第9話 彼のすべての始まり
街の観光を終え俺とフランキーさんは街の酒場にやってきていた。
フランキーさんが酒場に現れると街全体に伝わったのだろう俺達以外に客が入っておらず
カウンターに立つ細身のスラっとしたマスターが一人グラスを磨いていた。
流石に不審に思ったのかフランキーさんがマスターに尋ねてる。
「あれ?マスター今日やってないのかい?久しぶりにゆっくり飲めると思ったんだが……」
「いやいや、今日はフランキー隊長が大切なお客様をお連れになると風の噂で聞きまして
席を空けておいた次第でございます。」
「むーそうか。しかし私たち2人だけだからここまで席を空けなくてもよかったんだが、悪いことをしてしまったな。」
「いえいえお気になさらず、好きな席へお座り下さい。お飲み物は何をお持ちしましょうか?」
フランキーさんは”びーる”とやらを2つ注文してカウンターに腰を下ろした。
村に酒場と呼べるような場所が無かった為どうすればいいか分からなかった俺はとりあえず
フランキーさんの右隣に座った。すると何故かマスターが驚いた顔で俺の事を見ていたが何か間違ったのだろうか。まぁフランキーさんが何も言わないなら多分大丈夫だろう……多分。
「マスター何か適当に何か作ってくれるとありがたい。すこし小腹が空いてね。」
「かしこまりました。ではフランキー隊長の好きなブランボラークをお作りしますね。ビールのほうは
先に飲まれてますか?」
「いや、この者と少し話があるのでな、出来てから一緒に持ってきてくれ。」
「かしこまりました。では少々お待ち下さい。」
そういってマスターはカウンターの奥へ消えていった。
フランキーさんはカウンターの椅子をくるっと回し俺のほうを向きいきなり頭を下げた。
あぶねぇよフランキーさん、いきなり頭突きとはやるじゃないか既に酔ってるな!
そんなわけは無い。フランキーさんの頭突きを間一髪で避けた俺はフランキーさんに声をかける。
「頭を下げるべきなのは俺のほうですよ。フランキーさんが頭を下げることは何も無いはずです。」
「いや謝らせてくれ。私は騎士でありながら守る為とはいえ君を殴ってしまった。私は私を許せないのだ。」
どうやら俺に裏拳を当てたことを謝罪してるようだ、だがあれはフランキーさんの言いつけを守らず
何も出来ないくせに走り出した俺が悪い。なおさらフランキーさんは悪くない。
「あれは俺が悪いですから気にしないでください。それにどこも怪我してないですし痛くありませんから!命があるのもこうして一緒に酒場にこれてるのも全部フランキーさんが助けに来てくれたおかげですよ。」
フランキーさんはやっと頭を上げてくれた。フランキーさんの自分の立場を顧みない行動には本当に驚く。街を案内してもらっているときにフランキーさんはすれ違う人ほぼ全員に頭を下げられていたし
同じ格好をした騎士からは尊敬の眼差しで見られていた。そんな人が超田舎育ちの農民である俺に頭を下げるのが不味いのは流石の俺でも分かる。ほれみろ、カウンターの奥のほうでさっきから皿が割れる音が続いてるじゃないか。
微妙に気まずい雰囲気が続いた後、フランキーさんは俺が気になっていたのを知ってたかのように話し始めた。
「私の妻も君のお父さんと同じ様に魔族に変えられてしまった。昼に一緒に街を回った彼女を覚えてるかな?彼女はベリアルの手下でもなんでもないどこにでもいる普通の女の子だ。娘が生まれてすぐのその日は我が家には多くの人が尋ねて来ていた。
みんな娘が無事生まれた事を祝福しに来てくれていたんだがその中に女性の体を乗っ取ったベリアルが紛れ込んでいたんだ。
恥ずかしい話だが娘が無事生まれたという喜びに気が緩んでいた私はそれに気がつかず家に招きいれ
てしまい、私が買い物に出かけた間に家に中は既に血の海に染まっており妻と娘、それとベリアルだけがが立っていたんだ。私はすぐに短剣を構えた。
「何者だ貴様!妻と子供を離してもらおうか!」
「いいのかそんなものを持ち出して。この体は貴様が守るべきこの国の人間だぞ?貴様は殺すのかこの娘を。」
「なんだと……?貴様いったい何者だ!名を名乗れ!」
「我が名はベリアル、貴様の持つ聖剣を頂きにきた。どこにある?素直に渡せばこの2人は開放してやろう。」
「聖剣……?私はそんなものは持っていないぞ!」
「嘘をつくなッ!貴様が持っているのはこの目で確認しておるのだッ!ティルフィングをさっさと渡せッ!」
「ティルフィングなど知らん。私が持っているのは支給された剣だけ、ティルフィングなど持っておらん!」
「なんだと……?サタンめ、偽りの情報をこの私に伝えたのかッ!
ならここにもう用はない。……いいことを思いついたぞ。出産祝いだ受け取るがいい。」
ベリアルはその手を妻の腹に突き刺し、高笑いをしながらその操っていた女性から離れていった。
当然妻は激痛に体を埋めその場に倒れこんだ。すぐに私はかけより手当てを始めようとしたんだ。
だがすぐに妻の異変に気がつく。ベリアルに刺されたはずの腹の傷は目で見てわかるほどのスピードで治っていき、ものの10秒程度で完全にその穴は塞がった。目の前に異常な光景に言葉を失っていると妻は泣きながら私に話し始めた。
「刺された時に……何か……されたようで。今、貴方を……殺したくて……しょうがありません……。」
耳を疑う言葉に驚き妻の顔を見ると額から角が伸び始め背中からは翼が生え始めていた。
それは人間から魔族へ変わっていっている証で、魔族へなり始めたら最後それを止めるすべは未だ見つかっておらず、また魔族から人間へ戻す方法も分かっていない為魔族へなり始めたら最後、殺すしかなかった。私は目の前の信じがたい光景に手に持っていた短剣を落とし、ただ止まってくれと願いながら妻を抱きしめた。だが当然止まることは無く角と翼は次第に大きくなり妻の体は鱗に覆われ始めていた。
「私が……人として意識があるうちに……貴方の手で殺して……下さい。」
「な、何を言ってるんだ……出来るわけないだろう……。」
「では貴方は私が魔族になり人を殺してしまってもいいとおっしゃるのですか!?私は嫌です!だから……お願いします……私を殺して下さい……貴方はこの国を守る騎士でしょう……?」
私は何も答えることが出来なかった。国を守ったとこでもう私の愛する人は戻ってこない。だが妻をここで殺さなければ国は混乱に飲み込まれるだろう。
私は剣をその手に持ち妻の首を刎ねた。これが私とベリアルの因縁の始まりだよ。
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かなりグダグダですね……(;´Д`)
何度も何度も書き直したりしたんですが今の私の技量だとこれが限界でした。
むー過去の出来事ってどうやって書けばいいんだろう……(´・ω・`)