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ポンコツ魔王と鍬を携えし勇者  作者: 相楽龍人
出会いと別れと決意
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第五話 強い決意。

 何が起きたんだよ一体。

俺は親父から一瞬たりとも目を離さなかった、なのに何が起きたのかさっぱり分からない。

フランキーさんはその場から動いてないし変わった様子は……

いや変わっていた。右手に親父がいた。

フランキーさんはそっとそれを地面に置き悲しそうな申し訳なさそうな顔で俺のほうを見た。


「フランキーさん一体どうやって……?」


「すまないルークス君、その質問には答えられない。」


なにか奥義みたいなことでもしたのだろうか?まぁ今はどうでもいいか。


「ありがとうございますフランキーさん。一時はどうなるかと思いましたけど……フランキーさんがどうやって化け物を倒したのかは分からないですけどやっぱり……ですね。

……親父を……殺してくれて……ありがとうございます……。」


あれはもう親父ではない、化け物だ。ここに来るまで多くの人間を食べて来たのだろうし村長だって食われてしまった。受け入れて理解してフランキーさんに殺してくれと頼んだはずだ。なのになんでだ。

人間を襲う化け物が死んだだけなのにどうしてこんなに苦しいんだ。

どうして涙が流れてるんだ。どうしてそうなっちまったんだよ親父……。

 

俺はフランキーさんに背を向け、溢れ出てくる涙を流した。嗚咽は止まらないし涙と鼻水で

顔はぐしゃぐしゃだ、いい歳した大人がみっともないったらありゃしないぜ。

でも今日ぐらいは許してくれよ、涙を拭いた後に必ず前向いて進んで絶対に強くなってベリアルってやつ

ぶっ殺すからさ。

色々な感情が渦巻く中、80越えの爺さんに負けるほど弱くても、どれだけ武器を使うの下手だとしても

必ずベリアルを殺すという気持ちだけは強く深く根を生やし芽生えた。



「……ルークス君、お父さんを生き返らせることは出来ないが最期に話をするかい?」


「……どういう意味ですか?」


「私の聖法術で一時的ではあるが命を繋ぐことができる。術も聖法術だからちゃんとお父さんと会話ができる。」


「……お願いします。」


フランキーさんは聞いたことのない言葉で呪文らしきものを唱え始めた。

するとフランキーさんを中心に光の輪が広がり空に向かって伸びていった。

その光の効果なのかいつの間にか頬を伝っていた涙は止まり、徐々に心が落ち着きを取り戻していくのが分かった。

フランキーさんが口を閉ざすと後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ルークス……ありがとう。」


そうだ。俺が知ってる声はこれだ。殺意満点の言葉なんて親父らしくない。

親父の方を振り返るとそこには頭だけではなく体もしっかりとそこにあった。

いや、顔だけの親父と話するってのもちょっと嫌だけど流石にいきなり親父が現れるってのも

驚くよ、フランキーさん言ってくれればいいのに……。

フランキーさんは「川辺でで月を見てるよ」と気を使ってくれたのか散歩したときに行った川の方へ

歩いていった。

俺は親父の顔を見て思いっきり怒鳴ってしまった。


「なにやってんだよ親父!?あんた自分がなにしたか分かってんのよ!?」


いかん、話せるのが最期だというのにこんな喧嘩腰じゃまともに別れの言葉も言えないかもしれん。

いやでも聞いておかない俺が納得できない。


「分かってるさ。ベリアルの言葉に惑わされこの身を狂気に堕とし数多の人を殺めた。そしてあまつさえも息子であるお前を殺そうとした。だから終わらせてくれてありがとう。私はどうしてしまってたんだろうな……。」


「そんなのこっちが聞きてーよ……。親父、母さんはどうした?」


「母さんは……ベリアルの側近になっている。」


うん?母さんがベリアルの側近?どういう意味だ?

側近になっているということは同じように魔物になってるんだろうけど

それがどうしてベリアルの側近になるんだ?


「なんでベリアルの側近に……?」


親父は首を横に振る。親父も理由までは知らないらしい。

俺が最初に親父に母さんのことを聞いたとき答えなかったのはまともな状態じゃないとか死んでるとかそういう意味じゃなく、ベリアルに取られたという悔しさだったのかもしれない。

ほんとどんだけ母さん好きなんだよ、でもなんというか親父らしいな。


「まぁいい。俺が絶対に母さん助けて見せるからよ。親父は母さんがそっち行ったときに笑顔で迎えられるように天国で準備してるこったな。」


「ああ……すまないなルークス……ありがとう……」


俺と親父は抱き合い涙を流した。

しばらくして親父から体温が徐々に失われ体も透けていくのをみて別れの時が近いのがわかった。


「もう時間みたいだな。ちゃんと親父と最期に話が出来てよかったよ。」


「私もだ。フランキー隊長には俺の分もお礼を言っておいてくれないか?あの人がいなければお前を殺してたかもしれないし、こうやって短い時間だとしても話をする事だって出来なかった。」


別れ際がしみじみとしてるのは俺達らしくない。

いつも親父達が出かけるときは笑顔で分かれてたんだ、これが最期だとしても俺は笑顔で

送りだそう。

俺は出来る限りの笑顔を作り親父に別れの言葉を告げる。


「あぁ言っておくよ。じゃあ親父あっちでも元気でやれよな!あの世で冒険なんかすんじゃねーぞ!」


「バーカ!俺は母さんがいないと冒険しないんだよ!だから母さんがちゃんとこっちに来れるように頼んだぞ!」


「任せろって!母さんがいないなら冒険しないってんならあの世で冒険の準備でもしてな!……これじゃいつまでも別れらんねーな。……じゃあな親父。」


「あぁ……じゃあな最愛の息子。」


光は夜空に吸い込まれた。親父も光と一緒に行ったのかほぼ同時に消えた。

俺はフランキーさんの待つ川辺へ走っていき、フランキーさんに頭を下げた。


「魔王討伐やります。だから俺を強くして下さいお願いします。」


「……承知した。では明朝すぐに此処を発ち都市へ向かおう。私が必ず君を強くさせてみせる。」


次の日の朝、俺達は村を出た。



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