のりお のりこ
フグとドラゴンが湖の中で揉み合っていると、2匹の男女のカッパが、どこからともなく現れた。2匹のカッパは、それぞれドラゴンの右腕と左腕を持って、ドラゴンを湖の奥へと連れ去って行った。ドラゴンは、足をバタバタさせながら、フグに助けを求めているようだった。
ドラゴン(た、助けてくれええええ!!なんで俺だけ拐うんだああああ!!)
さすがのフグも、水の中では何もできず、ドラゴンが連れ去られるのを黙って見ていた。
フグが湖から上がると、ドラゴンのボロ小屋は燃え尽きかけて、真っ黒い炭小屋になっていた。火がちょうどいい感じの焚き火のようになっていたので、側に行って服を乾かし始めた。少年となっちゃんが、フグの側にやって来た。
少年「フグさん、ドラゴンは?」
フグ「カッパに拐われた。」
少年「はあ?なに言ってるの?湖の奥底に沈めたの?」
フグ「俺も信じられんのだが、アイツは2匹のカッパに拐われた。雄と雌のツガイだった。」
少年「はあ?フグさん何言ってるんだよ!!カッパは今から100年前に絶滅したんだよ!!」
なっちゃん「たぶん・・・・そのカッパは、のりおとのりこかもしれない。」
少年「え?そうなの?だから、この湖の名前がのりおとのり湖なの?」
なっちゃん「そう。のりおとのりこは、悪い人間を湖に引き摺り
込むらしいの。」
少年「なんでドラゴンだけ拐ったのかな?フグさんも、十分悪い人間だと思うんだけど。すぐ人を殴ったりするし。」
フグ「おい!!人聞きの悪いことを言うな!!俺はちゃんと理由があって殴ってるんだ!!アイツのように、だれかれ構わずカツアゲをしたり、親父狩りをしたりはしない!!」
少年「そのわりには、子供の俺にたかるよね。」
フグ「俺は命を賭けてるんだ!!それに、これでも遠慮して一番安いハンバーガーセットにしたじゃないか!!」
少年「フグさん、お釣り返して。」
フグ「こ、これは帰りのバス代だ!!」
少年は、ハア~と深いため息をついた。
なっちゃん「フグさん、今日は手伝ってくれてありがとう。また何かあれば、お願いします。」
フグ「お、おおともよ!!また何かあれば、いつでも言ってこい!!俺はなんてったって、この街の保安官だからな。」
フグは、少年・なっちゃんとこの街で別れて、バスに乗って草原のボロ小屋に帰った。そして横になり、焼鳥をツマミに缶ビールを飲みながら、2匹のカッパに連れ去られるドラゴンを思い出した。
フグ「今ごろアイツは、カッパに食われているのかな?俺がこの焼鳥を食べているように、アイツは今ごろ、あの湖の奥底で、カッパのビールのツマミになっているのかもしれん・・・・アーメン。」
なぜかキリスト教信者でもないのに、アーメンと言う言葉がでた。
今日も逞しくワイルドに、異世界を生きるフグであった。