フグの空手ショー
バイトの給料日まで後3日。金に困ったフグは、この日、戦隊ヒーローのやられ役・ショッカーのバイトのため、街の中央広場に出かけた。ショーが始まり広場は、子供達とその親達でいっぱいになった。フグの出番が来て登場し、戦隊のリーダー・レッドの蹴りを見て、フグの空手魂に火がついた。
フグ「なんだ!!その腰が入ってない蹴りは!!そんなんじゃ、相手は倒せないぞ!!蹴りはこうだ、ドリャアアアア!!」
フグの鋭い横蹴りがレッドの腹に突き刺さり、レッドはふっ飛んで気絶した。それを見た子供達や親達は、唖然としてしまった。さらにフグは、残りのブルー、グリーン、イエローにも前蹴りや回し蹴りを入れて気絶させた。しかし、ピンクだけはフグの蹴りをかわした。ピンクは、アクションスターを目指す小柄な女で、動きが他の4人の男達とは違っていた。
フグ「ほう。少しはやるようだな、しかし、俺の敵じゃない。」
ピンク「ちょっと、あなた、何考えてるの!!これはショーよ!!」
フグ「黙れ!!ここからは、俺の空手ショーだ。いくぞ!!」
フグは容赦なしに、ピンクにローキックを入れた。
ピンク「キャアッ痛い!!」
フグ「お前みたいな動きの早い奴には、ローキックが一番だ!!」
フグは執拗にピンクにローキックを放ち続けた。その光景を見て、広場では、泣き出す子供達や悲鳴をあげる親達で溢れかえった。
子供達「お願い、もうやめてあげて!!」
「うえ~ん、ひどい、ピンクのお姉ちゃんがかわいそう。」
親達「なんなの、これ。なんでショッカーがこんなに強いの。」
「お金返して!!こんなの子供に見せられないわ!!」
スタッフやバイトの人達が止めに入ろうと、フグの側に駆けつけ始めた。しかし、フグは、そんなことには目もくれず・・・・
フグ「喰らえ!!必殺・脳天踵落とし!!」
フグは高く飛んで、ピンクの脳天に踵落としをぶち込み、ピンクはガックリと倒れた。それを見てフグは、片足を高く上げ、勝利のポーズを決めた。
スタッフやバイト達は、フグに罵声をあげた。
スタッフ達「お前、何やってるんだ!!」
「なんて事してくれたんだ!!おい、誰か救急車を呼べ!!」
「すいません、これにてショーを終わります。お金をお返ししますので、こちらの受付の方へ並んで下さい。」
親達は、子供を連れて並び始めた。少しして、受付の男が叫んだ。
受付の男「お前、なに並んでるんだ!!」
フグ「バイト代を払え!!」
受付の男「払えるわけないだろ!!帰れ!!お前のバイト代は無しだ!!・・・・・・・・ううぅ。」
フグの鋭い眼光に受付の男は恐怖し、ついついバイト代の12000円を払ってしまった。
フグ「それでいいんだよ。俺の空手を、こんな安い値段で見れたんだから、お前達はむしろ幸福者だ。」
フグは金を受け取り、意気揚々とその場を去って行った。
病院に搬送されたピンクは、身元がばれて後に逮捕された。実はピンクの裏の顔は、シティーシーフだったのだ。
今日も逞しくワイルドに、異世界を生きるフグであった。