空手道は甘くない!!
空手の達人・フグは、大草原のボロい木の小屋に住んでいた。昼からバイトのため、小屋の近くで空手着を着て、空手の稽古をしていると、水色のスライムがやって来た。
スライム「フグさん、私に空手を教えてくれ。私は強くなりたい。強くなって、勇者をボコボコにしたいんだ。」
フグ(空手って。コイツ、手とか足がないじゃないか。どうやって教えたらいいんだ!!俺には分からない!!)
スライムは、直径1メートル程のバランスボールのような体型だった。
スライム「頼む!!フグさん!!」
フグ「わ、分かった。よ、よし、思いっきり俺に向かって転がって来い!!」
スライム「分かった。行くぞ!!フグさん!!」
スライムは、思いっきりフグに向かって転がって来た。フグは、スライムに向かって、思いっきり蹴りを入れた。
フグ「ドリャアアアア!!キング・カズキック!!」
スライム「ホゲエエエエ!!」
スライムは、街の方向へ空高く蹴り飛ばされ、そして見えなくなった。
フグ「スライムよ、空手の道は甘くない!!さて、そろそろバイトの時間だ。」
フグは、修行がてら、職場の工場がある街まで空手着を着て走って行った。そして職場についたが、10分ほど遅刻をしてしまった。
工場長「フグ!!また遅刻か!!これで何回目だ!!ったく、お前は。仕事にも空手ぐらい熱入れろよ!!」
フグ「す、すいません。」
工場長「お前に街まで蹴り飛ばされたから、私は、いつもより1時間も早く会社に着いてしまった。久しぶりに、漫喫で時間潰ししたよ。」
そう言うと、工場長のスライムは、検査室の方へ向かって歩き始めようとしたが、もう一度、フグの方に振り返った。
工場長・スライム「フグさん。あんた、私のこと嫌いだろ。さっきの蹴りに憎しみを感じたよ。」
フグ「い、いえ、そんなことありません。わ、私は工場長を尊敬しております。私も工場長のように、仕事ができるようになりたいです。」
工場長・スライム「そうか。フグさん、製造業は甘くないよ。」
そう言うと、工場長・スライムは検査室に入って行った。
フグ「あの野郎!!生きてやがったか!!次こそは、必殺の踵落としで、体を真っ二つに切り裂いてやる!!」
今日も異世界で、逞しく生きるフグであった。