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【第二話後編】地平の先に見える村

ひたすら一人で歩いていた時に地平線に見えていたその村、そこに今辿り着く。


その村の家々を見ると、不思議な光景が目に飛び込む。

家々の脇に木の実と同じものが「干して」あるのだ。

すがすがしい顔のその男は大きく息を吸い、叫ぶ。


「持ってきたぞぉ!」


その声と共に家から住人たちが飛び出してきて囲まれてしまった。

「はい、早い者勝ちだよ。あ、でも持ってないやつ優先な。」

彼は持ってきた木の実を手早く「何か」と交換した。


「ほれ、これはお前の分な。」


交換していた「何か」をもらった。

「これ、なんですか?」目をしばたかせながら聞く。

「うん?知らないのか。では、使い方を教えてやろう。」上機嫌な男は言う。


「オヤジ、例の物2つ!」彼は家に入り、かごに「何か」を投げ込み、叫ぶ。


その家の中は調理場と座席が別の場所で区切られていて、

近くに座席と円卓が無造作に置かれ、その1つに僕らは座る。

「あいよ!いつもすまんな。タダで出せんのが申し訳ない。」


「こんな極上品を格安で飲めるんだ。満足しなきゃ罰が当たるぜ。」男は笑う。


「これ、もしかして…。」僕は頭に浮かんだことを言葉にしようとする。

「そう、あの木の実さ。干すと、こんなに濃厚でおいしい飲み物に変わる。」

「料理の材料にも使ったり、もう、この村の特産品だな。」


男は終始満足げな顔だった。あの森は結構覚悟のいる場所なのかもしれない。


「そういえば、名前まだだったな。俺は覚えることが苦手だから別にいいが。

俺の名は、ソール。傭兵だ。…何でも屋じゃないぞ…。お前は?」

最後の方は呟きながら男は名乗り、僕の方に促す。


「…グラディスです。」慣れないため、少しこもった声で僕は話した。

「ほう、職は?なんであんなところから来た?」ソールは矢継ぎ早に話を促す。

「職は…狩人、ですかね。村から探し人を追ってるんです。」


「へぇ、探し人。」ソールは興味があるようなそうでもないような顔で頷く。


そこへ、料理の皿が机に置かれた。

「さぁ、今日はおごり…って金が分からなかったんだっけな。まぁ、食え!」

ソールは豪快に笑う。


「で、『これ』は『貨幣』ってんだ。街へ行くなら持っておいて損はないぞ。」


「さっきみたいに、物を交換するんだ。

物によって必要な『枚数』があるから気をつけろよ。」ソールは強調する。

「へぇ…僕のところでは譲り合ってるのに。」僕は初めて見る『貨幣』を触る。


「許しあえる奴らとだけいられるならそれでいいかもしれんが…。」


「いいか、もうここから先の村や街は、お前の住んでた村とは違う。

時には騙されて物を奪われるかもしれない。自分しか頼れないからな。」

ソールは忠告をしてくる。


そう、もう僕の生まれ育った村ではないんだ。


気のいいソールと一緒に行くのも楽しそうだが、

「この村でもう少し『英雄』気分に浸るぜ。」と奇妙な単語を発し、別れた。

外に出ると、この村から道が続いているようだ。


僕は『貨幣』でいくつか食べ物と飲み物を買い、その場を出発した。


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