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ポンコツ魔王と鍬を携えし勇者  作者: 相楽龍人
出会いと新たな始まり
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第八話 彼のもう一つ顔

 どうして知ってる……?

レインのさっきの様子だと村に来てた感じはしなかった。

ましてや事が起きたのは一昨日の夜だ。絶対に知ってるはずがない。


「な、何言ってるんだよレイン。俺は両親を探しに来てるんだぜ……?」


「理解出来てないようだな。やはり人間は無価値な生き物だな。」


レインは、いやこいつは一体誰だ?

容姿・声ともにレインそっくりだが中身が全くの別人みたいだ。

フランキーさんならきっとこいつが誰で今どんな状況なのかとか分かるんだろうけど

選ばれし農民のこの俺では何一つわからない。魔物が化けてると決まったわけでもない今、下手に襲い掛かったり、逃げ出したりするのは得策じゃない気がする。きっと街には騎士が警備とかで回ってるはずだ。その人たちが気がつくまで時間を稼ごう。


「お、お前は一体誰だ?レインじゃないな?」


「私が正直に答えると思うか?もし私が答えたところで貴様はそれを信じるのか?その質問は無意味だ。

……そうだな、魔族とだけ言っておいてやる。」


「……どうして一昨日のことを知っている?」


そいつは嘲笑うようにニヤニヤと楽しそうに話し出した。


「観ていたからにきまってるだろう。何度観ても面白いな親子が殺しあう様は。人間が魔族となって自分の子供を殺したその時を狙って人間だった頃の精神状態に戻す。するとどうなると思う?

自分が化け物になってから行なってきたことに絶望し、目の前に倒れている自分の子供を見て自ら命を絶つのだ。これ以上に面白いことはないだろう?ただ今回はあの騎士のお陰で子供の方が勝ったようだがな。それはそれで面白かったぞ。」


「外道が……ッ。必ずぶっ殺してやる。」


「今私は凄く気分がいいから特別に教えてやろう、これまでで貴様だけだ生き残ったのは。自分の手で

両親を殺していないにしろ生き残った子供は貴様だけだ。」


胸糞悪い話ばかりで正直今すぐこいつ殺したかった。だが俺は武器になるようなものを持っていなかったしなにより初めて対面した魔族に対して足が震え、立っているのが精一杯だった。

だれか来てくれ、俺じゃこいつを倒すことは出来ない。

……しかし辺りはさっきまで賑わっていたとは思えないほど静寂に包まれていた。


「助けが来るとでも思っていたのか?残念だったな、私がちょっとした誘導魔術をここの人間すべてに

かけたのでな、助けは誰一人来な……いや一人だけ効かない奴がいたようだ、これは面白い。」


目の前のこいつから目を外して後ろを振り向きたいのは山々だったが、後ろから来る誰かに気がついた途端、こいつは俺でも分かる程の殺気を放ち始め俺は目を逸らすことが出来なかった。

だから無い勇気を振り絞り俺は叫んだ。


「だれだかわからないがこいつは魔族だ!俺は戦うことが出来ない、だから頼む助けてくれ!」


これから魔王討伐作戦に参加する人間の台詞とは思えないが死ぬよりはマシだ。

狩りをしてた時のあの獣のとは比べ物にならない殺気に俺は後ろに体が傾いてしまう。しかし倒れることはなかった。多分後ろから来てた人が受け止めてくれたのだ。ただ鎧に直撃した俺の背中は激痛が走った。


「受け止めてくれてありがとうございます。ただ背中に激痛が走っています。」


「背中の痛みを説明できる元気があるなら大丈夫だね。良くここまで時間を稼いでくれた。」


そうだったらいいなーとは思ってたけど本当にフランキーさんだとは。

今この街で一番信用できる人だ。俺が弱いだけで実はこの目の前にいる魔族は弱いのかもしれない、

案外あっさり倒してくれるかもしれない。大丈夫フランキーさんなら必ず勝てる。


「ルークス君は下がってなさい。聖護魔法をかけるから君は何もせず見ていなさい。正直私一人で勝てるか分からない、だが見ておくのだ。今は人の体を乗っ取ってここに現れてるがこの隠し切れていない、いや隠すつもりのない気配は間違いなく……」


「久しぶりだなフランキー。あの頃より少しは強くなったのか?愛する人一人も守れなかった愚か者よ。」


「やはり貴様かベリアル……ッ!」


は……?

こいつがベリアル?俺の両親を滅茶苦茶にした張本人?

俺が一番怨んでいるいる魔族が目の前に……?

気が付くと俺は聖護魔法の陣から出てベリアルに向かって走りした。だがフランキーさんに裏拳を喰らいその場に尻餅をついてしまう。


「聞こえなかったのか?私は下がって見ていろといったのだ。」


それは今までに聞いたことのない低い声だった。こういってはなんだがフランキーさんはいつもどこか抜けた人で私は心の中で可愛いなとまで思っていたが、明らかに今までと雰囲気が違っていた。

俺はその迫力に気圧され素直に来たとこへと戻る。


「お前達の仲良しこよしを見に来たわけでも殺しに来たわけでもない。私はそこの少年を見に来ただけだ。私はここで失礼するよ。次会った時は相手をしてやろう。」


レインの体から黒い瘴気が表れそれは空に向かって飛んでいった。ベリアルは言葉どおりこの場を去ったのだろう。


「あれ!?フランキー隊長!?どどどどうしてここに!?それに剣を構えて・・・」


フランキーさんは大きく深呼吸をし、いつものような優しそうな表情に戻り

レインと話し始める。


「いやーここら辺で暴漢が出たって話を聞きつけてここまでやってきたんだけど

逃げられてしまってね……アハハ申し訳ない。」


「暴漢って乙女の敵じゃないですかー!どうして逃がしちゃうんですか!しっかりしてくださいフランキー隊長!」


おいおい今度はフランキーさん怒られ始めたぞ。ベリアルの話をするわけにはいかないんだろうが

暴漢を逃がしてしまったってそれを女の子の前で国衛騎士団の隊長が言ったら信用が落ちかねませんよ……。やっぱりどこか抜けてるよなぁフランキーさん。


ベリアルの件は夜にでも聞こう。とりあえず今はフランキーさんと生きていることに感謝しよう。



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