俺の負けだ!!
フグ「こいつ、俺の踵落としを喰らっても、まだ意識があるというのか!!タフな奴め。」
フグは、石を拾って両手で握り、マックに乗しかかってマウントポジションを取った。
フグ「喰らえ!!フグ・フルボッコ!!」
フグは、マックの顔面を何発も石で殴りつけた。
マック「ギャアアアア!!」
マックは絶叫をあげて気絶した。
フグ「とどめだ!!ナカムラ~~シュンスケへスルーパス!!」
フグは、既に気絶して仰向けに倒れているマックの左脇腹に、蹴りを入れた。そして、右足を高く上げ、勝利のポーズをとった。
スライム「さすがフグさん、見事な勝利だ。さあ、私のサイフを。」
フグ「ここの中か?」
フグは、ゴリラのマイクの腹にある、体毛で作ったドラえもんのようなポケットに手を入れ、黒い長財布を取り出した。
スライム「ありがとう、フグさん。」
フグ「これは、たった今、俺の金になった。」
スライム「待ってくれ、フグさん。それは今月の家のローン代だ。あんたに上げるわけにはいかない。た、頼む。返してくれ!!あんたの時給を今月から100円上げるから!!」
フグ「なに!!100円だと!!」
フグの現在の時給は720円だから、100円上がると820円になる。100円上がるということは、1ヶ月工場に20日間出勤とすると、1日8時間労働で、16000円給料が上がることになる。この先もずっとこの工場で働くつもりだから、こっちの方が得だなと思い、フグの心が動いた。
フグ「いいだろう。」
フグは、スライムに長財布を渡した。
スライム「ありがとう、フグさん。そうだ、私の家に来てくれ。ぜひ、お礼としてご馳走したい。」
フグは、工場長・スライムの後について草原を歩いて行くと、紫色の水溜まりに着いた。
スライム「フグさん、飛び込むぞ。これは、私の家の庭に繋がっているワームホールだ。」
スライムが水溜まりに飛び込んだので、フグも飛び込んだ。もの凄い勢いの水流に包まれて、別の場所の水溜まりからフグが飛び出ると、目の前にかなり大きな黄色の屋敷があった。
スライム「フグさん、これが私の家だ。さあ、入って。」
フグ「なに!!工場長ともなると、こんな豪邸に住めるようになるのか。」
フグがスライムの豪邸に入ると、金髪のかなり若くて美人な女が出て来た。
金髪の女「お帰りなさい、あなた。」
スライム「やあ。元気にしてたかい、イバンカ。こちらはフグさん。さっき、草原で助けてもらったんだ。何かご馳走を出してあげて。」
フグ(な、なに!!こんな美人がスライムの奥さんだというのか!!)
イバンカ「初めまして。今日は主人がお世話になりました。さあ、どうぞ上がって下さい。」
フグ「う・・・・ううぅ。」
フグの目から涙が零れた。
フグ(俺は今まで何をやってたんだ!!スライムは工場長で立派な家を建て、綺麗な嫁さんをもらって・・・・俺の負けだ!!)
この日は、フグが今までの人生で、初めて自分が負けたと感じた日となった。