俺の空手は娯楽じゃない!!
スライム「フグさん、どうして泣いてるんだ?」
フグ「これは涙じゃない。汗だ!!俺は目から汗が出るんだ!!」
フグの泣きながらの剣幕に、スライムは何も言わなかった。フグは、ソファのある広い部屋に案内され、スライムと向かい合って座っていると、少しして、2人のメイドが豪華な料理をサービスワゴンに乗せて運んで来た。
スライム「さあ、フグさん、どうぞ。」
フグ「いただきます。」
フグが料理を食べていると、イバンカがやって来た。
イバンカ「フグさんて、この前あなたが話していた空手の人?」
スライム「そうだよ。」
イバンカ「じゃあ、私、ノブロウさんとフグさんの空手の試合、見たいな。」
スライム「そうだな、私もみたい。イバンカ、ノブロウさんを呼んでおくれ。フグさん、ノブロウさんは、この家のボディーガードで、フグさんと同じ空手家だ。」
フグ「ノブ・・・・あの有名なブロンズ会館の師範か?」
スライム「そうだ。ぜひ、ノブさんとの組手を見せてもらえないか?」
フグ(こいつ、最初からこれが目的で、俺を家に誘いやがったのか。)
フグ「いいだろう。たが、組手をする以上、俺は手加減しない。」
そして、イバンカがノブを連れて来た。ノブは、身長1・7メートル程のアジア人で、黒いスーツを着ていた。
イバンカ「ノブさん、こちらはフグさん。さあ、フグさんと闘って。負けたらボディーガードを首にするからね。」
ノブ「・・・・・・・・分かりました。フグさん、表に出ろ。手加減なしだ!!いざ、尋常に勝負だ!!」
フグ「いいだろう。」
フグとノブは、芝生が丁寧に刈られた庭に出て、向かい合い構えた。スライムとイバンカは、少し離れて立ったまま、二人を見守っていた。フグが先に動いて、上段回し蹴りを放った。
フグ「ドリャアアアア!!」
「ギャアアアア!!」
スライム「な、なに!!」
フグは、イバンカの顔に右回し蹴りを入れ、イバンカは悲鳴をあげて倒れた。
ノブ「な、なんてことを!!」
フグ「ノブさん、また会おう!!今日のこの闘いに意味はない!!」
そう言って、フグはワームホールの水溜まりの方へ走り始めた。
スライム「待て!!フグ!!こんなことして。あんたはクビだ!!」
フグは、水溜まりの前に立って叫んだ。
「クビで結構!!俺の空手は、お前達の娯楽じゃない!!」
そう言って、フグは水溜まりの中に飛び込んだ。
次の日、工場でフグが作業をしていると、工場長・スライムが側にやって来た。
フグ「クビを言いに来たのか?」
スライム「いや、昨日はちょっと私もはしゃぎすぎた。あんたに助けてもらったしな。ただ、イバンカは、あんたの回し蹴りを喰らって全治3週間だ。慰謝料を請求するところだが、今回は、時給アップの話はなしということで。」
フグ「いや、しかし、あれは工場長の嫁さんが・・・・」
フグの話をスライムが遮った。
スライム「話は以上、では。」
スライムはそう言うと、その場を立ち去った。
フグ「あの野郎!!絶対いつか、ぶっ殺してやる!!」
今日も逞しくワイルドに、異世界を生きるフグであった。