未来の偉大な男
"社員に引き上げる"という言葉にフグも咄嗟に反応した。
フグ「ヒック。ヒック。姉さん、俺も少し言い過ぎた。ゴメンよ、人事部長、私もバイトでは生活が苦しくて苦しくて。ヒック。ヒック。その、あの、私も社員に引き上げてくれませんか?
今月の子供のミルク代が無いんです!!」
タケゾウ「フグさん、何言ってるんですか!!子供なんかいないじゃないですか。」
後藤の心の声(このオッサン、いい歳して、見え見えの嘘泣きして、何考えてるんだ!!お前みたいに、年がら年中ケンカしているオッサンなんか、社員になれるわけないだろ!!お前は一生バイトだ!!いや、できれば辞めてほしい。今すぐにでも、バイトを辞めてこの会社から去ってほしい!!)
後藤「フグさん、できれば私も貴方のようなエネルギッシュな人を社員にしたいんだが、貴方は社員とかじゃなくて、もっと大きな存在になれると思う。この国の王とまでは言わないが、なんかこう、我々の手に届かないような存在になれると私は思うんだ。」
フグ「聞いたか、タケゾウ!!そうか。俺はこんなとこで、くすぶってるような男じゃなかったんだ!!ならば、俺は人事部長、あんたに決闘を申し込む!!未来の偉大な男の蹴りを喰らわしてやろう。俺に蹴られたことを、明日から会社で自慢しろ!!ドリャアアアア!!」
後藤「なんで決闘になるんだ!!ギャアアアア!!」
フグの飛び後ろ蹴りが、人事部長・後藤の腹にめり込み、巨体の人事部長は、腹を抑えてうつむせに倒れた。フグは、後藤を見下ろしながら言った。
フグ「そんな見え見えの嘘を言いやがって!!俺は、女の涙を見て態度をコロッと変える奴が大嫌いなんだ!!クビにしたければクビにしろ!!」
タケゾウ「おお!!フグさん、カッコいいです。でも・・・・たぶんクビだな。」
そして、売店の可愛いお姉さんに向き直って言った。
フグ「アンタもアンタだ!!社員に引き上げると言われたとたん、泣き止みやがって!!どうせアンタも、合コンでは、自分よりブスな女しか連れて来ない口だろ!!女の少ないこの会社では、アンタは可愛い部類だが、外に出れば、アンタは普通だ、いや、むしろアンタはブスだ!!ブスの類いだ!!行くぞ!!タケゾウ!!」
フグは、1.5Lのサイダー2本とコーラ1本を持って、そのまま売店を出ようとした。
可愛いお姉さん「あの、お金を払って下さい!!」
フグ「金だと?ったく、これから社員になる人が金を払えってか。まあいい、タケゾウ!!払っとけ!!お前言ったよな?奢りますって。」
タケゾウ「は・・・・はい。」
今日も逞しくワイルドに、異世界を生きるフグであった。