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ポンコツ魔王と鍬を携えし勇者  作者: 相楽龍人
出会いと新たな始まり
10/17

第10話 始まる宴会、終わらぬ娘自慢

ベリアルの「愛する人一人」という言葉から奥さんなんだろうと思ってたけどまさか親父みたいに魔族に変えられていたとは……しかも自分の手で奥さんを終わらせたなんて、俺より全然キツイな。

予想を遥かに超えた内容になんて言葉かければいいか分からない。


「あ、あのフランキーさん……えっとなんと言えば……。」


「気にしないで大丈夫だよ、私は妻を失ったが私が守らなければならないものは妻だけではない。

託された娘とこの愛すべき国がある。私だって人間だ、最初はもう何も手につかなかったさ。

隊長だと言うのに訓練には出なかったし、娘だって親戚にまかせっきりだった。でもある人が私に言ったんだ。

「君はこの国で最高の騎士だ、だがそれ以前に君はあの子の父親ではないのかね?辛かったら騎士をやめてもいい、ただ父親を辞めることは私が許さない。母親をベリアルに奪われ、父親はその辛さゆえに自分は捨てられたとあの子が知ったらどう思うかね?君が今一番守らなければならないのは私でも国でもなくあの子なのではないのかね?」と。

私はすぐに娘を迎えに行ったよ。まぁ結局私一人で育てるには家を留守にする機会が多いから

国衛騎士団が所有してる宿舎に引越ししたんだけどね。ここなら私が仕事で留守するときも同僚達に頼みやすいからね。今では5歳にも関わらず家事がなんでも出来る様になってね、将来が楽しみだよっ!」


フランキーさんなりに気を使ってくれたのかな、彼は話し終わると笑顔で笑っていた。

きっと奥さんの死を乗り越え、今は娘さんに注げるだけの愛情を注いでいるのだろう。


「そうだったんですね。フランキーさんの親バカっぷりに納得がいきました。そういえばフランキーさんに言葉をかけた人ってもしかして……。」


「国王陛下だよ。訓練に出ない私を処罰するどころか私を正しい道へ導いてくれた。その時から私は騎士として、この国に住む一人の男としてこの命尽きるまで国王陛下に忠義を尽くすと誓ったよ。」


「国王陛下は素晴らしいお方ですね。その話を聞くだけでド田舎育ちの俺ですら忠義尽くしたくなりますしたよ。」


「君は騎士ではないのだから忠義を尽くすことはない……お、出来たか!」


奥の厨房から出てきたマスターは熱々の皿を手にカウンターに戻って来た。

カウンターに置かれた皿にはパンのようなものが熱気を放っていた。


「お待たせしましたブランボラークです熱いから気をつけてくださいね。それとビール2つでしたよねすぐお持ちします。」


フランキーさんは「いただきます!」と大声で言い、フォークで一口大に切ると冷ますことなく口に放り込み悶絶していた。フランキーさん熱いのは分かってたでしょ……

ビールを持ったマスターはアハハと笑いながらビールを渡してくれた。


「フランキー隊長だから言ったじゃないですかー。熱いから気をつけてくださいって。毎回毎回

冷まさず口に入れてますけどいつか火傷どころじゃ済まなくなっちゃいますよー。」


熱いのをなんとか我慢し飲み込んだフランキーさんは涙目になっていた。

確かに美味しそうだ。湯気に乗って辺りを漂う香りは食欲をそそる。俺もフォークを手に取り

一口大に切り口に入れる。もちろん冷ましてから。


「むっ!これはじゃがいも!?旨い!」


「だろう!ここのマスターが作るブランボラークは国一番だからな!もっと食べるといいぞ!おっとビールが届いていたんだな。先に乾杯するか!ほらルークス君グラス持って!」


「乾杯はいいですが私”ビール”って飲んだこと無いんですが美味しいんですか?」


「なに飲んだこと無いのか。ビールはいいぞ!その日の疲れや失敗をすべて吹っ飛ばしてくれる最高の飲み物だ!きっと飲んだらすぐ分かるさ!それじゃ今日の無事を祝ってかんぱーい!」


フランキーさんは勢いよくビールを飲みあっという間にグラスは空になった。

俺はというとフランキーさんの真似をして飲んだのはいいが村で飲んでいた酒とは違い苦味が強く炭酸が入っているビールに悪戦苦闘していた。


「これのどこが美味しいんですかッ!すごい苦いじゃないですか!」


「最初だけさ、飲んでいれば最初はこれじゃなきゃダメってなるぐらい旨く感じるぞ!さぁ今日はルークス君がこの街に来た祝いの日でもあるんだ好きなだけ食って飲んでしてくれて構わんぞ!ちょっと人が少ないのが寂しいが……うむ、私が今から騎士たちを呼んでくるからルークス君は飲んでなさい!」


そういってフランキーさんは走って店を出て行ってしまった。きっとここに俺達以外のお客さんがいないのはフランキーさんが今日飲むってしってるからだよ……。騎士の方々どんまいです。

30分もしないで戻って来たフランキーさんは20人近くの騎士を連れて戻ってきて、店はすぐに

満席になった。上司に誘われた酒の席は断れないってのは田舎でも都会でも変わらないみたいだ。

フランキーさんがみんなに俺を紹介した後すかさず始まった娘自慢は3時間続き

騎士の人たちは「これがどの訓練よりも辛いよな……。」と愚痴をこぼしていた。

毎回この話が出るんじゃ確かに辛いよなと思いながらも久しぶりの宴会に心が躍った。

今日は思いっきりはしゃごう、そして明日から頑張ろう。

必ず魔王を、ベリアルを倒す為に。


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初日のお話はここまで。

楽しげな雰囲気がこの話で伝わったのなら幸いです。

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