かっていたのだとコレットは理解する。

 良かれと思い、アドバイスをしようとしたカミュは落ち込み、元気を無くしてカルミの側から離れる。

 もしかしたら、カミュの姿は自分の姿だったかも知れず、コレットはカミュの側に寄り、背中を擦って慰めた。

 再びエミルが銃を構え、オーガに狙撃を試みる。しかし、弾は逸れて仕舞い、オーガは弾が飛んで行った方へと歩いて行く。物音がしたので、何かいるのだと勘違いしたのであろう。


 慌ててカルミが狙撃をしようと銃を構えるのだが、離れていく獲物を狙うのは難しく、再びトリガーを引く事が出来なかった。


「何で私ばっかり!!」


 銃を叩き付け怒りを露わにするカルミ。栗山は溜め息を吐いてカルミに言う。


「そう思うのだったら、3人にどうしたら良いのか聞いたらどうだ?」


「3人にできたのに私ができないのはおかしいでしょ!」


「できないから言っているんだろ? 聞くのが恥ずかしいのかよ?」


「そ、そんな事ない……そんな訳ないじゃん! 私は自分でやれるから言っているの! 同じにしないで!!」


「はいはい……なら、頑張って下さいよ。時間は無限じゃなく有限だからな。2人とも、それまでには1匹くらい、仕留めてくれよ。俺達も生活がかかっているんだからな。3人とも、次に見つけたら攻撃して良いぞ。2人は自分でどうにかするようだからな」


 その言葉にカミュ等3人は戸惑い、2人を見る。だが、2人とも意地になっており話を聞いてくれるようには見えず、困った顔をする。


「俺が住んでいた世界では、こう言う言葉がある。『聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥』とな。まぁ、自分等で解決できるのなら何も言うことはないが、できないのなら……」


「うるさい!! 大丈夫だって言ってるでしょ!」


 エミルが叫ぶように言い、栗山は「あっそ。頑張ってね」と言って林の中を歩き始めた。カミュ等もそれに続くように歩き始め、なんだか2人は居心地が悪い気分になる。


「なぁ、兄ちゃん……」


「どうした?」


「どうしたら良いのかな……」


「何もしなくて良い。逆に、放って置いてやれ。いざとなったら自分達で解決するだろうさ」


「だけど……」


 お前は優しい。そう言いかけるが、言うのを止める。言ったところでどうすることもできないし、言う意味がないと思ったからである。

 暫く歩いて行くと、2人の耳が何かに反応し、立ち止まる。


「あっちの方角に何かいる」


 カミュが指差す方をスコープで確認すると、冒険者らしき人達がバイリードッグの群れに囲まれており、その中の1人は見たことがある人物だった。


「あれは……レミー、レミー・ビーン?」


 栗山の口から女性らしき人物の名前が出てカミュの表情が変わる。


「囲まれていますね……。あのままだと……」


 それから先は言わなくても想像が出来る。コレットはそれ以上は言わず、スコープを覗いていた。


「あのままだと夢見が悪い。助けるぞ。コレットとチヒはここから魔物を狙って、俺達は現地に向かうぞ。到着したら、2人も合流して戦闘に加わるんだ」


「「はい!」」


 2人は声を揃えて返事をしてスナイパーライフルを構える。栗山とカミュは走り出し現場へ向かう。

 しかし、エミルとカルミの2人はその場から動けないようで立ち竦んでおり、コレットは一瞬だけ目をやり眉間に皺を寄せる。


「カミュ、敵の数が多い。これを使え」


「ん、分かった……」


 使い方は分からないが、形状は銃なのが分かる。なので使い方は殆ど同じであろうと予測し、肩にかける。

 カミュの耳が何かを捉えているようで、耳がピクピクと動く。だが、カミュが何も言わないのであれば、問題はないだろうと判断し目の前の事にして集中する。


 コレットとチヒの2人は、スコープから目を離すことなく撃ち続け、1匹、また1匹と魔物は倒れていく。だが、魔物の数が多く、全てを捌き切る事はできない。攻撃の数が圧倒的に足りないのと、冒険者が動くので攻撃がし難い。そして、助けなければと言う気持ちの焦りが狙撃する腕を鈍らせる。

 栗山が到着したのを確認し、コレットとチヒは現場に向かって走り出した。あまり役に立つ事が出来なかった自分に毒づきながら……。


 囲まれた冒険者の元に銃を乱射しながら栗山とカミュは到着する。カミュが持っていたP320は弾切れになっており、到着と同時にサブマシンガンのトリガーを引く。

 すると、「パラララッ……」と弾丸が飛び出し、カミュは慌ててトリガーから指を離す。


「い、1回しか引いてないのに!」


「そりゃ、そういう武器なんだよ。弾を連射してくれるんだ」


 栗山もサブマシンガンを手にしてバイリードッグの群れに掃射し、冒険者達の逃げ道を作るのだが、怪我人がおり逃げる事が難しい状態。

 敵が撤退をしてくれれば問題ない話なので、どうやって追い払うかが勝負の鍵となる。


「兄ちゃん! この間、私達を守ってくれた武器! あれを使えないか」


「準備に時間が掛かる!」


「それまで私が引きつけるから、それを使って追い払ってくれよ!」


 カミュが前を見ながら手を出す。サブマシンガンを寄こせと言っているのだろう。


「コレット達もこっちに向かってる! 大丈夫だから早く!」


 カミュの耳が動いており、後ろの方からコレット達が来ているのを理解しているのだろう。


「無理をするなよ、俺がしゃがめと言ったら直ぐにしゃがめ!」


「分かった!!」


 栗山はカミュにサブマシンガンを渡し、固まっている冒険者達の側へ駆け寄り一斉掃射をする。その間に栗山はM134を召喚し、弾丸を10万発(1秒間に100発撃ち出す)召喚して大声でカミュにしゃがむよう呼びかける。

 振り返って栗山の方を見たカミュ、その大きさに「ゲッ!」と驚き、慌てて冒険者達にしゃがむように言って、押し倒すようにし地面に伏せた。

 それを確認した栗山は、スイッチを押して乱射し、銃を左右にゆっくりと動かしながらバイリードッグの群れを射殺していく。

 その音にカミュは「ヒィ!!」と叫びながら耳を押さえるようにして伏せており、冒険者達も何かが頭上を飛び越していることが分かり地面に伏せて事が終わるのを待つのだった。

 弾薬が切れ、銃の召喚を解除したところでコレット達が息を切らせながら栗山の側へやって来る。


「じょ、状況は!!」


「あらかた片付いた。後は……」


 そう言ってカミュ達の側により、生き残っているバイリードッグを射殺して戦闘は終了したのだった。


「2人は怪我人の確認を、カミュは俺と索敵を行うぞ!」


 3人は返事をして動き始める。カミュは耳を頼りに周りを確認しながら安全を確認する。


「兄ちゃん、もう大丈夫だ! この辺りに魔物はいない」


「そうか……お疲れさん、カミュ」


「おう! だけど、凄い攻撃だったな。いったい、どうなってんだ? あれだけの魔物が全滅じゃんか」


「1秒間に100発の鉛を飛ばしてやったんだ。あの程度、一瞬だろう。しかし、カミュが時間を作ってくれたからできたんだよ。ありがとう、カミュ」


「いやぁ~。もっと褒めても良いんだよ~」


 照れながらカミュは近寄り、頭を差し出してくる。栗山はその頭を撫でてからレミーの側へと向かった。


「レミーさん、大丈夫ですか?」


「き、君は……確か、あの時の……」


「お久しぶりです。と言っても、あれからあまり時間が経っていませんけどね」


「そ、そうだったね。えっと……チアキだっけ?」


「無事で何よりです。治癒魔法を使用できる人はいないのですか?」


「えぇ……まさかこんなに現れるとは思ってもみなかったわ。これで2度目ね……助けられたのは」


「たまたまですよ。カミュ、死骸を回収しよう」


「いや、それは兄ちゃんがやってくれよ。私はエミルとカルミを連れてくる。これでは人手が足りないからね」


 チラッとレミーを見て、カミュは2人の元へ向かう。いつものおちゃらけた言葉ではなく、少し、雰囲気がおかしいように感じた。


「チアキさん、回収は私も手伝います。早めにこの場所から離れた方が良いかもしれません」


「分かった。レミーさん、怪我人をお願いします」


 回収を手伝うと言ってくれたコレット共に、栗山は死骸の回収を行う。そして、カミュ等と合流し、レミー等の冒険者一行を連れて町に戻ったのだった。


 町に戻り入り口の警備兵にお願いをして治癒魔法を使える人達を呼んでもらい、レミー等の冒険者達は治療をしてもらう。


「本当に助かったわ。ありがとう……」


「いえ、同じ冒険者として当たり前ですよ。レミーさんはいつ頃こっちへ来られたのですか?」


「昨日辿り着いたの。君と別れてから、ギルドで募っていたメンバーと共に移動してきたんだけどね。……雨が降っていて大変だったけど、今日は晴れて良かったと言う矢先にこれね……」


 苦笑いをしながらレミーは言う。前回もそうだが、今回も酷い怪我をしないで助かった。本当に感謝していると、申し訳なさそうにお礼を再び言われる。


「気にしないで下さい。たまたまなんですから。これからどうするのですか?」


「この辺りは魔物が多いと聞いていたけど、ここまでだとは思わなかった。仲間次第だと思うけど……戻ることになるかしら」


「そうなんですか……」


「貴方はどうするの? この先へ進むと、かなり大きい町があると聞いているけど……」


「そうなんですか……。まぁ、そろそろ俺達も別の町へ行こうとしていたので、そこへでも行ってみようと思います」


「そう、もう会えないかも知れないけど、本当に助かったわ。ありがとう」


 レミーと握手をし、その場を警備兵に任せて、栗山達はギルドへ向かう。今日の仕事はこれで終わり、この後はカミュの大っ嫌いな文字の勉強を行うのだ。

 ギルドに到着すると、街道で町までの距離を聞いてきた冒険者達に出会う。


「おや、君達は……」


 冒険者のリーダーらしき人が気が付き栗山の前にやって来る。正直、面倒だしカミュやコレットの件があるので絡みたくはなかった。


「あ、どうも。無事に町へ辿り着いたんですね」


「あぁ、先ほどは教えてくれて助かったよ。だが、この町はあれだね……来る物を拒む……そんな感じの町だね」


「は、はぁ……そうみたいですね……」


 世間話がしたいのか、冒険者のリーダーらしき男は道を譲ってくれず、鬱陶しさを感じる。早く換金を済ませ、勉強に取りかかりカミュを苛める予定だったのにと、栗山は思いつつ返事する。

 後ろでは魔導士がムキムキマッチョマンと何やら話しており、カミュとコレットの表情が暗くなる。また良からぬ話をしているのだろうと思い、適当に相槌を打って話を終わらせると、魔導士の女が自慢するように言ってくる。


「アンタ達、私達にあったことを自慢して良いわよ」


「おい、止めろよ、アスレッタ」


 リーダーらしき男が止める気も無いくせに、女魔導士を静止する素振りを見せる。


「いや、すまないね。俺達の仲間が……」


 何か聞いて欲しそうな顔をしているのが分かりやすい。聞かなくても構わないので話を流そうとしたら、エミルの癇に障ったらしく「何を自慢するっていうのよ!」と言いだし、栗山は深い溜め息を吐いた。

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