フグの空手教室
一月ほど前から土曜日の夕方、フグは、家の近くで空手教室を始めていた。
まず最初に、黒っぽい野ウサギのピョン吉と、タヌキのポン太がやって来た。
ピョン吉「やあ、フグさん。暇だから空手をしに来たよ。」
ポン太「俺も。」
フグ「暇だから空手をしに来ただと?お前ら、この道場は、世界最強を目指す男が来る場所だ!!空手をなめるな!!」
ピョン吉「道場って、ここは草原じゃん。」
ポン太「そうそう。それにフグさん、空手の時間よりバイトしてる時間の方が長いし。」
フグ「俺は、お前らと違って金がいるんだ!!人間はいろいろとめんどくさいんだよ!!」
そんな話をしていると、ゾウ亀夫婦のタツオと、ヨシコがやって来た。そして、少し遅れて針鼠のハリゾウと、野良猫のニャンゴロウがやって来た。
タツオ「こんにちわ、フグさん。」
ヨシコ「今日もよろしく。」
ハリゾウ「フグさん、久しぶりだね。」
ニャンゴロウ「チース、フグさん。」
フグ「こんばんわ。タツオさん、ヨシコさん。それからハリゾウ、お前は出席日数が少ないぞ!!もっと練習に参加するように。ニャンゴロウ、お前はもっと真面目に練習しろ。」
ハリゾウ「はい、フグさん。」
ニャンゴロウ「了解。」
フグの空手教室が始まって、今日で5回目。ハリゾウは2回目の参加だった。出席率が半分以下なので、フグは注意した。
フグ「よし、まずは正拳突きをして体を暖める。それから柔軟体操をしよう。四股立ち、構えて!!正拳突き、準備!!」
空手教室の動物達は四股立ちをして、正拳突きの準備をした。
フグ「始め!!1・2・3・4・5」
フグの号令に合わせて、動物達は正拳突きをしたが、5回目の正拳突きをしたとき、ゾウ亀のタツオが仰向けに倒れた。
タツオ「フグさん、起き上がれない!!起こしてくれ!!」
フグ「みんな、正拳突きやめ!!」
フグはタツオの所へ行き、起こそうとした。
フグ「お、重い!!重すぎる!!タツオさんは体重何キロあるんだ?」
タツオ「う~~ん、300キロぐらいかな。」
フグ「それは、スーパーヘビー級だな。おい、みんな、手伝ってくれ。」
フグと動物達は、ゾウ亀のタツオの体を横側から押して、なんとかうつむせにした。
タツオ「みんな、ありがとう。」
フグ「ハアッハアッハアッハアッこれは筋トレになったな。よし、正拳突きの続きだ!!構えて!!正拳突き、始め!!」
フグと動物達は、再び正拳突きを始めたが、今度は3回目の正拳突きで、ゾウ亀のヨシコが仰向けに倒れた。
ヨシコ「ごめん、フグさん起こして。今日はなんか、調子悪いわ。」
フグ「うおっマジか!!みんな、正拳突きやめ!!ヨシコさんを起こすから手伝ってくれ。」
ヨシコもやはり体重が300キロほどあり、タツオと同じように、フグと動物達はヨシコの体を横側から押して、うつむせにさせた。
ヨシコ「みんな、ありがとね。」
フグ「ハアッハアッハアッハアッちょっと休憩だ。5分ほど休憩しよう。」
野ウサギのピョン吉とタヌキのポン太は、押してはいるが力がなく、猫のニャンゴロウは、あくびをしてみているだけ。針鼠のハリゾウも押してはいるが、やはり力がない。フグ1人が、ゾウ亀2匹を起こしたようなものだった。そのため、フグの両腕はパンパンに張った。
フグ「ちょっと薄暗くなって来たから、今日は最後に組手をして終わろう。自分のできる技を使って、組手をするように。時間は3分間。では、最初はタツオさんとヨシコさん。」
ゾウ亀のタツオとヨシコが向かい合った。
ヨシコ「あんた、夫婦だからって手加減しないからね。」
タツオ「望むところだ!!」
フグ「では、始め!!」
2匹の亀は、のそりのそりと歩いて近づき、そして立ち上がって、お互いの胸に正拳突きをした。お互いの胸に正拳突きが当たった瞬間、2匹とも仰向けにひっくり返った。
タツオ「フグさん、すまないが起こしてくれ。」
ヨシコ「フグさん、私もお願い。」
フグ「この組合わせは失敗だった。おい、みんな、まずはヨシコさんから起こすぞ。」
空手の時間よりも、ゾウ亀夫婦を起こす時間の方が長い、フグの空手教室であった。