フグ、ドラゴン退治に行く
日曜日の午前中、天気がいいので、フグは庭に布団を干していると、以前、一緒に吸血鬼を倒しに行った少年が、同い年ぐらいの長い黒髪の少女を連れてやって来た。
少年「やあ、フグさん。この前はありがとう。今日は、俺達と一緒にドラゴンを倒しに行ってほしいんだ。」
フグ「他の奴に頼め。俺は布団を干すのに忙しい。中学生と遊んでいる暇はないんだよ、俺は。」
少年「フグさんは保安官だろ、保安官は困ってる人を助けるのが仕事だろ。だから頼むよ。」
少女「フグさん、お願いします。私達の街の近くの湖に、ドラゴンが棲みついていて、夜になると街に来て暴れるんです。」
フグ「ドラゴンが相手となると、みんなで力を合わせて闘わないと無理だ。ちょっと、お前達の力を見せてみろ。」
少年「フグさん、なっちゃんは火の魔法使いなんだ。」
フグ「ほう。それじゃあ、なっちゃんとやら。俺に向かってその火の魔法で攻撃をしてみろ!!」
フグ(魔法使いと言っても、所詮は子供だ。俺の正拳突きで跳ね返してやる!!)
なっちゃん「え?いいの?じゃあ、いきます!!ファイアー・ブリッジ!!」
なっちゃんは、透明のアクリルに水色やピンクの柄が入ったお洒落な杖を振って、地面を走る高さ3メートル程の火柱をフグに向けて放った。
フグ「うおっ」
フグは想定外の巨大な魔法にびっくりして、思わず横っ飛びでかわした。火柱はフグの干している布団に当たり、フグの布団がボオボオと燃え始めた。
フグ「ああ!!俺の布団が!!」
フグは慌てて自分の家であるボロ小屋に入り、消火器を持って来て布団にかけた。
フグ「ふう。こないだ、消防団の詰所から消火器をパクっておいて良かったぜ。危うく、俺の家にまで火が燃え移るところだった。」
しかし、フグの布団は燃えて灰になり、それを見てフグはめちゃくちゃ不機嫌になった。
フグ「もう帰れ!!ったく、ふざけやがって!!そんだけ魔法が使えるなら、十分ドラゴンを倒せるだろ!!」
少年「ドラゴンは素早くて、魔法を当てるのが難しいんだ。だから、接近戦に強いフグさんの空手じゃないとダメなんだ。」
少女「フグさん、お願いします。フグさんは、空手の神様です。」
フグ「か、空手の、か、神様・・・・。」
フグ(とうとう俺は、空手の神様と呼ばれるまでになったか。)
空手の神様と呼ばれて、フグの不機嫌は直るのを通り越して、かなり上機嫌になった。
フグ「いいだろう。お前達のドラゴン退治を手伝ってやる。ちょっと待ってろ、準備をするから。」
少しして、フグが以前と同じリュックを背負い、左手に猟銃を持って出て来た。
少年「また猟銃を持って行くのかよ。」
なっちゃん「空手では闘わないんですか?」
フグ「も、もちろん空手で闘うさ。こ、これは御守りみたいなもんだ。じゃあ、出発するか。ちょっとその前に、腹ごしらえをしよう。そろそろ昼だしな。そうだ!!マックに行こう。俺は久しぶりにマックに行きたい。」
フグ達は草原を歩いて、街の入口にあるバス停に着いた。
フグ「まさか、またバスで行くのか!!俺の財布の中には今、62円しかないぞ!!」
少年「当たり前だよ。ドラゴンの湖まで歩いてたら、日が暮れてしまうよ。ってか、また62円なの?」
フグ「そうだ。ATMには100億あるんだがな。」
なっちゃん「ひゃ、100億ですか!!凄い、さすが空手の神様!!」
少年「だったら下ろせば?」
フグ「き、キャッシュカードを家に忘れてしまったんだ。」
少年はハア~っと深いため息をついた。
3人はバス停に着いてバスに乗り、まずは腹ごしらえをするため、マックに向かった。