第二話 俺って最高に運がいいのかも。
ちょっと待って欲しい。
俺は畑を耕すだけが取り柄な男なんだよ?
伝説の勇者の子孫でもないし、卓越した剣術や魔術が使えるわけでもないのに
どうして国王から直々に魔王討伐の命令が下るんだよ!?
魔王討伐なんて目の前にいる国衛騎士団に任せればいいんじゃないのかよ……
いやまだ人違いの可能性が残っている、きっとそう人違いだよ!
「えっと……人違いじゃないですか……?」
「いや、君で間違いないよルークス君。村で唯一の若者で髪は茶髪で短髪、身長は170㎝前後で
瞳は国民特有の深い緑色。趣味や性癖とか他にも色々あるけど国王陛下が君の特徴も記していてね、
まず間違いなく君だよ。」
おいおいなんで俺のことそんなに詳しく知ってるんだよ……
趣味はまだしも性癖って国王なんで知ってんだよ。
まさかここ数日俺の監視でもしてたの?いくらなんでも詳しすぎるだろ会ったことないのに。
「なんで俺が魔王討伐に選ばれるんだよ……他の奴選べよ……。」
「あぁ、選ばれたのは君だけじゃないよ。国中から君を含めた100人が選ばれたんだ。」
「じゃあ、辞退しても問題なさそうだな。すいません辞退します!」
こういうときだけは声大きくなるのは仕方ないね。
フランキーはやっぱりかと言いながら笑い始めた。やっぱりってなんだよ普通いきなり魔王討伐
して欲しいとか言われたら断るだろ。
「いやぁ笑ってしまって申し訳ない。実は断るんだろうなとは思ってたからね。その予感が的中したのがおかしくてね。」
フランキーの笑いのツボがおかしいのは置いといて、断っても大丈夫なのか聞いてみよう。
「あの、フランキーさん断っても大丈夫なんですか?」
「うーん、断るってのは国王陛下直属の命だから基本的にできないんだけど、まぁ君以外は屈強な戦士たちが選ばれてるしこっちでなんとかしてみるよ。」
「じゃあ、なおさらなんで俺選ばれたんだよっ!」
思わず心の声が漏れてしまった。今まで慣れない敬語で上手く話せていたのになんてこった参ったぜ。
爺さん曰く、国王や騎士に暴言を吐いてしまうと最悪牢獄にぶち込まれるらしい。
しかし聞こえてきたのは厳しい言葉ではなくまたもや笑い声が聞こえてくる。
フランキーは笑いながら理由を説明してくれた。
「そう思うのは当然だな。私も理解できない。」
おいおい、国衛騎士団の隊長が国王の命令を理解できないとかいっちゃっていいのかよ、
このおっさんも大概だな。
「私も国王陛下に聞いては見たんだが、彼が今作戦の鍵なのだと言うばかりで詳しくは教えてくれないのだ。なんで農民である君を選んだのかとか鍵とはどう意味なのかは教えてくれなかったよ。」
「そうですか……。でも国王の真意が分からなくても鍵っていうのなら
無理やりでも連れて行かないといけないんじゃないんですか?」
「君の言うとおりだ。だが私たち騎士は国を守るのが仕事だ。国とは権力者だけが作っているのではない。国民を無理やり戦士に仕立て上げ戦場に送り込む事を我ら国衛騎士団はたとえ国王陛下の命だとしても受け入れるわけには行かない。それが国を守る我らの務めだ。」
今までの行動や言動から本当にに騎士なのかと疑ってしまっていたが今の言葉で彼が騎士として誇りを
持っていることが分かった。彼が隊長を勤めているのも納得がいった。
「というわけで私は君を無理やり連れて行きはしない。なに私が君の分まで頑張るさ。」
「フランキーさんも選ばれていたのですね。戦場に出ることは出来ませんが多少のおもてなしなら出来ます。今晩はうちで休んでいきませんか?都市からだと長旅で疲れたでしょうし。」
「おぉそれはありがたい!普段は野宿が多いから屋根の下で寝れるというだけありがたいよ。ではお言葉に甘えさせてもらおうかな。」
此処へ来たのがフランキーさんで良かったなと心底思う。きっと別の騎士が俺の元に来ていたらこうも穏便にことは進まなかっただろうしヘタしたら無理やり連れて行かれていた可能性だってある。
魔王討伐どころか魔物の出る地域に入った途端死ぬ自信だけは誰よりもあるだろう俺の寿命が
フランキーさんのお陰で伸びたというわけだ。俺って最高に運がいいのかもしれないな。
自宅へ向かう途中フランキーさんは何かに違和感を感じているとずっと頭を抱えていた。
しかしそれは家に着いたとき解決した。
「狭いですけど、どうぞゆっくりしていってください。」
「……そうか!フランキー”さん”だ!普段は”様”で呼ばれてるからだ!私をフランキーさんと呼ぶのは君だけだ!私でよかったな!もし私以外だったら多分君は牢獄の中へ一直線だったぞ!だが私のことは今まで道理、さん付けで呼んでくれ。友達が出来たみたいで嬉しいぞ!」
よほどモヤモヤしていたのか違和感が取れて大笑いをしてるフランキーさんの声は村中に響いただろう。
そうか普通は”様”で呼ぶのか。というか一番最初に言ってくれると助かるんですがフランキーさん……
俺はここに来たのがフランキーさんで最高に運が良かったと心のそこから思うよ。




