フグVS ケルベロス
カズノコは、右手の手刀を地面スレスレで止めて、左足で地団駄を3回踏んだ。そして、今度は左手で手刀を地面スレスレで止めて、右足で3回地団駄を踏んで、元の構え、左の手刀を胸に当て、右の手刀を突き出す構えに戻った。
カズノコ「フグよ。この型が何を表現しているか、分かるか?」
フグ「そうだな。倒れた相手にトドメをさしたってところかな。」
カズノコは叫んだ。
カズノコ「この愚か者め!!この型は、ラフテルの首筋に噛みつくも、それにビクともせず歩き続けるラフテルに苛立ち、地団駄
を踏むライオンを表現した型だ!!フグよ、お前はこんな事も分からないか!!もう一度、空手を一からやり直せ!!」
少年となっちゃんは笑い、フグは少しイラッとした。
カズノコは、水晶玉を乗せた机の中から、ゆうちょ銀行の振り込み用紙を出して、フグに差し出した。
カズノコ「はい、以上です。オッサン、口座番号とか書いてるから、今月は、これで支払いお願いね。来月からの支払いは、振り込み用紙をゆうちょの窓口でもらって、この口座番号を記入してお願いね。」
フグ「ふざけるな!!誰が払うか!!それから、なっちゃんが払った5000円を返せ!!」
フグは、もの凄い剣幕で右手で拳を握り、カズノコに迫った。
なっちゃん「もういいよ、フグさん。」
フグ「ダメだ!!明らかにこれはインチキだ!!」
カズノコ「インチキじゃない!!私の体に、お前の師匠となっちゃんのお母さんの魂が、憑依したんだ!!私は、お前達の願いを叶えたんだ!!」
フグ「まだ言うか!!じゃあ、教えてやろう。俺の師匠は、納豆が大嫌いなんだ!!それを毎朝食べろだと?そんなことを師匠が言うはずがない!!」
カズノコ「クッ・・・・だ、だから、好き嫌いをしないように、お前に毎朝、納豆を食べろと言ったんじゃないのか。」
フグ「このババア!!ああ言えばこう言いやがる!!もはや問答無用!!喰らえ、必殺・脳天踵落とし!!」
カズノコ「ギャアアアア!!」
フグの右足の踵落としが、カズノコの頭にめり込み、カズノコは椅子から倒れ落ちた。フグは、水晶玉を乗せた机の中から5000円札を取り出して、なっちゃんに渡した。
フグ「これでよしと。じゃあ、店を出るぞ。」
3人は喫茶カズノコを出て、10メートルほど歩いた所で、カズノコの叫び声が聞こえた。
カズノコは、店の入口の所にもたれて、頭を抑えながら、1匹の痩せ細ったドーベルマンを連れて立っていた。
カズノコ「お前達!!金を払わずに、しかも私にこんな事をして、生きて帰れると思うなよ!!行け、ケルベロス!!」
ケルベロスという名の黒い年老いたドーベルマンは、ヨタりながら、フグ達の所に駆けて来た。
少年「あの犬、かなり弱ってるみたいだね。」
フグ「あのババア、餌をやってないんじゃないのか?痩せすぎだろ。」
ドーベルマンは、フグの前で立ち止まり、渾身の力を振り絞って、
"ワン"
と、一声だけ吠えると、そのまま倒れた。
カズノコ「私のケルベロスが!!おのれ、フグ!!許さん!!」