俺のおかげだ!!
農家の男達「な、なんか・・・・後味悪いな。」
「魔王が気の毒になってきた。」
兎達は、ペーターの回りに集まり、その内の5匹で、草原の奥へと運び始めた。農家の男達が、残った兎達に話しかけた。
農家の男「お前ら、なんか悪かったな。この畑の一角なら、人参を好きなだけ採っていいぞ。」
「そうだな。さすがに俺達も、人参を売って食っていかないといけないから、全部ってわけにはいかないが、ここだけならいいぞ。」
兎達「本当か?じゃあ、俺達もお前らに何かやるよ。そうだ、オウゴンオニクワガタを採ってきてやるよ。」
「おお。あれなら今、草原の近くの木にたくさん沸いてるし、お前らにとっても、いい金になるだろ。」
農家の男達と兎達は、互いに打ち解け始めた。フグは、農家の男達に向かって叫んだ。
フグ「おい、お前ら!!とにかく俺は魔王を倒したぞ!!だから、早く報酬をよこせ!!」
草原でフグを訪ねて来た農家の男が、銀色の腕時計を持って、フグの元へ駆けつけた。
農家の男「これは、先月亡くなった俺のじいさんの形見の腕時計だ。型は古いが、今は売られてないレアな物だから、質屋に持っていけば、かなりの値段がつくはずだ。」
フグは、腕時計を受け取った。
フグ「こんな物はいらん!!俺は現金主義だ!!現金だ!!今すぐ現金をよこせ!!」
そう言って、フグは腕時計を地面に叩きつけ、腕時計の表面にヒビが入った。
農家の男「なんてことを!!これは、鑑定士によれば100万はするって言っていたのに!!」
その光景を見た農家の男達と兎達は、フグを非難し始めた。
農家の男達「普通、空手家なら、ありがとうって受け取るだろ。」
「何も投げつけなくても。」
兎達「反則して勝って、おまけに金まで取るのか!!」
「こいつは空手家じゃない!!こいつは、ただの守銭奴だ!!」
フグ「黙れ!!俺のおかげで、お前ら仲良くなったんだろうが!!こんなボロい腕時計が報酬だと?ふざけるな!!」
フグを訪ねて来た農家の男が、農家の男達に頭を下げた。
農家の男「みんな、確かにフグさんのおかげだ!!1人1万ずつでお願いします。」
農家の男達は、いやいやサイフから1万円を取り出し、農家の男は、それを集めてフグに渡した。
フグ「それでいいんだよ。最初からこうすればいいんだよ。せっかくだから、このボロい腕時計も貰っといてやるよ。」
そして、フグは腕時計を拾い、笑顔でその場を立ち去った。
農家の男達「あいつ、最低だな。」
「明日から会っても無視だ!!」
兎達「親分が治ったらリベンジだ!!」
「みんなで袋叩きにしようぜ!!」
一 次の日 一
フグは街の質屋に来ていた。
店主「惜しいな。このタイプの腕時計は、今はもう、生産されてない、かなりレアな物だ。このヒビがなかったら100万以上したのに。ヒビが入ってるから価値は1万だな。」
フグ「なに!!あいつの言ったことは本当だったのか!!」
今日も逞しくワイルドに、異世界を生きるフグであった。