美女とフグ
いつものごとく、フグとタケゾウは作業場で、ダベりながら機械部品の梱包作業をしていた。
タケゾウ「フグさん、この間テレビで言ってたんですが、色鮮やかな綺麗なモノには、毒があるらしいですよ。」
フグ「そうだな。ヒョウモンダコとかコバルトヤドクガエルとか、綺麗な色だが、ヤバいらしいな。」
タケゾウ「だからフグさん、人間でも色鮮やかな服を着ている奴等は、ヤバいわけですよ。夜の街とかにいっぱいいる連中は。」
フグ「キャバ嬢か、心配するな。そんなとこに行く金が、俺にはない。」
タケゾウ「キャバ嬢に限らず、キラキラ輝いている奴は気をつけて下さい。最近、新しくバイトで入った、サイクロプスの二宮とか、肌が青白く光ってますから。」
フグ「確か、アイツの血が1滴でもつくと、人間は死ぬみたいなこと言ってたなあ。さすがの俺も、アイツには決闘を申し込めないぜ。」
夕方、フグは仕事が終わり、帰りにコンビニに寄った。オニギリ2個とベーコンを1つ、レジに持って行くと、レジの可愛いお姉さんが話しかけて来た。
お姉さん「その空手姿は、あなたは、この街の保安官・フグさんですか?」
フグ「そうだ。」
お姉さん「やっぱり。」
お姉さんは感激しているようだった。
「私、強い男の人が好きなんです。もうすぐバイトが終わるんで、良かったら、これから食事でも行きませんか?」
フグ(こ、こんな可愛い娘から食事を誘われるなんて。ハッ。)
フグは、昼間の職場でのタケゾウとの会話を思い出した。
タケゾウ「フグさん、人間でも色鮮やかな服を着ている奴は、ヤバいわけですよ。」
フグは、レジのお姉さんを上から下まで、舐め回すように見た。
お姉さん「そんなに見ないで下さい。恥ずかしいです。」
お姉さんは、ポニーテールの長い黒髪、白のブラウスに黒のカジュアルパンツ、地味な白のスニーカーを履いていた。
フグ(地味だ、地味すぎる。この女に毒はない!!大丈夫だ!!たぶん、この女はフグ・マニアの1人だろう。しかし、フグ・マニアの女は、ブスしかいないはずなんだが。もしかしたら、最近、俺のマニアになったのかもしれない。」
フグは、コンビニの外で、帰り支度をしているお姉さんを、少し待った。
お姉さん「お待たせしました。じゃあ、行きましょう。」
フグは、お姉さんの案内で街中を歩き、地味で黒い、電灯が点灯していない建物の中に入った。
黒服の男「いらっしゃいませ!!お客様、7番テーブルにどうぞ。」
店の中は、静かなクラシックの音楽がかかり、ラウンジ風のキャバクラだった。
フグ「な、なに!!ここは豪華なキャバクラじゃないか!!」
お姉さん「フグさん、席に座って。着替えて来るから、ちょっと待っててね。」
フグ「ちょ、ちょっと待て!!俺は金を持ってないぞ!!」
しかし、お姉さんはフグの言葉を無視して、奥の更衣室に入って行った。そして、少しして、きらびやかなブルーのインポートロングドレスを着て、出て来た。
フグ「うおっさっきまで、あんなに地味だった女が、キラキラ輝いている!!この女は猛毒だ!!ヒョウモンダコ以上の毒を持つ、猛毒女だ!!」
お姉さんは、フグのテーブルに座った。
お姉さん「今日はフグさん、指名ありがとうございます。改めて、レイカと言います。よろしく!!」
お姉さんは、フグにウインクをして挨拶した。
フグ「な、なに!!俺がお前を指名したと言うのか!!」