【第三話前編】不信の村
試しにオープニング。
ソールと別れ、また違う村へたどり着くグラディス。
枯れた大地、枯れた木々、乾いた井戸…。
ただ鉱山と思わしき山だけが、煌びやかに光を明滅させていた…。
そこは、閑散とした村だった。
辺りは枯れ木ばかりに覆われ、薄暗い空が丘を覆いつくしていた。
まるで廃墟のような静けさにあてられ、恐る恐る村の中に足を踏み入れる。
「もう誰も住んでいないのかな…?」ふっと僕は声を漏らした。
「誰だい。」その声は沈黙を割くかのように鋭く響いた。
びっくりして振り向いた。
そこに、顔にいくつかの文様が刻まれたお婆さんが立っていた。
狩りで培ったはずの気配の察知を、まるで感じ取れなかった。
このお婆さん、ただものじゃない…。心の中でつぶやく。
「えっと、人探しの旅をしています。女の子が通りませんでした?」
「知らないね。私らは世俗と関わるのにうんざりだ。さっさと出てお行き。」
「じゃ、じゃあ。食べ物を分けてくれませんか。これと交換で…。」
老婆はそれを一瞥する。
「
ふん、そんなものここでは何にも使えないよ。
どうしても欲しいなら、薬草でも取ってくるんだね。
場所くらいは案内してやるよ。
」
ぎょろっとした目を僕に向ける。
「分かりました。案内を宜しくお願いします。」僕は応える。
「…ついてきなされ。」老婆は少し驚いた顔をして、歩き出した。
「ところで、どうして誰も外に出てこないんですか?」素朴な疑問を口にする。
「ふむ…。お主は無関係そうじゃから、少し話すとするかの。」老婆は語り出す。
「…若造。おぬし、『魔女』をどう思う。」老婆は重苦しく語り出した。
「マジョ?それは何ですか。僕は自分の村から出たことが無くて…。」頭を掻く。
「ハッハッハ!…知らんのか、…『可哀想に』。」老婆は独り語りを始めた。
「
『魔女』の国があった。しかし、今はもうない。消されたのだ。今の支配者に。
その下僕たる兵たちによって『魔女』の多くは死んだ。
戦いを好まぬ者は国を捨てた。
国を捨てた者は生きる選択をした。
新たな国に服従する者、
『魔女』として生きる場所を開拓する者、
そして隠れ住む者…。
」
「その人たちは、なぜ…」恐る恐る僕は続きを求めた。
「
恐れられていた。大地の力を借りる術を。
しかし、『我々』には必要だった。
使えなければ生きていくことも難しかった。
そして、殺された。
のう、若造。
もし見たことも聞いたこともない『力』を
他者から見せつけられたとき、何を思う。
」
「きっと、びっくりするでしょうね。」頭の中を整理し、一呼吸置く。
「でも、使うのは『人』。
言葉が伝われば理解することもできると思います。」
老婆にまっすぐ向き、しっかりとした口調で話す。
「くっくっ…はーっはっは!」なぜか老婆は笑い出す。
「…なつかしいのう。そんな考えは『あやつ』ぐらいだと思っておったが。」
「あやつ…?」
「昔の話じゃ、気にせんどくれ。」
その時、老婆は足を止め、振り向く。
「さあ、この穴の奥だ。用心なされよ。ここは彼らの怨念が巣食っておる。」
穴の奥は薄暗く、鉱石特有の光か、赤紫色を放っている。
「割に合わんなら近くの町まで、数日かけていきなされ。頑張りなされよ。」
老婆は、意地の悪い顔で笑いかけてきた。




