ゴールデンウィーク?
タケゾウは、その日の夜、可愛いお姉さんに"こんばんわ、仕事お疲れ様"とか、"お休み、明日も仕事頑張って"とラインをしたが、返信はなかった。
次の日の朝、売店に行くと、可愛いお姉さんの姿はなく、40代後半ぐらいのおばちゃんがいた。タケゾウは、おばちゃんに可愛いお姉さんのことを尋ねると、
おばちゃん「ああ。あの人は、今日から事務所になったみたいよ。」
と言われた。
タケゾウ(やられた。フグさんを犠牲にしたのに、この様かよ。)
タケゾウは売店で、いつものようにタバコと缶コーヒーを買って項垂れたまま、作業場に向かった。
フグは、なんとかクビは免れたものの、3日間の謹慎をくらい、バイトを休むことになった。そんなことを知らない作業場のバイトや派遣、社員達は、てっきりフグがクビになったものだと思った。ここで働いている魔物達は、トークが弾んでいた。
魔物達「やれやれ。うるさい奴がいなくなって、やっと思い通りに仕事ができるぜ。」
「アイツがいなくなったから、これからは、生意気な人間達を虐めれるぜ。」
「そうだな。これからは、俺達に文句を言う人間は、この職場から追い出してやろうぜ。」
タケゾウ「まずいことになった。まさか、フグさんにこんな抑止力があったとは。取り敢えず、魔物達には逆らわないようにしとこう。」
3日間休みになったフグは、特にする事もなく、また金もないので、家で洗濯をしたり掃除をしたりしていた。
フグ「今日は水曜日か。土・日と休みだから5連休じゃないか。まるでゴールデンウィークだな。しかし、来月の給料が厳しい。」
そんなことをブツブツ言いながら畳に掃除機をかけていると、木の扉をドンドンと叩く音がした。
フグ「こんなにドンドンと乱暴に扉を叩く奴は、アイツしかいない。そんなにドンドンと扉を叩くな!!外れるだろ!!」
フグはドカドカと歩いて、あと少しで入口にたどり着くところで、
ドターン!!
と、木の扉が外れて倒れた。
フグ「またお前らか!!いい加減にしろ!!毎回毎回、俺の玄関のドアを壊しやがって!!嫌がらせか!!」
扉が外れた先に、例の少年となっちゃんが立っていた。
2人は勝手にフグのボロ小屋の中に入って座り、ポテチとジュースを出して、食べ始めた。
フグ「おい!!勝手に入るな!!何しに来やがった!!今度は魔王でも倒しに行くのか?冗談じゃないぞ!!俺は、お前らの魔物退治という名のプチデートに、付き合ってる暇はないんだ!!分かったら、そのポテチとジュースを置いて、サッサと出ていけ!!」
少年「フグさん。今週の土曜日、仕事休みだろ?一緒におせち山に行こうよ。なっちゃんのお母さんを生き返らせるんだ。」
フグ「はあ?死んだ者が生き返るわけないだろ。」
少年「おせち山に、カズノコさんて言う女の占い師さんがいるんだけど、その人は、死んだ人を生き返らせる事ができるらしいんだ。」
フグ「そんなのデマだ、嘘に決まってるだろ!!」
なっちゃん「フグさん、お願いします。私達と一緒に、カズノコさんの所に行って下さい。お母さんが死んでから、お父さん元気なくて。家に帰って電気を点けても、なんだか暗くて。フグさんのボロ小屋ほどじゃないけど。」
フグ「悪かったな!!ボロ小屋で!!ったく、最近のガキは、スマホと一緒に大人になっていく SUPER STUDENTとか言われてるが、ただたんに失礼なだけだ!! 」
フグは、なっちゃんの一言にイラッとしたが、暇なのでおせち山に行くことにした。